2022年を振り返ってみれば~また新たな「出会い」を求めて参ります~

2022年も暮れてまいります。せっかくの年末なので、毎年このブログでやっている一年の振り返りをやってみようかな、と思います。

この一年の自分のインプットやアウトプットを思い出してみれば、コロナ禍から回復してきた舞台表現の現場に合わせて、推し活動も含めて様々な演奏会やライブに参戦したり参加したりできた一年でした。中でも特に心に残っているアウトプットとインプットを2つずつ並べるなら、

アウトプットでは、6月に開催した自分のサロンコンサートと、8月に開催した久しぶりのGalleria Actors Guild(GAG)公演、

インプットでは、10月に聴きに行った女房主催の東京室内歌劇場の「アメリカン・ソング・ブック」コンサートと、11月に参戦したonefiveのSPOTLIGHTライブ、

かなぁ、って思います。総じていえば、自分自身の加齢に伴う限界が見えつつある中で、それでも前に進む勇気や、自分が見たことのない風景がまだまだあることを実感した一年だった気がします。

まずはアウトプット。6月に「道化師またはサーカスを巡って」というタイトルでサロンコンサートを開催したのですが、コンサートの途中で声帯がしっかり合わなくなって、ほぼ一曲まるまるまともに歌えなくなってしまいました。なんとかその後のMCなどで喉を復活させて、後半はそれなりに歌えたのだけど、せっかく来て下さったお客様には本当に申し訳ない時間を過ごさせてしまった。自分でも本番舞台でそんな状態になったのは初めてだったからかなりショックでした。コロナ禍でしっかり声を出す機会が減っていることも一因とは思うけど、なんといっても一番の原因はやっぱり加齢かな、と思います。そろそろ60歳近くなって、昔ならできていたこと、昔なら無理やりなんとかなっていたことがやっぱりできなくなってきているな、というのを実感した瞬間でした。

そんな経験もあって、どこかで自分で表現していくことに自信を無くしてしまったのですけど、それでも自分がこれまで続けてきたシリーズはなんとか続けたい、と開催したのが、8月のGAG公演。2007年から始めた、池澤夏樹さんのジュブナイル「南の島のティオ」の朗読シリーズは、もう残すところ2篇、「ホセさんの尋ね人」と「エミリオの出発」のみになっていました。この「ホセさんの尋ね人」にしっくりくる曲がある、と女房が持ってきたのが、アンドレ・プレヴィン作曲の「サリー・チザムによるビリー・ザ・キッド追想曲」。帰らない人を待ち続ける心、もういない人の思い出を大切に抱き続ける心、をテーマにしたこの二つの物語をつなぐテーマとして、「Long Absence」というタイトルにしたこの舞台で、自分が舞台を続けていくことの意味が少し見えた気がして、その感想を以前、このブログにも書いています。

singspieler.hatenablog.com

何かと何かが出会う所に表現が生まれる。この「南の島のティオ」の朗読シリーズも、長谷部和也さんの、南の島の色彩とファンタジーを優しさでくるんだ温かいイラストとの出会いがなければ続けてこれませんでした。長谷部和也さんとの出会い。ホセさんの尋ね人、という物語と、アンドレ・プレヴィンの音楽との出会い。素晴らしいピアノを弾いて下さった田中知子さんと女房との出会い。そして、当日の客席で久しぶりに顔を合わせたお客様たちとの出会い、その笑顔。そんな出会いが表現を支えている、僕らが舞台を続けている意味なんだ、と気づかされた瞬間でした。

長谷部くんの描くティオの島に、また一緒に行きたいなって思います。

 

インプットで言えば、娘のオーケストラの演奏会や、女房の出演するオペラ舞台、そしてさくら学院卒業生関係のライブなど、コロナ禍の中でもなんとか戻ってきたライブを沢山経験することができたんですけど、中でも自分の中で新しい発見があったのが、女房が主催した「アメリカン・ソング・ブック」でした。この感想もこのブログに書いています。

singspieler.hatenablog.com

これまで自分が良く知っているつもりだったフォースターの曲などが、欧州の故郷を捨てて何一つない荒野に新世界を作り出そうとしたアメリカの原風景と重なった時、アメリカ文化の持つ空虚さ、故郷を失った寂寥感のようなものがすっと腑に落ちた。60年近く生きてきたからといって、世の中はまだまだ自分が知らないことに溢れているんだなぁって実感。確かに若い頃にはできたことができなくなってくる限界もあるけれど、それでも沢山の未知との「出会い」が、きっとこれからも生まれてくるし、自分でそんな「出会い」を生み出していくことだって、まだまだできないわけじゃないかもしれない。

そんな思いに背中を押してくれたのが、11月に参戦したonefiveのライブ、SPOTLIGHTでした。さくら学院の卒業生4人で構成されたonefiveが、ドラマ「推しが武道館に行ってくれたら死ぬ」の主題歌「未来図」を引っ提げて開催したライブ。漫画やアニメの「推し武道」ファンの方々との「出会い」を通して、色んな人たちの夢や希望も背負って前に進んでいく4人の姿にものすごく勇気をもらいました。人と人との出会いと笑顔を届けることの尊さを心から実感させてくれたライブでした。

singspieler.hatenablog.com

今年は映画でも、「麻希のいる世界」や、「DEAD OR ZOMBIE」などの佳作を見ることもできたし、TikTokアワードを獲得した遠坂めぐさんのライブにも参戦できたし、結構充実した一年だったなぁって思います。まだまだ不安なニュースも聞こえてくる世界だけど、でもそんな時代だからこそ、人と人との出会いや笑顔を届けていきたいし、自分自身も知らない世界と沢山出会っていきたい。そのために、加齢での衰えをどうやってカバーしていくか、しっかり自分の身体とも向き合いながら、自分に何ができるのか考えていく一年にしなければな、と思います。2022年、皆様お疲れ様でございました。来る2023年が皆様にとって、素晴らしい出会いと笑顔に満ちた一年になりますように。