遠坂めぐBirthdayワンマンライブ2024 Day & Nightで歌わないと!〜この人のCD欲しいなぁ〜

最近このブログもすっかり放置状態にしてしまってるんですが、どうしても書きたくなって、久しぶりに駄文綴らせていただきます。先週3月24日、四谷HoneyBurstで開催された遠坂めぐさんのライブ、「遠坂めぐBirthdayワンマンライブ2024 Day & Nightで歌わないと!」。昼夜二公演に参戦。時間も空間も飛び越えて人や想いを繋いでしまう「歌」の力と、それだけの力と重層的な意味を持つ「歌」を生み出せる、遠坂めぐというシンガーソングライターの才能に震えたライブでした。

ピアノ弾き語りから一旦卒業して、バンドを従えてマイクを握って歌う遠坂さんの「シンガー」としてのカリスマ性やパワーに終始圧倒されっぱなし。遠坂さんご自身も仰っていたけど、コロナ禍を超えて色んなイベントやライブの機会を持って、この人の歌声は厚みと表現の幅を倍化させてるなぁって改めて実感しました。毎月のように沢山の聴衆を集めている用賀駅GMOインターネットTOWERでのライブなど、きちんと聴衆の前で、その反応を見ながら歌っている経験が活きてるんだなぁ。個々の歌だけでなく、有機的に考えられたセットリスト、それを繋ぐMCや聴衆巻き込んでのゲームとか、ライブエンターテイメントを構成、プロデュースする力もハンパないんだよねぇ。

 

そういう意味でも、この人のCDアルバムを聴いてみたいなぁって思うんです。いつかの配信ライブで、CDは、作る労力考えると、音楽を人々に届けるツールとしては効率が悪い、という趣旨のことを仰ってて、確かにApple musicとかで新しい楽曲を次々配信していく方が手っ取り早いとは思う。だけど、複数の楽曲が連続して演奏されたり、一つのアルバムに並ぶことで、より立体的にイメージできる世界観があったりすると思うんだよね。短編小説集を読んでいるみたいな。今回のセトリの中で、家族との時間を歌った歌、として歌われた、「カレーライス」(夜公演では、「大きな一軒家」)、「5時半過ぎの音楽室で」、「もうすぐ花火はじまるよ」、という3曲の流れは、家族の温かい空気感の中で、人生の節目節目に向き合う一人の女性の存在感がよりリアルに感じられて、それぞれの楽曲の新しい魅力に気づいたりしました。「もうすぐ花火はじまるよ」って、おじいさまのお家で家族ぐるみで遊んでいた親戚のご家族との交流がベースになってるのかもなって以前から思ってて、そういう印象がより強くなったり。配信されている楽曲を自分なりのプレイリストに並べてみればいいのかなぁ。

 

個人的に、個々の歌の物語が共鳴し合って胸震える思いになったのは、「ピアス」「タイトル未定」の二曲でした。「ピアス」は、さくら学院の卒業生に遠坂さんが提供した楽曲で、私自身が遠坂さんという才能に出会った最初の曲。3年前のちょうど今頃、その卒業生が芸能界を引退してしまい、その後、遠坂さんも「なかなか芽が出ない」暗黒期に突入。大好きな曲だけど、この曲をもう聴くことはできないし、遠坂さんに、この曲を歌って欲しいって言っちゃいけない曲だって思っていたんです。さくらの卒業生の芸能界引退が発表された直後の遠坂さんの配信ライブで、その子の旅立ちに捧げると歌ってくれた弾き語りが最後だったんだと。

 

目の前に立った遠坂さんが、イントロなし(絶対音感のある遠坂さんならでは)で「ピアス」を歌い出した時、3年間閉じ込められていたものがふわっと舞い降りてきたような浮遊感と、今も笑顔でいて欲しいさくらのあの子への想いが渦巻いて、さらにそれが、大人に向かって背伸びをする少女とそれを優しく見つめる先生との絆の物語である「ピアス」の楽曲と重なって、もう感情が沸騰。遠坂さんの方を正視することができず、ずっと俯いてボロボロ泣いてました。「ピアス」聴いて号泣してる60近いオッサンって何者だよねぇ。でも本当に、それくらい自分にとって大切な歌だったんだ。

youtu.be

この「ピアス」の後に「タイトル未定」を持ってこられて、ここでまた涙腺決壊。大人になって恩師に結婚の報告に来たお嬢さんが新生活に心浮き立たせている、なんていう明るい未来につながる物語が頭の中に勝手に組み上げられてしまって、「ピアス」という楽曲が、暗黒期を抜けて本当に明るい日の当たる場所に飛び立ったんだなぁって思った。「タイトル未定」は、「もうすぐ花火はじまるよ」と「明日君に会えるせいだ」に挟まって、あんまりプロモーションかかってない曲なんですけど、ジョン・レノンの「Happy Christmas」を連想する華やかなイントロから、遠坂さんらしい日常の幸福の情景を重ねていく歌詞が多幸感半端ない名曲です。

youtu.be

遠坂さんの声は、パワフルさの中にピュアさ、というか、キュートさがあって、それが彼女の唯一無二の切ない歌声につながってる気がする。パワフルなんだけど、大人の色気が過剰なわけではなく、音圧が高すぎるような圧倒的な声量でもない。いきものがかりの吉岡さんに似てると思うけど、あそこまで真っ直ぐストレートじゃなくて、ちょっとハスキーな雑味が混じっていて、そこがキュートさや切なさを生んでる気がする。だから女子高生の背伸びした想いも歌えるし、さとり世代のプロテストソングもパワフルに歌える。昼の部に歌われた「ぱせり」のようなキュートな曲もこなせる、表現の自由幅の広い歌声だと思います。「ぱせり」は少し前の配信ライブでコメントしたら太田さんが拾ってくれて、その場でアドリブで久しぶりに披露された曲で、この曲が「みんなのうた」に採用されないかなぁって結構マジで思ってるんだよね。最近流行りのダイバーシティなんかもテーマになってるし。

ライブセットリストとステージ写真。遠坂さんのXから転載

夜の部のアンコール、ライブでは必ず歌われる「月にありがとう」で、亡くなったお父様の思い出を語りながら、「今日も最前列でカメラ構えて聴いてるんじゃないかなって思います」って言われた時、偶然空席になっていた隣の椅子に、遠坂さんのお父様が座っているような気がしました。遠坂さん、素敵な時間をありがとうございました。変幻自在のバンドメンバーも最高でした。月にはなれないけど、月のそばで貧弱に瞬いてる星の一つのように、この唯一無二のシンガーソングライターが、どこからも見える場所に立つ日まで見守れたらと思います。