「のだめカンタービレ」〜古典と革新と〜

「のだめカンタービレ」、クラシック好きの仲間の間で結構盛り上がっているのは知ってましたが、自分は全然読んでませんでした。先日、ガレリア座の事務局長が、全13巻を宅急便でどどんと送ってきて、「はまりなさい」と指令してきたので、指令通りにはま…

鬼九郎鬼草子〜戯作文学って追いかけてみたい気が〜

高橋克彦さんの「舫鬼九郎」シリーズ、ちょっと古いシリーズなんですが、割と好きで、先日、第二部の「鬼九郎鬼草子」を読む。読み進めて、途中で、あれ、これどっかで読んだことがあるような・・・と思い始める。でも、どんな話だったか覚えてない。でも、…

「平安妖異伝」〜「音楽小説」というジャンル〜

平岩弓枝さんという作家に、「御宿かわせみ」で興味を持ち、図書館で平岩さんのコーナーを眺めていたら、「平安妖異伝」というタイトルの本に目が留まる。夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズも好きだったし、平安朝を舞台とした怪異伝、という話は面白そう、と…

ボビーZの気怠く優雅な人生〜アメリカという国の裏側〜

あまりこの日記では取り上げていませんが、いわゆるアメリカン・ミステリーが結構好きだった時期がありました。書評とかを読んで、この本面白そうだ、と思い、いくつかのシリーズものを追いかけてみる。特に気に入ったのが、ネクラ作家のトマス・クック。彼…

「スプートニクの恋人」〜多重世界の融合〜

村上春樹さんの小説の一つの大きなテーマが、「喪失感」にある、というのはよく言われること。その「喪失感」は、「本当の自分はここにはいない」という感覚から、「どこか別の世界にいる本当の自分」という、ドッペルゲンガー、あるいはパラレルワールド=…

山本周五郎「扇野」〜恋愛小説家としての周五郎〜

最近完全にはまっている山本周五郎、先週は、「扇野」を読了。収録されている短編の全てで泣ける。ネット上の書評を見ていたら、「山本周五郎さんは、(あの顔で)すごい恋愛小説家だと思う」という書評があって、激しく同感。特に「扇野」は、その全編が、…

「神の子どもたちはみな踊る」〜世界観の転換〜

1995年1月におこった神戸の震災という出来事で、自分の世界観は確実に変貌しました。でも、それがどう変貌したのか、ということを表現するのはとても難しいこと。足元で確固としていてゆるぎない大地が突然崩れ落ちる、という恐怖感、なんていうのは、…

「町奉行日記」〜時代と本・映画表現と本〜

読み進んでいる山本周五郎の本、今回は、「町奉行日記」を読了。例によって感動するのだけど、今回は少し違った観点での感想です。女房に、「山本周五郎はいいよぉ」という話をしたら、「でもあんまり文学界での評価の高い人じゃないよねぇ」と言われる。そ…

「おごそかな渇き」〜切なさとは、一生懸命に生きること〜

ガレリア座の訳詞家HP上で、知らないうちに、私が昔、ガレリア座で書いた脚本がネタになっていました。いわく、”ガレリア座の「切ない」元祖”とのこと。名誉な称号なんだかよく分かりませんが、確かに、今まで私がガレリア座で書いた物語には、必ずといっ…

「国境の南 太陽の西」〜村上春樹版「それから」〜

村上春樹、という作家への思い入れについては、以前、この日記で書いたことがあったと思います。あんまり思い入れが強すぎて、「ノルウェイの森」で違和感を感じてしまい、そのまま少し遠ざかっていました。多分、そういうファンは多かったと思う。「ノルウ…

御宿かわせみ〜見てから読む〜

高島礼子さん、という俳優さんには、ちょっとキワモノっぽい雰囲気が漂っている気がしています。レースクイーンという出自、極妻シリーズの常連、高知東生さんとの夫婦生活、どれを取り上げても、どこか「和服の似合う極道系の姐御」というオーラが滲み出て…

杉浦日向子さん追悼〜「江戸」を教えてくれた人〜

江戸文化に興味があって、いくつかの本を漁ったりしていると、必ずといっていいほどぶつかるのが、杉浦日向子さんというお名前でした。その後、「百物語」「東のエデン」「百日紅」を読む。まさしく、傑作、というにふさわしい素晴らしい作品群。凡百の江戸…

「あかんべぇ」〜宮部みゆき流予定調和の世界〜

週末、図書館で借りてきた、宮部みゆきさんの「あかんべぇ」を読了。宮部みゆき流時代小説の予定調和の世界を楽しむ。予定調和、というのは悪口ではなくて、「収まるところに収まっていく」快感がいいんです。女の子が主人公、という所、ストーリーが割とシ…

「イエスの遺伝子」〜エンターテイメント界におけるキリスト教〜

週末、図書館で借りてきた、「イエスの遺伝子」を読了。面白かったけど、心揺さぶられる、なんていうものじゃなくて、まぁなんてことのないエンターテイメント小説です。でも最近、どうも本の読み方が変わってきていて、子ども、特に女の子がひどい目に遭う…

「つゆのひぬま」〜必読書ってのはあるんだなぁ〜

川原泉さんの漫画が好きだ、というのは、以前この日記で書いたことがあったと思います。中でも、「架空の森」という短編は大好きでした。苑生さんのキャラクターもよかったんですが、対照的な織人君というキャラクターは、主役なのにやたらおしゃべりで、そ…

時代小説の楽しみ11『魔界への招待』〜ホラー小説の命脈〜

先日読んだ時代小説のアンソロジー「闇に立つ剣鬼」が面白かったので、また図書館で借りちゃいました、時代小説のアンソロジー。新潮文庫の「時代小説の楽しみ11『魔界への招待』」。でもここで、普通の剣豪小説とかに手が行かないで、まず「魔界への招待…

「フィールド 響き合う生命・意識・宇宙」〜般若心経ってやっぱすげえ〜

先日この日記に、「宇宙論とか好きなんだ」という文章を書いたら、友人のKさんが、「この本、面白いよ」と貸してくださいました。「フィールド 響き合う生命・意識・宇宙」。まだ読了していませんが、すごく面白い本。途中まで読んで、「これって般若心経じ…

「闇に立つ剣鬼」〜アンソロジーの魅力〜

時々、複数の作家の中短編を集めたアンソロジーを読みたくなります。単独の作家の短編集、というのも面白いのですが、全く違うテイストの短編が収録されたアンソロジーというのも楽しい。SF小説のアンソロジー、ホラー小説のアンソロジー、推理小説のアン…

「泡宇宙論」〜自分がコメツブになる〜

宇宙論や、天体物理学の本を時々読みたくなります。なんでか、といえば、そういう本を読んでいる時に、すうっと足元が落ち込んでいくような、不思議な感覚にとらわれることがあるから。ものすごく広大な空間の中で、自分がコメツブよりももっと小さい存在に…

ヘッセ「デミアン」〜古典の魔力〜

ヘッセの「デミアン」という本は未読だったのですが、金子修介監督の秀作「1999年の夏休み」でその一節が引用されていたので、ずっと読みたかったのです。昨日読了。この本に思春期に出会わなかったのは不幸だったなぁ、というのが第一の感想。以前、読…

「ペガサスに乗る」〜アメリカ人ってのはよ〜

仕事の関係で、アメリカ人と中国人に悩まされることが多いので、個人的にはこの2つの国のことがどうも好きになれません。あんまり言うと過激な国粋主義者みたいになってしまうので、これ以上は書きませんが。面白いのは、アメリカ人と中国人って、間に立っ…

「四十七人の刺客」〜地獄を見た人の強み〜

この週末の主なインプットは以下のような感じでした。例によって、ぼちぼち書いていきます。・女房から、シュランメルンの武蔵野市民文化会館での演奏会がとても素敵に仕上がっていた、との感想を聞く。さすがプロ、きっちりブラッシュアップしてくるんです…

「屍の聲」〜「イエ」への怨念〜

坂東眞砂子さんという作家は、定石通りに「死国」から読みました。いわゆる「モダン・ホラー」のブームが起こり、角川ホラー文庫が創刊された前後だったと思います。土着ホラーの金字塔。諸星大二郎が好き、というくらいですから、土着ホラー、伝奇ホラー、…

私のマンガ人生 そのろく〜萩尾 望都〜

ほそぼそ書き継いできた、好きなマンガ家、最後に、萩尾望都さんを取り上げます。取り上げます、なんて言っておきながら、このマンガ家について語ることが本当にできるのか、かなり心もとないんです。今ふと思ったのだけど、少女マンガ界における萩尾望都と…

「枕詞の暗号」〜言葉の多層性〜

久しぶりで図書館で本を借りて、藤村 由加 著「枕詞の暗号」という本を読んでいます。「あをによし」「ちはやぶる」などの枕詞を、単に、慣習的なもの、被枕詞を引き出すための単なる美辞、という位置にとどめるのでなく、枕詞の中にある大陸からの思想的背…

ゲド戦記外伝〜男性から女性へ〜

昨日、随分前に購入していた「ゲド戦記外伝」を読了。ゲド戦記の4巻「帰還」から、ずっと感じていた違和感が、全部ではないにせよ、かなり払拭された気がしました。そしてそれ以上に、なつかしいアースシーの世界に戻ってきた心地よさを、十二分に堪能する…

私のマンガ人生 そのご〜川原 泉〜

今日は、先日から書き継いでいる、好きだったマンガ家のお話。今日は、川原泉さんです。多分、川原泉さんの作品に対する「批評」や、「分析」というのは、ものすごく沢山の方が試みていると思います。それだけの陰影や、含蓄のある作品が多いですし。なので…

桃太郎と邪馬台国〜歴史パズル〜

歴史パズルってのは面白い、という話は、以前、井沢元彦さんの本のことを書いた時にも触れました。今回、講談社現代新書の「桃太郎と邪馬台国」(前田晴人 著)を読了。考古学と文献学の成果を駆使した歴史パズルの世界を楽しみました。一寸法師、桃太郎、浦…

私のマンガ人生 そのよん〜江口寿史・諸星大二郎〜

先日から書き継いでいる、私の好きだったマンガ家の話、今日は、江口寿史さんと諸星大二郎さんです。江口寿史さんは、友人が、「こんなに絵のうまいマンガ家はそういない」と薦めてくれたのと、ちょうど、「ストップ!ひばりくん」がブレイクした時期が重な…

私のマンガ人生 そのさん 〜吉田秋生・やまだ紫〜

今日は、先日から書き継いでいる、好きなマンガ家の続きです。今日は、吉田秋生さんとやまだ紫さんのこと。吉田秋生さんは、初めて買った少女マンガ雑誌「別冊少女コミック」で、衝撃を受けた作家でした。別に何と言うことはない、軽いボーイ・ミーツ・ガー…