人柄がよくてパフォーマンスがいいってのは無敵だよねぇ。

6月8日は我々夫婦の結婚記念日なんですが、なんと今年は25年目。いわゆる銀婚式でございました。結婚記念日の前後の週末には、結婚式を挙げた都ホテルに泊まる、というのが我が家の年中行事だったんですが、2020年以降はコロナのせいで宿泊はできず。今年は銀婚式だし、コロナもかなり落ち着いてきた、ということもあり、久しぶりに家族3人で、都ホテル一泊の年中行事を再開することができました。銀座の和光でお買い物をしたり、都ホテルのレストランでお食事をして、のんびりすごす都内の贅沢。話題の都民割は使わなかったけど、確かに東京都内でも素敵な場所は一杯あるよね。

結婚式を挙げた都ホテルの「杜のチャペル」。ちょうど挙式の最中でした。結婚披露宴も戻ってきたんだなぁ。

ランチに伺ったカフェ・カリフォルニアからは、アニバーサリープレートのプレゼントいただきました。

さて、今回のブログのメインの話題は、結婚記念日前後のハレのイベント、ということで、今日6月12日に家族3人で行った、マルティン・ガルシア・ガルシアさんのリサイタルです。

去年の10月に開催されたショパン・コンクールは、反田恭平さんと小林愛実さんが入賞されて日本でも随分話題になりましたけど、我が家で最も人気が出たのはガルシア・ガルシアさんでした。鼻歌を歌いながら演奏する姿や、多少のミスタッチより曲の歌心を優先するスタイルとか、とにかく楽しいピアニスト。でも、輝かしい音(輝きすぎる音)を持つFAZIOLIというピアノを、表情豊かに歌わせる技術もしっかり兼ね備えている感じがとても気に入って、結婚記念日のイベントにちょうどいいよね、と、都ホテルから川崎ミューザへ向かう。

会場の川崎ミューザ、この写真は開演前でしたが、開演時にはほぼ満席。その満席のお客様に向かって、ガルシア・ガルシアさんのサービス精神が遺憾なく発揮されたコンサートでした。第一部のピアノ・ソロから、輝かしいピアノの音が会場全体を満たす感じが本当に心地よい。間の取り方、幅広いダイナミクスピアニッシモからフォルテまで決して失われないキラキラした音のツヤ、例によって鼻歌ももちろん聞こえてくるのだけど、それが決して曲を邪魔していない。この人は自由奔放な弾き手のように言われるけれど、ものすごく技術が高くて、さらに楽譜の中から掬い取ってくるものも凄く深いなぁって感じました。

そして圧巻だったのはアンコール。コンチェルトも終わって、全国ツアーでかなり疲れもたまってるのじゃないか、と思うのに、会場の拍手に応じて次々と演奏してくれたアンコール曲はなんと7曲。30分以上に及ぶ、「第三部」といっていい盛り上がりを見せました。

プログラムに掲載されていた彼の言葉にもあったけど、日本のクラシック音楽の聴衆って世界的にも最高レベルなんじゃないかと思うんだよね。欧州ではもうあまり顧みられなくなりつつあるクラシック音楽の世界だけど、日本では子供のお稽古事にピアノを習わせる家庭が本当に多いし、クラシック音楽の愛好家もまだまだ多い。想像だけど、ガルシア・ガルシアさんが欧州の会場で浴びる喝采よりも、ずっとずっと大きくて暖かい拍手で、彼自身本当に嬉しかったんじゃないかなぁって思います。

でも、そういう聴衆の拍手に一生懸命こたえようとしてくれる誠意が、また聴衆を彼のファンにしてしまうんだよね。音楽や演劇、全てのステージ・パフォーマンスに共通することだけど、人柄っていうのはパフォーマンスに出るんだよなぁ。ガルシア・ガルシアさんの演奏は、楽譜から掬い上げてくる解釈や表現が、過去の弾き手と少し違う感じがあって、それが彼の「奔放さ」と言われることもあるけれど、何かしら「奇をてらおう」としている感じはしない。人と違うことをしよう、と思っているのではなくて、単純に、楽譜から感じたことに忠実に演奏している誠意が根底にあって、そしてそこにはどこかしら底抜けの楽天主義というか、聞く人の心を温かくする明るいポジティブな視線がある気がする。そういう人柄の良さがパフォーマンスににじみ出てくるから、余計に幸せな気持ちになってくるんだよなぁ。

毎週聞いている遠坂めぐさんのYouTubeライブで、遠坂さんが、慶応大学の藤沢キャンパスで共に学んだ、という、あの鈴木愛理さんのことを、「本当に普段からあのまんまの、明るくて素敵な方なんです」とおっしゃっていて、鈴木愛理さんがこれだけ愛されてるのって、やっぱり人柄なんだなぁって思ったことがあります。川崎ミューザに今日集った聴衆は全員、ガルシア・ガルシアさんのファンになっちゃっただろうなぁ。もちろん、ただ人柄がいい、というだけじゃなくて、努力や研究に支えられた高いパフォーマンスがあってのことなんだけど、人柄がよくてパフォーマンスがいいってのは本当に無敵だよねぇ。人柄がいま一つでパフォーマンスがいいっていう人もいると思うけど、人柄がよくないとやっぱり固定ファンはつかないと思うんだよなぁ。人柄がよくてパフォーマンスがいま一つの人ってのも、結構ファンがついたりするからねぇ。ステージパフォーマンスをやっている以上、人柄を磨くってのはすごく大事なことなんだよねぇ。