音楽工房ミッレ・メルチェ公演「こうもり」〜なんだか懐かしかった〜

日曜日、ガレリア座の仲間がダンサーとして助演する、ということで、王子駅前の「北とぴあ」まで、娘と一緒に見に行きました、音楽工房ミッレ・メルチェ公演の「こうもり」。

台本・演出:林 祐秀
ピアノ:服部 尚子  
ヴァイオリン:岸 倫子

アイゼンシュタイン:池本 和憲
ロザリンデ:加藤 千恵子
アルフレード:沢井 栄次
アデーレ:久保 由美子
ファルケ:細岡 雅哉
オルロフスキー:山口 克枝
フランク:笹倉 直也
イーダ:粕谷 ひろみ
ブリント:伊東 大智
フロッシュ:草野 智博

・・・という布陣でした。
 
ものすごく失礼かつ高飛車な言い方をしてしまうと、ある意味とても懐かしい感じがした、というのが正直なところです。ピアノ1台とヴァイオリン1本だけの伴奏、キャパ420人くらいの小さなホールでの公演。色んな意味で、昔のガレリア座公演を彷彿とさせる手作り感覚。

さらに、「懐かしいなぁ」と思ったのは、客層。420人のホールはほぼ完全に満席だったんですが、かなりの人たちが、普段オペラを見に来る感じじゃない人たち。どう見分けるんだ、と言われると困るんだけど、なんとなく分かる、としか言えない。開演前、私の後ろのおじい様が、「こういうのはさ、最初に司会が出てきて、さあ始まりますよ、なんて言ってくれなくて、すうっと始まっちゃうんだろ?お、始まるぞって感じがしなくってよくないよなぁ」なんて言っていて、ある意味感動してしまう。オペラやオペレッタを見慣れた人たちじゃない、普通の人たちって、そういうところが気になっちゃったりするんだねぇ。

そういう普通の人たちを楽しませる、というのは本当に難しいことなんだなぁ、というのも実感。初期のガレリア座の公演でもそうだったんだけど、1幕あたりは、舞台と客席の間で探りあいの感覚があるんだね。結局、1幕は全く拍手が出なくて、2幕のアデーレのクプレで初めて拍手が出る。そういう聴衆の反応とかも、いちいち昔のガレリア座公演を思い出させて、懐かしいなぁ、と思いながら見ていました。

舞台そのものは、限られた予算と小さな舞台の制約を、センスのよい演出がうまく逆手にとっている、という感じ。時事ネタ連発がちょっと鼻についたのと、1幕は若干テンポ感が悪くて、見ていて辛い部分もあったんだけど、2幕途中あたりからかなりいい感じになってきた。2幕からそのまま3幕になだれ込んでいく思い切ったカットと整理の仕方もすっきりとしていてテンポよく、各幕の冒頭でフロッシュとファルケのかけあいを入れることで、自然に舞台へとお客様を引き込んでいく工夫も素敵。お客様も大喜びでした。2幕途中のカンカンでは、ガレリア座の助っ人のOてぃが力づくでお客様の拍手をもぎ取った感覚があったなぁ。Oてぃ、よく頑張ったぞ。

若干手前味噌になるかもしれないけど、限られた予算とアマチュア歌手の歌唱力不足を、演出のセンスのよさと手作り舞台の温かさで乗り切ってきたのが、初期のガレリア座公演だったと思います。ミッレ・メルチェ公演に出演されているのはプロの歌い手さんたちなんで、歌唱は全く問題ないんだけど、どことなく同じような手作り感が伝わってきて好印象。何より、420人のホールを満席にできる、というのは素晴らしいことだと思います。

ガレリア仲間からは、OてぃとYちゃんが出ていて、埼玉オペラでご一緒した橋本亜紀さんが合唱とダンスのアンサンブルを束ねていらっしゃったんですが、以前教会コンサートを聴きに行った岡本正子さんも参加されていてびっくり。照明はガレリア座公演でもおなじみのマーキュリーさんが担当されていて、世間は狭いことよと思う。マーキュリーさんの照明は、シンプルな舞台装置をすっきりと美しく見せ、かつ華やかな場面はきっちり華やかに見せ、ここでもセンスの良さを感じました。ヴァイオリンの岸倫子さんが1幕でメイド服に着替えていたのはサービスか?おじさんは嬉しかったけど。

また偉そうな言い方になってしまいますけど、お客様全員を根こそぎ持っていくような図抜けた求心力を持ったソリストさんたちが集まっている・・・という感想は持ちませんでした。それでも、全体のバランスがよく、お客様をきちんと喜ばせようというサービス精神溢れた、とても良心的な舞台だなぁ、という感想。舞台側だけで自己充足している演奏会とかオペレッタ舞台とか、世の中には多いですからねぇ。こういう地に足着いた活動やってる団体はいいなぁ、と思います。これからも是非、お客様が喜ぶ舞台を作り続けてくださいね。