さくら学院の楽曲のベースラインが好き

世の中ではKAWAII SONICで@onefiveが盛り上がっていたり、Zepp HanedaでBABYMETALが盛り上がっておりますが、仕事の都合とかチケット確保できなかったりと蚊帳の外の自分は、ひたすらさくら学院の楽曲を聞きまくっている引きこもり父兄状態になっております。そんな中で、さくら学院の楽曲のベースラインのことをちょっと語ってみたくなりました。

他のアイドルさんの曲を一杯聞きこんでいるわけでもないので、さくら学院の楽曲をことさらに賛美しようというわけではなくて、単純に、さくらの曲に時々現れるかなり凝ったベースラインが好きだなぁ、という個人的な好みの話です。リズム楽器として、通奏低音のビートをしっかり刻む単純なベースラインと違って、旋律楽器としてのエレキベースが対旋律をがっつり鳴らしていたり、時々かなり荒ぶったソロを弾いていたり、エレキベースではなくて打ち込みでベースラインを鳴らしているのにその音の厚みや音色にかなりこだわっている曲が結構あって、それがたまらなく好きなんだよなぁ。

もともと、小中学生という変声期前の少女たちがメインボーカルを取っているので、中元すず香さんや戸高美湖さんのような少数の例外を除くと、そんなに豊かな倍音を持たない硬質な声が主旋律を取ることが多い。なので、ベースラインがくっきりと分厚い音像を形作ることで、曲の音の厚みが増す感じがある。ベースラインの倍音の上に、カツンとした響きの少女たちのボーカルがハマった時の快感。

さらに言うと、さくら学院の楽曲自体が、年を重ねるにしたがって低音部の厚みを増していった感じもするんですよね。例えば、2012年度~My Generation~に収録された「スリープワンダー」と、2017年度~My Road~に収録された「スリープワンダー」を聴き比べてみると、明らかに後者の方がベースの音が強調されて聞こえてくる。さらに典型的なのは、2014年度~君に届け~の「アニマリズム」と、2020年度~Thank You~に収録された「アニマリズム」。もう別の楽曲じゃないかと思うほどに音像設計が変化していて、後者の方がこれでもかとばかりにベース音の厚みが強調されている。さくら学院の楽曲を多数作編曲しているベーシストの本田光史郎さんの影響もある気もするんだけど。

ということで、個人的に、この曲のベースラインが好き、という曲をいくつかピックアップしてみました。さくら学院の楽曲を知らない方も、是非一度聞いてみて欲しいし、さくら学院の楽曲に親しんでいる方も、この曲のベースラインの音にちょっと耳を傾けていただくと、決して妥協することのなかったこのグループの楽曲の新しい魅力を再発見できるかもしれません。そして、「お前、ホントに聴き方が浅いなぁ、なんであの曲のあのベースラインを取り上げないんだよ!」というディープな父兄さんの感想もあるかもしれません。いずれにせよ、さくら学院というグループが世に送り出した楽曲たちの魅力について色々語ってみたい、というのがこの文章のメインの目的になります。正直、「この曲のベースラインも無茶苦茶いいなぁ」と思った曲も他にも沢山あったのですけど、長文になりすぎるので、泣く泣く数曲カットしております。

 

・Dear Mr. Socrates[バトン部 Twinklestars](2010年度~message~収録)

 今回、この記事を書こうと思って聞き直した楽曲の中で、こんなにベースラインが遊んでいたんだ、と驚いた楽曲です。全体の音像がそんなに低音を強調していない中で、ベースラインも高音域で軽やかに遊んでいて、曲全体をとても軽やかな感じに仕上げている感じがします。この曲ほど遊んでいないんですけど、同じバトン部の「天使と悪魔」(2014年度~君に届け収録)のベースラインも時々軽やかに遊んでいる箇所があって、これがバトン部の楽曲の特徴だったのかな、とも思います。

 

・サイエンスガール・サイレンスボーイ[科学部 科学究明機構ロヂカ?](2012年度~My Generation~)

 Bメロから入ってくるベースラインがサビになるまで複雑な対旋律を奏で続ける。サビで一瞬リズム系になったかと思うと間奏でまた暴れ始める。一部は打ち込みかな、と思うのですけど、この複雑なベースラインが、DNAの描くらせん構造のように、曲の印象を迷路のようなミステリアスなものにしている感じがあります。科学部は、2012年度~My Generation~の「デルタ」も、2013年度~絆~の「Welcome to My Computer」も、ベースラインが本当に凝っていて、楽曲の知的な世界観と合っている感じがします。

 

・予想以上のスマッシュ[テニス部Pastel Wind](2013年度~絆~)

 この曲のベースラインはもう最初から最後まで、奏者が遊んでいるみたいな軽やかさがあります。リズム感、スピード感、というより、主旋律とネット越しにラリーを楽しんでいるようなセッション感がたまらなくよい。2012年度~My Generation~収録の「スコアボードにラブがある」にも共通する遊び心溢れるベースラインです。

 

・キラメキの雫(2015年度~キラメキの雫~)

 この曲のベースラインはそんなに特徴的なフレーズを奏でていないのですけど、ずっとロックベースの荒ぶる感じが続いていて、それが爆発するのが間奏のチョッパーベースのソロなんですよね。小中学生アイドルがチョッパーベースのソロをバックに踊る、というだけでなんだか胸沸き立つ感じがあります。チョッパーベースといえば全編チョッパーベースが暴れている「あきんど☆魂」という名曲もありますね。

 

・My Road(2017年度~My Road~)

 今回この記事を書いたのはこの曲のせい、といってもいいくらい、この曲のベースラインのカッコよさには本当にシビレました。これは恐らく編曲の本田光史郎ご自身がベースを弾いてらっしゃるのじゃないかな。間奏でのピアノとベースのバトルも無茶苦茶カッコいい。2014年度~君に届け~収録の「さよなら、涙」や、2017年度~My Road~の「未来時計」もピアノが印象的な曲なのですけど、どちらもとても印象的なベースラインがあります。ピアノにベースが絡むとどこか緊張感というか、曲に切迫感が生まれる感じがします。「悔しくて大泣きしたって」の歌のバックで鳴っているベースの対旋律がなんだか温かいんだよなぁ。

 

・クロスロード(2019年度~Story~)

 コロナ禍のために卒業公演が縮小されて、配信ライブで1回しか披露されなかった曲ですけど、この曲は歌い手をベースが支えている感覚がすごく強くて、特に1番・2番の歌いだしは、4人の声とベースラインがほとんど同じウェイトで鳴っている感じがして、4人とベースの5重唱のように聞こえるんです。

 

「クロスロード」もそうだし、「My Road」、そして、2020年度~Thank You~の「The Days~新たなる旅立ち~」でもそうだけど、さくらの楽曲のベースラインは決してとがった音じゃなく、丸みや柔らかさ、どこかに温かさがあって、さくらの子達の歌声に寄り添う感覚が強い気がしています。考えすぎかもしれないけど、ベースの低音がさくらの子達の声を包み込んだり、あるいは声に推進力を与えているような、前に向かって背中を押してあげているような感じが、さくらの子達を見守る職員室の先生の思いを代弁しているような感覚までする。そんな感覚が、自分がさくらの楽曲のベースラインに魅かれる理由なのかもしれないって思ったりします。