パフォーマンスでコスパは大事っすよね

最近話題で、我が家でも申し込んでいた東京五輪のチケット、開会式などのプラチナチケットは当然のように全敗する中で、ご近所の味の素スタジアムで開催される「近代五種」なる競技が当選いたしました。当選するまでは全くどんな競技が知らなかったこの競技、とにかくご近所開催、というのと、チケットの安さで申し込んでみたんですが、当選してみれば俄然興味が湧く「にわかファン」。聞けば、東京五輪のプレ大会、ということで、味の素スタジアムの隣の、武蔵野の森スポーツプラザで、週末にワールドカップが開催されると言う。これは行かねば「にわかファン」の名が廃る、と言うことで行ってきました。

 

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馬術〜。さすがJRA協賛〜。

 

さて、初めて見た「近代五種」競技、これが結構面白かったんですよ。サポートしている日清食品が、「キング・オブ・マイナースポーツ」、という自虐ネタサイトを展開するくらい、なんでこの競技を組み合わせた、というスポーツなんですけどね。水泳+フェンシング+馬術+ラン+射撃。なんじゃそりゃ。

www.nissin-kingo.jp

なんじゃそりゃ、と言いつつ、面白かった、という一つの要因は、圧倒的なコストパフォーマンス。東京五輪のチケット代は一人4000円ですよ。それで5つの競技が一日で楽しめる。で意外と、それぞれの競技の魅力がダイジェストで楽しめたりするんです。今回集中的に見たのは、フェンシングと馬術だったのだけど、フェンシングも結構個々の選手の駆け引きがあって楽しかったし、極めつけは馬術。馬の能力をいかに最大限引き出すか、という騎手のテクニックもそうだけど、単純に馬が綺麗で可愛いんですよね。選手を応援しているはずなのに、いつのまにか、馬を応援している。考えてみれば、五輪で、ヒト以外の生物が競技に参加するのって、馬術しかないよな。鷹狩りとか五輪競技になったら別だが。

で、今日の日記の主題にいきなりジャンプ。先週日曜日にせんがわ劇場で開催された、うちの女房が参加している「万年筆女子会コンサート」ですよ。万年筆好きのオペラ歌手五人が集まったというこのコンサート、近代五種とどう結びつくんだ、といえば、これも圧倒的なコストパフォーマンス、というか、お得感が共通しているんだよね。

 

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なぜ木魚、と問うなかれ。

 

東京室内歌劇場の実力派歌手がそろって、それぞれに自分の個性を発揮できる滅多に聞けないソロ曲と高度なアンサンブルを聞かせてくれるこのシリーズ。今回も、ヒンデミットあり、スペイン民謡あり、メノッティあり、と、中々他では聞けない魅力的な歌曲が一杯。ドヴォルザークロッシーニ、という選曲は多少メジャーかもしれないけど、それでもチェコ語と、「ランスへの旅」だもんね。こういうマイナーな曲がいっぱい聞けるだけで、お得感半端ない。

さらにこのグループの特徴が、以前の演奏会の感想でも繰り返し言っているけど、アンサンブルの見事さなんです。「ずいずいずっころばし」「村の鍛冶屋」などの耳慣れた童謡を聞かせてくれるのだけど、どれも一筋縄ではいかないアレンジばかり。信長貴富アレンジの「一週間」などは、時空がねじれるような怪しいアレンジで、「信じてください、私たちの音はあっています(はずです)」という田辺いづみさんのコメントを受けて、耳慣れた旋律が怪しく捩れるたびに客席も思わずクスクス反応してしまう。そういう難易度の高いアンサンブルを仕上げてくる妥協のなさも、このグループの魅力。

 

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アンコールは木魚その他の鳴り物やらオブリガード、挙句にエグザエルダンス入りのサンバ「ショジョジ」。やり切らなきゃ面白くない所をガッツリやり切ってブラボー。

 

こういう色んな曲を集めたコンサートって、普通にやると、日頃歌い慣れているレパートリーを安易に並べてしまいがちになると思うんです。ソプラノ歌手が集まって演奏会、なんてなると、誰かが必ず「私のお父さん」とか「そはかの人か」とか歌うし、メゾがいれば「ハバネラ」、男性歌手もいればアンサンブルは必ず「こうもり」か「椿姫」の乾杯の歌、なんて演奏会いっぱいある。そういう演奏会に限って、アンサンブルは当日の朝二、三回通して終わり、って感じだから、アンサンブルの質がすごく低かったりする。選曲って、演者の知性と飽くなき向上心と聴衆の側に立った想像力が如実に表れちゃうんだよね。そういう意味で、「万年筆女子会」の選曲はいつも何かしら攻めてくる挑戦があり、聴衆の目線に立ったサービス精神があって、それがこの演奏会シリーズの圧倒的な「おトク感」につながっているんだと思います。

そういう歌い手の攻めの姿勢を変幻自在の安定感で支える田中知子さんのピアノが素晴らしい。帰り道、「本当に色んな曲を弾きましたねぇ」と声をかけたら、「もうねぇ、今までの貯金で年金生活したいのに、まだ新しいことやらされるのよ」と、嬉しそうに愚痴をこぼしてらっしゃる、そのお姿が可愛いッス!

女房が歌ったメノッティの「領事」の「Papers aria」。聞いたのは二度目でしたけど、何度聞いても、終盤に世界がいきなり普遍的な祈りのステージに駆け上がる箇所で涙が出ます。こういうあまり知らない名曲の魅力に触れられるのが、このシリーズの醍醐味。紙を使った演出含め、素晴らしいパフォーマンスでしたよ。

今回、第一回演奏会に続いて、字幕スライドの製作と映写でお手伝いしましたが、字幕一つ取っても歌い手のこだわりがあって、イラストや写真選びから改ページのタイミングまで、歌の世界を壊していないかを常に気にしながらの製作でした。映写タイミング含め、大きなミスはなかったかな、と思いますが、何かやらかしてたらごめんなさいね。田辺さんのソロの蚊の羽音のくだりとか、女房の「Papers aria」の緊迫するシーンとかは、なんだか歌い手さんとの阿吽の呼吸が楽しめて面白かったです。

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憧れのせんがわ劇場の調光室に入れて感激!東京室内歌劇場のスタッフの皆様、せんがわ劇場のスタッフの皆さん、サポートありがとうございました。これを読んだ皆様、もしお時間とご興味があれば、万年筆女子会コンサートに是非足をお運びください。ホントに、得した気分になりますから。