「透明なゆりかご」、とか、「グッド・ドクター」、とか

医療もののドラマっていうのは人気があるんですねぇ。汚いものも綺麗なものも含めて、人間の本質が一番露骨に表面化する瞬間っていうのは、人の生き死にに関わる瞬間とセックスに関わる瞬間で、映画やドラマがその二つを永遠のテーマにしているのは多分そういう理由。セックスに関する描写が自己規制のせいで制限されている昨今、医療ドラマが人気なのは、それが今、テレビドラマという表現の中で、人間の本質を描ける一番いい題材だからなのかな、とも思う。

少し前に最終回を迎えた「グッド・ドクター」にはかなりハマりました。娘は最近首まで浸かってしまっているTEAM NACSの戸次さん目当てに、私は、さくら学院の卒業生の松井愛莉さん目当てに見てたのだけど、とにかくどの役者さんも存在感があって本当に素敵。真ん中にいる山崎賢人さんや上野樹里さんの演技が素晴らしいのは勿論なのだけど、子役の役者さんたちがみなさん達者で、それにもすごく泣かされました。8話でお兄さん役で出ていた池田優斗君の複雑な感情表現、最終話の松風理咲さんのひたむきな演技には脱帽。さらに、戸次さんを初めとして、2話の黒沢あすかさん(塚本晋也さんの「六月の蛇」に出てた性格女優)、院長役の柄本明さんなど、脇役の演技も重厚。そういう中で、松井愛莉さんが本当に自然体のいいお芝居をやっていて、さくら学院にいた頃は本当に何もできなかった松井さんが、いい役者さんになったなぁ、なんて思ったり、8話でお母さん役で出ていた酒井若菜さんが、実はグラドルだった頃から結構好きだったんだけど、本当にいい女優さんになっちゃったなぁ、なんて思ったり、おじさんなりの色んな感慨もあった。

そして、今日、帰宅して、偶然テレビをつけたら、懐かしい鈴木杏さんがお母さん役をやっている「透明なゆりかご」の最終回をやっていて、もう号泣してしまって困ってしまう。鈴木さんの目には魔力があるね。あの大きくて透明な目から、一粒涙がこぼれるだけで、もうこちらはボロボロ。このドラマでも酒井若菜さんがお母さん役をやってるんだね。酒井さんって、なんか富田靖子さんみたいなポジション占めつつあるんだなぁ。

女房の実家が小児科医で、義兄が新生児医療のエキスパートだ、ということもあって、こういう医療ドラマ、特に子供の病気を題材にされると、それだけでなんとなく思い入れてしまう、というのもあるんですけど、やっぱりこういう物語に入れ込んでしまうのは、ふゆちゃんのことがあったからだな、と思います。娘の幼稚園の同級生で、脳腫瘍で6歳で亡くなったふゆちゃんは、年をとった者が先に死ぬ、という条理が、決して絶対ではない、ということを私に教えてくれました。吉田秀和の「たとえ世界が不条理であったとしても」を読んだ時にも、ふゆちゃんのことが頭をよぎった。どれだけ世界が不条理だったとしても、僕らはこの世界で前を向かなければならない。病気と闘う子供たちはみんな、僕らにそういう心の力をくれる天使なんだと、本当に思う。