呑まれる

週末、ガレリア座の「ファウスト」の合宿。オーケストラと合わせて、初めての全幕通し稽古。正直、無茶苦茶悔しい通しになってしまった。これをあと1ヶ月でなんとか人前に出せるものにしていかないと。

悔しい通しになってしまった理由を一言で言えば、結局、通し稽古の会場の空間や、独特の空気に「呑まれた」ということに尽きる気がしているのだけど、自分なりに分析をすれば、要因はいくつかある。

1つめは、今回の合宿の会場になった、「藤野芸術の家」の通し稽古会場が、とてもいい場所だったこと。何よりも広い。これだけ広い空間で通しをするのは初めて。その空間を前にして、ひたすら力んでしまった、というのが第一の要因。オケと合わせたことは何度かあるので、多分それが理由ではなくて、目の前の空間をきっちり自分のものとして掌握できなかったことが最大の要因だと思う。登場のアリアは最後の方で自分でも何をやっているのか全然分からなくなってしまうほど制御不能に陥り、ヴァランタンの死の場面も、後半は完全にノドが上がってしまって岩のような声になってしまった。

2つめは、全幕通し、という初めての経験がもたらす緊張感。特に、私のやるヴァランタンという役は、出番が結構限られているので、全幕をしっかり見たのが初めてだったんですね。衣装を着けての演技も初めてだったので、どうしても演技に力が入ってしまう。無駄な演技が沢山あるし、立ち居振る舞いもひょこひょこしていて無茶苦茶醜い。

というわけで、いつものことではあるのだけど、ビデオに録画した自分の姿を見て激しく落ち込む。合宿でやりたかったことや、新しく身に着けたはずのことが全然出来ていない。もちろん、悪いところばかりじゃなくて、自分でも、「今のは結構よかったかも」という響きもあるんだけど、それが長続きしない。女房にも、「ピンポイントでいいところはあるんだけど、それが中々線にならないんだよね」とダメを出される。我慢が足りないんだよなぁ・・・

ちなみに、私のやったヴァランタンはボロボロでしたけど、全幕を通してみれば非常に感動的な舞台に仕上がっています。各ソリストも力いっぱい頑張っているし、考え抜かれたバレエシーンは美しくかっこよく、合唱陣もすごく頑張っている。ラストシーンも美しく決まっていて、ご来場いただけたお客様は決して後悔しないと思います。

・・・という感じで、舞台全体のクオリティがどんどん上がっていく中で、自分だけが中々壁を突破できずにいます。あと1ヶ月、落ち込んでばかりいるわけにはいかないので、何とかします。何とかしなければ。うおおおお。