「ライブ」がくれる出会い その1~やっぱりお客様って大事なんだなぁ~

最近のこの日記ではずっと似たようなテーマを書いている気がするんだけど、コロナ禍を経て、「ライブ」という空間と時間を共有する機会が増えてきて、改めて、ライブって「出会い」だなぁっていう感覚を思い出しているのかもしれないです。今回も、そういう「ライブパフォーマンス」がくれた「出会い」の話を2つ書きたいなって思っているんですが、全然違うテーマなので2回に分けて書きます。一つ目は、家族で行ったお寿司屋さんでのお話。

6月8日は自分達夫婦の結婚記念日で、なんとなく毎年この前後には、結婚式を挙げた都ホテル東京に一泊してちょっと美味しいものを食べて、という一年に一回の贅沢を楽しむのが家族の年中行事になっています。今年は娘も独立して、3人とも忙しくて宿泊は無理。さてどうしましょうか、という話をした時に、じゃあ食事でちょっと贅沢しましょうか、と、予約したのが、都ホテルのお寿司屋さん「さえ喜」。

カウンター7席しかない隠れ家のようなたたずまいのお店で、有田焼の陶板の上に次々と出てくるお料理は、どれもこれも本当に素晴らしいお料理でした。最初に出てきた味わい深い〆カツオから、もう舌も喉も大喜び。赤酢のシャリのほろほろとした粒だった食感はどんなネタにもしっくり合う。贅沢感あふれるのどぐろの棒寿司、目の前で調理してくれる毛ガニのしゃぶしゃぶ、ふわふわの太刀魚、どれも本当に美味しい。とろたくでさえ食べたことのない食感。出していただいた日本酒も、どれも醸造家それぞれのこだわりの味わいがあって、日本酒の世界の奥深さも感じることができる、素晴らしいコースでした。

寒紅梅酒造さんのNATSU SAKE。季節限定のペンギンラベルが可愛い。

ドンペリ醸造責任者だったリシャール・ジョフロワという方が醸造したというIWA。華やかな味わいでした。

でもね、素敵だったのはお料理やお酒だけじゃないんだなぁ。職人さんとのお喋りももちろん楽しかったけど、同じカウンターで隣に座ってたお若いご夫婦がとっても素敵な方たちだったんだ。奥様のお誕生日のお祝い、ということでいらっしゃってたそうなのだけど、お料理が得意な旦那様が板前さんに色々レシピを聞いている様子とか、可愛い奥様の涼しげなお召し物とか、醸し出している空気感がすっきりと品がいい。お誕生日のお祝いデザートが出てきた時に、女房がハッピーバースデーを歌ってあげた声に(オペラ歌手がちょっと本気で歌ったもんだから)感激してくれたり、お二人のお祝いの楽しい時間を共有できたのがなんだかすごく嬉しい時間だったんです。

いいお店とか、いいホテルとかって、そのスタッフや場所や設備だけじゃなくて、お客様が作るものだ、っていう話がよく言われるけど、あの「さえ喜」での時間が笑顔いっぱいの特別な時間になったのは、あのご夫婦のおかげだったなぁって思います。僕ら家族はせっかくのお二人のラブラブ時間のお邪魔してただけなのかもしれないけどねぇ。「さえ喜」みたいな密な空間は特にそうだけど、どんなレストランでも、単に出てくるお料理がおいしいだけじゃなくて、お客様の醸し出している空気感っていうのも凄く大事だなぁって思いました。

自分の関わっているオペラ舞台でも時々あることですけど、その日の客席を見て、ちょっと残念だなぁって思っちゃうことってたまにあります。自分のお目当ての人の出番が終わったら帰ってしまう、とか、演者が集中している時のおしゃべりとか、色んな客席のマナー違反で、その場の空気感が壊されてしまうことって結構ある。お食事、というのも一つの時間と空間を共有するエンターテイメントで、それは舞台も変わらない。そういう一期一会の時間で、お客様、聴衆の役割ってやっぱり大きいなぁって、改めて思った時間でした。

お料理の数々。女房作のコラージュ写真でお送りします。

江戸前寿司らしい、どのお寿司もひと手間かけている、その手間で旨味が増すんですね。

女房はワインもいただいておりました。

結婚記念日のお祝いのお皿。

ここで結婚式を挙げて26年。長いお付き合いになりましたね。これからもお世話になりまする。よろしくお願いいたします。