第41回府中市民合唱祭〜継続あるのみ〜

4日の日曜日、府中の森芸術劇場どりーむホールで開催された、第41回府中市民合唱祭に麗鳴で参加してきました。


トップを飾った府中少年少女合唱団。制服がとてもかっこいい。
 
この手の地域の合唱祭、というのは、新宿文化センターの「初夏に歌おう」その他、いくつかの合唱祭を聞いたり、参加したりしたことがあります。でも、地元だというのに府中の合唱祭に参加したのは初めて。合唱祭の冒頭で、府中合唱連盟から、「素晴らしいニュースです」ということで、府中第四中学校が全国合唱コンクールの全国大会で金賞を受賞した、というニュースのご紹介と、四中の合唱団の団員さん、指導者の横田純子先生のご挨拶があり、四中のみなさんへのカンパへの呼びかけがある。若い人たちの活動を、大人たちが支える、という、一種あるべき芸術振興の形が、しっかり成り立っていることに感動。世の中の至るところで、若い人たちが納める税金が年寄の道楽に使われているような構造が生まれている一方で、非常に健全なお金の流れが見えた気がして、スタートから好印象。

全体講評をしてくださった作曲家の鈴木憲夫先生が、冒頭のご挨拶から、綾小路きみまろを思わせる中高年受けのする一発ギャグで笑わせてくれて、なんとも和やかな雰囲気で始まったのですが、想像していたよりもずっと各団体のレベルが高くて驚く。別の地域合唱祭で、本当に老人向けのカルチャースクール講座の発表会のような(失礼な言い方ですが・・・でも言いたいことは分かってもらえるかしら)ステージが延々と続いて辟易したことがあるんですが、そういう団体が非常に少ない。どの団体にも、1人か2人必ず非常に歌える方々がいらっしゃって、声の核がしっかりできている。その核と団員さんが生み出す各団体の個性が明確で、バラエティがあってとても面白い。混声合唱団螺旋のように、ユーモアあふれた現代曲を見事なパフォーマンスで聞かせてくれる団体がいたりして、飽きずに楽しめました。

個人的には、お知り合い、ということもあるんですが、中瀬日佐男先生の指導されている合唱団(コール・フロイデ/コール・ノイエ)のサウンドが好みでした。表現の軸がすごくカンタービレでしっかりしていて、フレーズが長く長く続く感覚があって、さらに声のまろやかさが、中瀬先生のお人柄のように柔らかく響く感じがよかった。

お知り合い、といえば、りらの会で参加されていた指揮者の栗原寛先生は、大久保混声合唱団でお世話になった方だったのですが、星の王子様のようなラメとフリルひらひらのギンギン衣装で登場されて、会場が大いにどよめいておりました。栗原先生は、登場で会場の度肝を抜くのを「出落ち」と呼んでらっしゃるらしいですけど、間違いなく「出落ち」成功でしたね。りらの会の演奏も端正なもので、栗原先生作詞の「空のワルツ」も美しい曲。何より、伴奏の村田智佳子さんのピアノの音色が抜群で、間奏部分のソロはリサイタルの気分で楽しんでしまいました。

肝心の麗鳴の演奏は、自分としては今一つの出来で、ほかの団員さんの足を引っ張ってしまった感じで申し訳ない限りでした。どりーむホールの広い空間に呑まれてしまったのと、感情のコントロールができなくなってしまってラストの低音のポジションが上ずってしまって修正がきかなくなってしまった。

歌ったのは、萩原英彦の「深き淵より」の終曲、「うたをうたってあげたい」。勝手な解釈ですが、終曲の前の「いえすへの抗議」で歌われた愛への渇望を受けて、この終曲は「プロポーズの歌」だ、と思っています。第一連で、目の見えない主人公の女性に対して、「歌を歌ってあげたい」、と男性が歌いかけ、それを受けた女性が、「歌を歌ってください」と受ける。そして二人で、人の目には見えない「喜びや悲しみ」をともに歌っていこうという愛の誓いの歌になる。そういう解釈はいいんだけど、その自分で作ったストーリに自分で振り回されてしまって、冒頭からのめりこみすぎ、声が上ずってしまいました。すみません。もうちょっと修行します。

演奏会の後、参加団体が集っての打ち上げがある。府中西高校合唱団の団員さんたちも参加していて、この手の会だとどうしても全体が高齢化するんだけど、若い人たちがいるだけで会場がなんだか明るい雰囲気になる。府中西高校合唱団の方々は、こういうおじさんおばさんたちの会向けの営業用レパートリーもしっかり持っていて、「ウルトラマンウルトラセブンメドレー」と「雪の降る町を」を披露してくれました。おじさんたちに合わせてくれてありがとう。

最後に登壇された実行委員の方のあいさつを聞きながら、中舘先生が、「あの方は僕が西高の制服着て参加してた合唱祭から、事務局として働いてらっしゃったんですよ」とおっしゃる。「ずっとこの合唱祭を支えてくれている。中瀬先生も、僕が高校生の頃から、府中の第九演奏会を指導されてきた先生です。そういう先生方やスタッフの方々が、府中の合唱団の活動を支えているんです」と。

老若男女が、同じ歌を歌って盛り上がる会場を見ながら、継続、ということについて考えました。学生さんの団体、中高年の団体が頑張っているところで、麗鳴のような20代・30代の人たちの団体の数が少ないのが気になるし、それはきっと全国の合唱団が共通して持っている悩みなんだろうけど、でもそれでも、府中という地域の中の合唱活動を、指導者の先生方、スタッフの方々が支え、それに若い人たちが答えてくれている、府中という地域の幸福について考えさせられるイベントでした。