大切な物を奪われること

昨夜、家族でニュースを見ていたら、イスラエルレバノンをボコボコにしているニュースが流れました。それを見ながら、娘が、

「どうして ばくだんを おとすの?」

と聞いてきたので、どう説明したもんだかなぁ、と悩み、とりあえず、こんなお話をする。

イスラエルっていう国がある所はね、幾千年も昔に、イスラエルの人たちが住んでいた。でも、理由があって、イスラエルの人たちは世界中に散らばってしまったんだ。その幾千年の間に、別の人がその土地に住んで、自分の家を建てて、自分の暮らしをしていた。

イスラエルの人たちは、世界中で色んな人たちにいじめられたんだ。『お前達はよそ者だ』って、みんながイスラエルの人たちをいじめた。イスラエルの人たちは、それでも歯を食いしばって頑張って、すごくお金持ちになった。いつか、自分たちが住んでいた、あの場所に帰るんだって、一生懸命頑張ったんだ。

あるとき、そういうイスラエルの人たちが、幾千年前に住んでいた場所に帰るのを、お手伝いしよう、という国が出てきた。そういう国々に助けられて、イスラエルの人たちが沢山、今のイスラエルの国がある場所にやってきた。

でも、幾千年の間、その土地に住んでいた人はびっくりした。長い長い間、自分達の土地だと思っていたのに、突然、『ボクのひいひいひいひいひいじいさんが、ここに住んでいたんだ。だからここはボクの土地だ。君たちは出て行きなさい』って言われたんだ。

パパやママや、xx(娘の名前)が住んでいるこのお家に、いきなり知らない人がやってきて、『このおうちは昔、ボクのうちだったんだ。君たちは明日から出て行ってくれたまえ』って言われたら、どう思う?そりゃあびっくりするし、怒るよね。そうやって、イスラエルの人たちは、長い間その土地に住んでいた人たちと、ずっと喧嘩をしているんだよ。」

娘はそのお話を聞いていて、知らないおじさんがいきなりやってきて、「君たちは出て行ってくれたまえ」と言うくだりで固まってしまいました。しばらくしてから、恐る恐る、

「ねぇ、xxのおうちは、むかしは、はたけだったんだよね?べつの人の おうちじゃないよね?」

と聞くなり、女房に抱きついてぐずぐず泣き始めました。

「大丈夫だよ、このおうちは、ちゃんとパパやママやxxのおうちだよ。誰も『出て行け』なんていわないから」

なんて、慰めたのですけど、子供心に、いきなり知らない人がやってきて、「出て行け」と言われた人たちの恐怖や悲しみが理解できたようです。

もちろん、イスラエルにだって大義はある。でもどれだけ大義があろうが、人が住んでいる町に向かってロケットを撃ち込んじゃいけません。北朝鮮が誰もいない海に向かってロケットを撃ち込んで、あれだけ騒いでおいて、市街地にロケット撃ち込んで実際に人を殺している国に、誰も、「やめなさい」と言わない、言えないのは何故なんだ。

今日はナガサキ原爆記念日。冷戦が終わって、核兵器の恐怖が後退した後でも、空から降って来る突然の死に怯える人がいる限り、日本人には、原爆の恐怖を語り継ぐ義務がある。そして一人の親として、自分の娘には、大切な物を奪われた人の悲しみを理解してあげられる人間に育ってほしいと、本当に思います。