思わぬところが

新潟でまた地震があって、被災者の皆さんにはもう、お気の毒、としか言いようがない。中越地震からまだ3年くらいしか経ってないんだもんねぇ。普通に暮らしていて、震度6地震に2度会う、なんてこと、想像できないよなぁ。被災者の皆さんには、本当に、お体に気をつけて、無理せず過ごしてくださいね。

今回の地震で、リケンという会社の操業停止のために、主要自動車メーカーの生産ラインがほとんど停止してしまった、というニュースが流れていますよね。色んなところが思わぬところでつながっている。新潟の地震なんて他人事、と思っていたら、自分の身近なところに思わぬ影響が出てくる。これだけ世界中が、網の目のような情報ネットワークと物流ネットワークでつながっていると、その結節点の1つが機能不全に陥っただけで、ネットワークの全体が影響を受けてしまう。

私の仕事にも関係するのだけど、通信ネットワークを作るときには、「Single Point of Failure」と言う言葉がよく使われます。ネットワークの中で、ここが故障すると、全部が止まってしまう、という場所のこと。そういう場所を極力つくらず、二重化・冗長化を図ることが、信頼性の高いネットワークを作る上での基本。通信設備を極力分散し、同じ建物の中に収容しないで、少し離れたオフィスにバックアップ設備を置く、とか。そうなると、「信頼性」を確保することは、「コスト高」という結果を生みます。このコスト高を最小限に抑え、与えられた予算の範囲内で、どれだけ信頼性の高いネットワークを作るか、というのが、ネットワーク作りの永遠の課題。

でも、今回のリケンさんのケースを見ていると、「コスト」以外の要因、「Single Point of Failure」を生み出していることに気がつく。それは、全ての企業が目標としている、「one and only」企業という存在自体が、「Single Point of Failure」になってしまう、という問題。つまりは、「この企業でないと作れない部品がある」という状況が、「その企業が機能不全を起こすと、全体が止まる」という状況を生んでしまう、ということ。

でも実際には、現在の自由競争社会の帰結として、多くの産業が、巨大企業による寡占状態を生んでいる。また一方で、巨大企業に対する中小企業の生き残り策として、小さくても「One and Only」と言われる企業になれ、なんてことも言われる。市場支配力の大きな企業においても、末端の中小企業においても、指向されていることは、一つの市場におけるシェアの拡大であり、独占力の強化。結果として、現代の自由競争社会は、至るところに、「One and Only」企業を散りばめた、恐ろしくFail Safeの効かない脆弱な構造を内包することになってしまった。「この企業にしか作れないモノ」に頼っていたら、そういう中小企業が後継者不足と中国からのコスト削減圧力でボコボコつぶれていく。でも、品質向上とコスト削減の圧力は絶え間なく続き、ひたすら「One and Only」企業の作り出す高品質かつ低コストのモノに頼る構造は変わらない。

あんまり「終末観」的な議論をしたくはないけれど、「できないものはできない」とあきらめながら、目の前にあるもので満足して生きていく社会にうまく切り替えていかないと、どこかでハードランディングしないといけなくなるかもしれないよね。先送り先送りにしてきたことが、一気に噴出する瞬間。ニューヨークの道路から突然蒸気が吹き上げて、調べてみたら1924年に敷設された蒸気管だったんだって。80年以上経ったら、さすがに破裂しても不思議じゃないよねぇ。