東京都合唱コンクール〜ご一緒に、合唱などいかがですか?〜

所属している合唱団麗鳴で、先日、文京シビックホールで開催された、日本合唱連盟の合唱コンクール東京都大会に出場してきました。結果は銅賞入賞。団員一同大満足の結果になったんだけど、実を言えば、どうも結果に納得感がない。複数の団員が、「なんで入賞できたんだろう?」と首を傾げている。

合唱コンクール東京都大会というのは、全国屈指の高レベルな大会で、全国大会で毎年上位入賞している団体がたくさん出場します。今回、自分たちの出番が終わった後、いくつかの団体の演奏を客席で聞いたのですが、どの団体の演奏も、合唱に対する基本的な姿勢が違うなぁ、と思わせる、高い次元の表現をされていて圧倒されました。そんな中で、麗鳴がなんで入賞できたんだろう。さほど声があるわけでもなく、アンサンブルの完成度が高いわけでもない。難易度の高い曲に挑戦しているわけでもなく、個々の技術で圧倒する、なんてこともない。客席にいた人の感想をいくつか伺うと、どうも、「上手とは思わないけど、気持ちのこもったいい演奏でした」みたいな感想が多くて、言い換えると、「なんとなく嫌いになれない合唱団」みたいな感想を持ってくれたお客様が多かったんじゃないかな、という気がします。

特に、自由曲として演奏した、千原英喜先生の「心が愛にふるえるとき」の終曲、「追憶」が好印象だった、との感想を随分いただきました。そういう意味では、選曲もよかったのかも、という気がしています。千原先生の「心が愛にふるえるとき」は、非常にオーソドックスな手法で書かれた合唱曲で、特殊な歌唱技術や複雑な和声はあまり出てきません。ある程度の技術があれば歌える曲。そういう曲を自由曲に選んでいる時点で、志が低い、と言われればそれまでで、実際、指揮者の中館先生も、「正直、この曲はコンクール向きの曲とは思いません」と言い切っていました。じゃあなんで選んだの、といえば、団員みんなが大好きな歌だった、というのもあるけど、ぶっちゃけな話、そんなに難しい合唱曲が歌える団体じゃない、というのが本音(身もふたもないな)。

都大会に出場されている上位入賞の団体は、合唱に対する基本姿勢が違う、と思ったのはそういう点で、合唱という表現技術によって、どんなことが表現できるだろうか、その限界に挑戦してみよう、というような、開拓者の覚悟、みたいなものが時々垣間見える。合唱表現の地平を見極めていく、そのために技術を磨く。そこで示された新しい表現が与える感動。合唱でここまでできるのか、という驚き。委嘱新作への挑戦、課題曲への斬新な解釈、古典的合唱曲への再挑戦。そういう挑戦の最前線に立ち続けるために、日々重ねている鍛錬の厚みと、それが支える表現の凄味。

合唱表現に順位を付けるなんてナンセンスなんじゃないのかな〜、なんて、昔、まだよく知らない頃に思ってたんですが、その頃、大久保混声で歌っていた女房に、「金賞を受賞する演奏っていうのはね、客席含めた会場全体で、『間違いない、これは金賞だ』って納得する瞬間があるの。そういう空気になるんだよ」と言われたことがあった。今回金賞を取られた3団体の演奏は、幸い客席で聞くことができたのですが、なるほど、この納得感なのか、と腑に落ちた気がしています。CANTUS ANIMAEの圧倒的な声圧、Combinir di Coristaのこれでもかと言わんばかりの多彩な歌唱技術、大久保混声の人間味あふれる豊かな声の色。

じゃウチは?と、また冒頭の疑問に戻ってくるのだけど、間違いなく、金賞団体の持つような圧倒感はない。合唱の表現の地平に挑戦する、みたいな志もない。コンクールに参加する段階から、ずっと言っていたのは、「上位入賞、というより、『この合唱団悪くないね』と思ってもらえるような演奏をしよう」ということでした。もっと露骨に言えば、「いいなぁ、この合唱団で歌ってみたいなぁ」と思ってくれる人が一人でも出てきてくれないかな〜、と。「そんなに難しい曲を歌ってるわけじゃないし、なんとなく歌っている団員さんの雰囲気もいいし、この団体だったら楽しく歌えるかな〜」という人が出てきてくれないかな〜。要するに、宣伝活動ですね。

それってコンクールに参加する姿勢として如何なものなの、と言われるかもしれないですけど、「この合唱団悪くないね」と思ってもらえるような演奏をする、というのも、それなりに演奏の質を上げようというモチベーションにつながりました。何より、千原先生の「追憶」という曲が、とてもいい曲で、団員みんなが、この曲のことが大好きだった、というのも大きい気がします。日本海を隔てて、大陸と日本列島に引き裂かれた思いが、風に乗って幻聴のように聞こえてくる後半部分では、いつ歌っても胸に迫るものがあって、この曲を上手に歌いたい、込められた思いを客席に伝えたい、という気持ちを、団員全員で共有することができた。客席で聞いてくれていた休団中の団員が、「男声と女声が、長年連れ添った夫婦みたいだった」という感想を言っていたそうで、それだけ、一つの歌を全員が共有できた、というのも好印象だったのかもしれません。

正直言うと、麗鳴レベルの合唱団にとって、合唱コンクールに出場し続けることの意味ってなんだろう、と団内で議論した時期もあって、地元での定期演奏会を活動の中心にしっかり据えて、その邪魔になるようなコンクール参加は控えるべきなのでは、という話をしたことがあります。それでも、コンクールという他流試合の場所で、「お、なんだかいい雰囲気の合唱団だね」と思ってもらえるような演奏をすることで、合唱団としてのモチベーションを維持しながら、外へのアピールの場にもできるよね、という話をして、ここ数年挑戦を続けてきました。それが結果として銅賞入賞につながった、というのが、なんだか、「そういう参加の仕方もアリですよ。間違ってるわけじゃないよ」と言ってもらえたような気がしていて、そういう意味でも、今回の入賞はすごく嬉しかった。

てなわけで、なんだか取り留めなくだらだら書きましたが、結論は一つ。多摩エリアで、混声合唱やってみたいな〜と思っている方、麗鳴で歌ってみませんか?どなたでもいつでも大歓迎でございます〜。ちなみに23区内で歌いたいということだったら、大久保混声が私のイチ推し〜。