Singspielerのさろん・こんさーと、無事終演いたしました。

4月16日に開催した自分の小さなコンサートの準備や宣伝に注力していたおかげで、このブログの更新が約一か月間空いてしまいました。おかげさまでコンサートはなんとか無事に終演したのですが、この一か月、それ以外にも大きなインプットが2つあって、コロナ禍の中でもかなり充実した日々を過ごしておりました。一つは、しっかりインプットをしないと、と女房と行った新国立劇場の「夜鳴きうぐいす」「イオランタ」。そしてもう一つは、自分のコンサートの前日にパワーをもらおうと参戦したBABYMETALの武道館10days最終日。このあたりの感想とかも書いていきたいのだけど、とりあえず今日は、なんとか終演までこぎつけることができた自分のサロン・コンサートの感想を書こうと思います。

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会場はいつものマエストローラ音楽院。本当なら50人近くお客様を入れられるサロンで、10名のお客様に限定、写真のように、お客様と演者の間にパーティションを置くなど、昨年のコンサートよりもかなり厳しめの対策を取っての上演。でも、新国立劇場や武道館とか行ってみても、客席の間隔、入場時の検温や手指消毒、連絡先の確認やマスク着用など、色んな形での感染防止対策が定型化されてきた感じがしますよね。実際、ライブハウスやカラオケボックスなどのクラスターは頻繁に報告されているけど、クラシックの演奏会でお客様が集団感染したって話って聞かない気がするなぁ。BABYMETALの武道館だって、5000人近い観客を10日間集めて、集団感染の話なんか出てないんだよなぁ。もちろん、問題は演奏会そのものじゃなくて、その準備段階の稽古場で密が発生してクラスターが出てきちゃうってことなんだろうけど。

今回の演奏会のテーマは、「中学校音楽教科書」。オペラやオペレッタばっかりやってて、その中でも悪役中心に色モノばっかり歌っている私に向かって、前回の演奏会の直後に、女房が、「中学教科書に掲載されているようなスタンダードナンバーをしっかり歌えるようになった方がいい」と言ってきた。そういえば、ちょうど音楽教科書が今年度改訂を迎える、ということもあって、では中学教科書に挑戦、というテーマでやってみようかと。

でも、この中学教科書、というのが意外と難物でした。皆さんがよくご存じの曲ばかり、ということは、逆に言えばボロも出やすいですし、何より、オペラやオペレッタのように演技とかケレン味でごまかすことができない。ただ真っ直ぐ歌に向き合わないといけない。そして向き合ってみれば、例えば「荒城の月」のような超スタンダード曲でも、一つ一つの音符や休符の中に何かしらの意味があって、それをおろそかにしてしまうと曲の味わいが損なわれたりする。何も考えずにただ歌うだけじゃ、それこそ中学生に聞かせられる出来にならない。

加えて、毎年春先になると発症する喉の炎症もあって、本番一か月前くらいの練習中に、声がかすれて全く音程が取れなくなることが何度かありました。曲数を減らしたり医者に行ったりしましたけど、もともとメンタルが弱くて本番前になるとすぐ喉の調子が悪くなることに加えて、やっぱり年齢の問題もある気がします。若い頃なら喉に無理な発声していても声が出ていたものが、ちょっとでも無理すると声帯の響きが支えられなくなっているのかな、と。

そういう自分の身体の状態で、中学教科書の名曲を歌うっていうのは、本当にハードな挑戦でしたけど、逆にいえば、自分の身体の中で何が起こっているのか、どういう筋肉の使い方や響きの場所を狙えばちゃんと最後まで響きを保てるのか、という発声の基本を凄く意識させられる機会でもありました。英語を勉強している人によく、「中学英語をしっかり勉強しなさい」ということがあるけど、音楽でも同じなんだなぁ。大事なことは全部、中学校の教科書に書かれているんですよね。

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安定のパフォーマンスで支えてくれた共演者のお二人、受付含めてがっちりサポートしてくれた我が女房どの、そして、相変わらずの心優しいお客様たち。クイズ大会も盛り上がって、皆さんの笑顔を見ながら歌った「翼をください」や「ふるさと」は、こんな時期だからこそどこか胸に迫るものがありました。お客様の前で、同じ空間、同じ時間を共有しながら歌えることの幸せ、改めて実感した時間でした。やり方は色々と工夫が必要だけど、そういう困難を乗り越えても、こういう時間をこれからも守っていきたいなって思います。