先週末、静岡市清水文化会館マリナートで開催された、高田三郎生誕１００年記念コンサート、舞台裏のスタッフとして家族３人でお手伝いしてきました。高田三郎ファミリー、とも言える親密感と、バラエティに富んだ魅力あふれる作品群をたっぷり楽しめた、密度の濃い舞台でした。
プログラム。シンムジカさんからいただいたお茶。静岡だけに。
米国から帰国して初めての舞台裏お手伝い、ということもあり、複数団体や２管編成のオーケストラも参加する大きなイベントということもあり、不安はいっぱいあったのですが、女房が見事に各団体の誘導をこなし、お手伝いの学生さんたちとの連携や進行上の各種トラブルもうまくさばいてくれたおかげで、ほぼタイムスケジュール通りに何とか終えることができました。
身びいきかもしれないけど、一番ありがたかったのは娘の活躍でした。リハーサル会場と本番会場との間の連絡係を頼んだのだけど、情報の伝達だけじゃなく、こっちが気にしている状況を先回りして伝えてくれたり、次に何が起こるかを予測して手の足りない所にタイミングよく現れたり。赤ん坊の頃から舞台裏に慣れ親しんでいることもあるのだろうけど、気がつかないうちに大人の気遣いができるようになったんだなぁ、と、女房共々感動。スタッフ姿が板についていたこともあり、ご高齢の合唱団員さんから謎の依頼も沢山飛んできたらしいのだけど、終始ニコニコ笑顔を絶やさず対応していたのだそうな。本当にお疲れ様でした。３００人近い合唱団をテキパキ誘導している女房を見て、「自分の指示で３００人が動くの見るのって気持ちいいね」とのたまわっていたそうな。血だろうか。
大活躍の中学生。
もう一つありがたかったのは、会場の清水文化会館マリナートのスタッフさんたちの対応の見事さ。東京の舞台スタッフの中には、妙に業界人風を吹かす人とか、こちらの指示通りにしか動いてくれなくて困っていても知らん顔、だから素人は、みたいな対応をする人とか、スタッフ部屋にこもってずっとダベってる、なんて舞台屋さんも結構います。そういうスタッフさんに当たってしまったらもう不幸だったと諦めて、淡々と自分の出来ることをやるしかない。でもマリナートのスタッフさんたちはまるで逆。こちらが気づかない部分はきっちり嫌味なくフォローしてくれるし、それも恩着せがましくない。どんどん先回りして動いてくれるし、それをとても楽しそうに、和気あいあいとやっている。一緒にやっていて、本当に気持ちが良かったです。
ヤマハの地元、ということもあり、音響も素晴らしい、綺麗なホールです。
大船渡のリアスホールでも思いましたけど、地方のホールには、自分のホールへの愛情と、そこを使ってくれる団体への感謝が自然に身についているのかもしれません。東京だとどうしても、使わせてやる、という感覚になっちゃうのかもね。おらがホールにようこそ、みたいな、温かい雰囲気で舞台を進めることができました。同じような家族感覚は地元の清水フィルハーモニー管弦楽団の方たちからも感じられて、ご一緒していてとても清々しい気持ちになりました。
演奏会全体の感想にも、Familyというのが一つのキーワードになっている感覚がありました。舞台裏スタッフの皆さんがシンムジカさんを中心にまとまっている感覚も家族的で心地よかったんだけど、なにより、高田三郎先生の奥様の留奈子先生を中心とした人の輪が、それぞれに家族的な雰囲気を醸し出す、アマチュア団体ならではの感覚。繰り出されるアウトプットも、それぞれの団体の高田作品へのリスペクトに満ちているし、初めて聞いたオーケストラ作品などは今聞いても決して古くない疾走感と高揚感。高田三郎という作曲家の懐の深さを実感させる演奏会でした。それにしても留奈子先生は背筋がピンと伸びた凛々しいおばあさまだったなあ。大正生まれの日本人って、美しい民族だったんだねえ。
Family Affairという英語には、家族の仕事、という意味と共に、内輪のこと、あまり公にするべきではない内々のこと、といった意味の方が強い感覚があります。でも今回の演奏会は、家族的な雰囲気の持つ濃密さと、Public Affairとしてのパフォーマンスのクオリティがバランスした、とても心地良い舞台だったと思います。出演者の皆様、シンムジカを初めとする裏方スタッフの皆様、お疲れ様でした。ステマネとしては色々と粗相もあったかと思いますが、皆様のご協力のおかげで無事に終了することができました。ありがとうございました。またどこかでご一緒できる機会がありましたら、精一杯サポートさせていただければ、と思います。
清水駅前のマリナートから見えた富士山は、何だか夢のようでした。清水の皆さん、素敵な時間をありがとうございました！
