「のだめカンタービレ」新春スペシャル〜よくぞやった〜

のだめカンタービレ」新春スペシャル、しっかりチェックしました。色んな意味で、「よくぞやった」という感じだったね。

なんといっても、ターニャとフランクのキャスティングが最大のポイントだった気がする。女房が、「これって、ベッキーとウェンツくんがいなかったらドラマの企画自体が成り立ってないよなぁ」と感嘆しておりました。実際、漫画のファンサイトあたりでは、ヨーロッパ編がドラマ化されるなら、ターニャとフランクはベッキーとウェンツくんじゃないか、なんて予想が飛び交ってたそうで、そういう原作のファンの思いを現実にしてしまった、という点からして、「よくぞやった」と。

この二人以外の、いわゆる「外タレ」さんたちの使い方も絶妙で、アナリーゼの先生のセイン・カミュさん、お城コンサートのダニエル・カーンさんとジロラーモさん、極めつけは、ちらっとしか出てこなかった大家さんのロザンナさん。制作側の「遊び心」たっぷりのキャスティングが素晴らしい。ジャンさん役のジリ・ヴァンソンさんのくじ引きシーンの演技も笑えたよねー。

もう一つ、よくぞやった、というのが、ふんだんな現地ロケと、演奏会シーンのホールやオーケストラ。オーケストラはどうもプラハ放送交響楽団の団員さんたちらしいんだけど、声優さんがアテレコしているセリフ部分や、演奏シーンでの演技が堂に入っていてびっくり。本編の最終回のサントリーホール、というのも、「最終回はサントリーホールだと面白いなぁ」というこちらの期待に見事に応えてくれていたけど、今回も、川崎ミューザでの日本デビューやら、本場プラハスメタナホールでのコンクールシーンやら、「こういう絵が見たい!」というこちらの期待を本当に裏切らないシーンの連続で、いやよくぞここまでやりきりました。

さらにさらに、よくぞやった、というのが、漫画の中の印象的なシーンをそのまま再現したCGの数々。極めつけの人生ゲームシーンと変態の森はもちろん、黒い羽根と白いバラの処理も美しく、シュトレーゼマンとの珍道中のCG処理も実に漫画チックでよかった。

でも、そういう演出的な部分・・・ある意味、「カネと技術と、優れた演出家がいればなんとかなる」部分を越えて、出演者の方々の身体表現に一番感動したかもしれない。一段と磨きのかかった玉木宏くんの指揮ぶり、黒木くん役の福士誠治さんの演奏ぶり、上野樹里さんの演奏ぶりは勿論のこと、自分もピアノを弾くうちの女房が、「孫ルイ役の山田優さんのピアノ演奏の演技が上手だ」と感動。ネットで見ると、ピアノ演奏の経験はないので一から特訓した、とのことですが、すごい。何より素晴らしかったのが、片平役の石井正則さんのジャンピング指揮ぶり。女房が、「ジャンプもそうだけど、右手できちんと拍が刻めていて、かつ左手の表現が音よりも先行してきちんと出せているのがすごい」と感嘆しておりました。お笑い芸人さんって、リズム感がいいのだろうか。

ドラマの感動、という点で言うと、個人的には、第一日目のコンクールの優勝シーンの感動に比べて、二日目の最後の演奏会シーンのカタルシスが少し弱かったかなぁ、という気もした。構成的には非常に分かりやすくて、第一日目が、千秋くんが、みんなに支えられながら自分の演奏スタイルを確立していくビルディングストーリで、第二日目が、きちんと音楽に向き合うこと、そして聴衆に向き合うことの楽しさを知ったのだめが、千秋くんと対峙できる演奏家に成長していくビルディングストーリ。なので、二日目のクライマックスはのだめの演奏会になってしまうので、最後の千秋くんの演奏シーンが、少し「付け足し」感があるんだね。

でも、そういう構成はある意味必然で、最後の千秋くんの演奏シーンがあるから、「これからの二人が進んでいく道」がきちんと示される。この物語はここで終わるのではないよ、ということをとても分かりやすく見せてくれる。それを、ブラームスの1番、という楽曲で締めくくる・・・というか、指し示した、というのがまた、よくぞやった、という気分になるじゃないか。ドラマの中でも、千秋くんが最初にオケで振った曲。そして、ブラームス自身が、絶望から希望へ、悲嘆から歓喜へと昇華していく自らの音楽哲学を結集させた最初の交響曲。その演奏シーンを妥協なしにたっぷりと見せてくれたラストシーンに、これまた、よくぞやった、と言いたい。

本当はまだまだ、みんなの「これから」を見たい気持ちも強いんだけど(福士黒木とベッキーターニャの今後とか)、さすがにヨーロッパ編のさらに続編・・・というのは難しいでしょうねぇ。これが玉木千秋、上野のだめの見納めになると思うと、なんだか寂しい気持ちもするけれど・・・本当に素敵なドラマ、家族全員で楽しませていただきました。娘も、千秋・のだめの取っ組み合いラブシーンとか、ジャンのくじ引きシーンとかできゃらきゃら笑っておりました。しばらく原作もフォローしていないのだけど、最近の物語もちょっと追いかけてみようかなぁ。