てー字路ですか、ティー字路ですか?

昨夜、家族で、「言葉おじさんのナットク日本語塾」を見ていました。YシャツのYというのは、Tシャツのようにシャツの形状を意味するものじゃなくって、外国人の言う「White」という単語を、「ワイ」と聞き間違えた結果なんですってね。へぇ、と思いながら聞いていて、女房が、「私は知ってたぞ!」と自慢する。女房が言っても「また『スピコラ』の類か?」と思うけど、言葉おじさんが言うことだから信用できるわな。

そしたら、「丁字路」というのはよく、「T字路」と間違われます、という話をしていてこれまたびっくり。もともとは、「丁」(てい)字路だったんですね。「T」(ティー)じゃなくて。でも、「丁」という字の音(てい)と形が、「T」というアルファベットの音(ティー)と形に極めて近似しているので、すっかり混同されて使われているんだって。私もすっかり「T(ティー)字路」だと思い込んでいましたよ。

という話を聞いて、以前からすごく気になっていることに思い至る。私はこれでもIT企業に勤めているので、通信系の話がよく出てくるのですが、「NTT」という会社の名前を、皆さんどう発音されますか?

私は以前から、「エヌ・ティーティー」と発音してきましたし、周囲でもそう発音する人が多いです。でも、少し前から、同じ職場のある声の大きい同僚が、「エヌ・テー・テー」と発音する。テーテー。これがすごく違和感があるんだな。「T」は「ティー」だろうが。「テー」ってのはないだろう。

TやDを「テー」「デー」と読む人には少し年配の方が多い気がするんですが、どうでしょうかね?年齢ということを考えると、声楽をやっていて、割と年配の方や、特に女性の方が苦労するのが、「Si」というイタリア語(Yes、という意味ですね)の発音。かなりの人が、これを、「shi」と発音してしまいます。「シ、じゃない!あえて言うなら、スィ!」という先生の注意を何度聞いたことか。ようするに、日本語の「シ」というカタカナを当てはめてしまうんだよね。「シ」というのは、「shi」と「si」の中間くらいの音がするから、イタリア語の「Si」に聞こえない。

そう考えると、人間が自分のものとして操ることができる母音と子音の組み合わせ、というのは、割と年齢の低い時代に定まってきてしまうのかも、という気がします。子供の頃から、「あいうえお」の母音と、50音表上の子音に慣れてしまうと、外国語を学習するときに、「あ」の母音に3種類ある、なんていわれても、体が反応できない。口と舌と耳が対応できる母音と子音の組み合わせのレパートリーは、結構早期に固まってしまう。

そのあたりを克服する方法が、「英語早期教育」の意義かな、と思ったりする。確かに、子供の頃からネイティブスピーカーの英語に親しんでいると、日本語と異なる母音・子音の組み合わせに、口と舌と耳がきちんと対応できるようになる、という効果はあるでしょうね。私は英語の早期教育にはあまり積極的に賛成していないのだけど、そういう効果は確かにあると思う。(逆に言えば、それ以上の意味はあまりないと思うんだけど)

標準語にだって厳密に発音記号に書くと、5つの母音だけではない母音や、50音表にない子音が含まれていたりする(日本語には、有声音の「h」ってのもあったりするし)。ただ、それが頭の中では、50音表に整理されてしまっている。そうすると、言葉自体が、50音表に沿って次第にヴァリエーションを減らしていく・・・なんてことにもならないかしらん。女房の出身地である東北地方では、母音は5つだけじゃないそうです。ウムラウトの母音とかが存在している。だから、東北の合唱団は東欧合唱曲がすごく上手なんだって。そういう地方の言葉ってのも、奥が深いし、大事にしたい気がするよね。関西弁は捨てへんぞ。