コンブチャ

こちらに来て女房がいつも驚嘆しているのが、こちらのスーパーの食材の豊富さ。私も来たばかりの頃、イモ、というだけでものすごくたくさんのイモが並んでいる野菜売り場に茫然としたものでしたけど、料理道楽の女房からすると、あれもある、これもある、と日々楽しんでいる様子。先日も、ホワイトアスパラが15本くらい束になっていて、これが99¢で売っていた、と感激して帰ってきました。ジューシーでとても美味しい。

色んな果物ジュースなんかを見ても、自分の国の中で全てまかなえてしまう豊かさを、色んなところで感じることがあります。肉の種類の豊富さもそうですが、食材の種類の多さとその量の多さにはいつも圧倒されます。多様さの背景には、多民族国家ゆえのニーズの多様さ、というのもあるか、と思いますが、日本のスーパーの野菜売り場とはまるで様相が違います。

日本のスーパーの食材は、サイズにせよ種類にせよ非常に統一されているし、量にしても、極めて計算された需要予測に基づいて、必要最小限の量しか店頭に並ばない。だから閉店間近になるとかなりの食材が陳列棚から姿を消してしまうし、震災のようにサプライチェーンが破壊されると、あっという間に店頭から食材が消えてしまう。

そう考えると、日本にいた頃にあまり自覚したことがなかった、「食料自給率」という単語をなんとなく意識してしまいます。震災前の日本しかしらない私にとっても、あのスーパーの陳列棚に、日本国内だけで生産されているものしか並ばなくなってしまったらどうなるのか、と、思わず考えてしまう。こちらのローカルスーパーに並んでいる食材から、輸入食材を除いたとしても、ほとんど影響はないだろうな、と考えると余計に、そんな感想を持ってしまいます。

そういう豊富かつ多様な食材の中には、日系食材も結構あって、現地のスーパーでも普通にお醤油とかポン酢とかお豆腐が買えます。女房お気に入りの現地スーパーのトレーダージョーズ(日本人風にトレジョー、と言ってます)では、冷凍の餃子とかシューマイも売ってるし、ホールフーズマーケットではあられの詰め合わせなんかを売っている。でも、日系食材と思って買うと時々だまされるので注意が必要。

先日、ホールフーズマーケットのデリで食事をしようとして、飲料コーナーに行くと、爽健美茶のペットボトルが置いてある。デザインもラベルの漢字もあのまんまで、娘が喜んで購入。私は私で、入り口近くにずらっと並んでいた、KOMBUCHA、という飲料に手が伸びる。昆布茶、というくらいだから、なにかしらそういう味を期待。

爽健美茶のボトルを開けて、一口飲んだ娘が、妙な顔になる。「なんか、すごく酸っぱい」と言う。柑橘系、というか、シソみたいなハーブの香りがすごくきつくて、日本の爽健美茶とはまるで違う味。こっちの人の健康志向に合わせて、ずいぶん味を変えてるんだね、という話をしながら、パパのKOMBUCHAを開けたとたん、pushuuuu!とすごい音がして、泡が噴き出す。KOMBUCHAがまさか炭酸飲料だ、なんて思わなくて、かるく振ってしまったのが間違い。そこらじゅうに飛び散った液体をあわてて拭いて、さて、と一口飲んでみると、これがまたキテレツな味がする。どう味わっても、シャンプーか、塩素系洗剤みたいな香りと味の炭酸飲料。って、塩素系洗剤飲んだことないけどさ。

どうも、こちらのKOMBUCHAというのは、紅茶キノコみたいな健康飲料らしいんだけど、こんなもの飲んでまで健康になりたくないし、そもそもなんでKOMBUCHAなんて名前をつけたんだ?韓国系日本料理店の、「シシャモのヤキトリ」とかはまだ美味しかったからいいけど、時々非常に不可思議な味覚に出会うことがあるので、こっちの食材には常に要注意でございます。