好きな役者さんがビッグになっていく

小劇団とかの舞台を見ていて、この役者さんいいなぁ、と思っていたら、その人が急にビッグになってびっくりした、という経験。この年齢になると結構そういう機会が出てきます。特に最近、小劇場出身の役者さんたちがメジャーなところで活躍しているから、余計にそういう感慨にふけったりする。

大学時代、同級生が所属していた劇団が、駒場小劇場で頑張ってた、ネヴァーランド・ミュージカル・コミュニティー。笑いも涙も激しいアクションも詰まった盛りだくさんの舞台が好きだった。ここを主宰していた堤泰之さんが、「煙が目にしみる」ですっかりメジャーな劇作家の仲間入り。「煙が目にしみる」の舞台を見に行って、脚本家に堤さんの名前を拝見したときには、なんとも懐かしい気持ちですごく嬉しくなりました。

筧利夫さんを初めてみたのは、牧瀬里穂と共演された「飛龍伝'92」の舞台。舞台上では別にさほど暑苦しい感じはしないんですけど(特に、つかさんの舞台だから、というのもあるが)、この方がTVに出始めた時にはその暑苦しさに驚愕した。小劇場役者さんがTVに進出する端緒を切った方のような気がします。この方だけじゃなくって、舞台役者さんの中には、芝居が大振りでTVの画面に入るとすごく違和感のある人がいるよね。大河ドラマ市川海老蔵なんか、ものすごく暑苦しかったし。

一番びっくりしたのは佐々木蔵之介さんかもしれないなぁ。昔、関西出身の会社の後輩が、「僕が大学時代に一緒に芝居やってた仲間が、東京公演やるっていうんで、一緒に見に行きませんか」と誘ってくれて、見に行ったのが、惑星ピスタチオの「破壊ランナー」。これが無茶苦茶面白くって、シアターTVで先日放送していたときには懐かしさで涙が出てしまいました。佐々木蔵之介さんはこの舞台で、脇役のマッドサイエンティストの役で出てたんだけど、すっかりメジャーになっちゃったねぇ。惑星ピスタチオの座長の腹筋善之介さんが、NHK金曜ドラマの時代劇(確か、「御宿かわせみ」だったと思うが)にチョイ役で出ていて、一瞬の役なのにこれまた無茶苦茶暑苦しくて笑ってしまった。腹筋さんはNHKの朝ドラにも出られていたそうで、今後もご活躍をお祈りしております。

これも確か、同じ会社の後輩に、「ここの芝居も面白いですよ」と薦められて行ったのが、劇団離風霊船の「ゴジラ」。劇中、モスラ役の役者さんが、いきなり安っぽい自転車を押して客席に現れる。これが、やけにとぼけた感じのおじさんで、どの役者さんよりも自然体で存在感がある。こりゃ面白い人だなぁ、と思っていたら、今や「トリビアの泉」ですっかりメジャーになっちゃった、高橋克実さんでした。

なんでこんなことを急に書いているか、というと、最近ちょっとハマっている、NHKの「サラリーマンNeo」という番組を見ていて、生瀬勝久さんという役者さんもすっかりメジャーになったなぁ、とふと思ったから。生瀬さんは、舞台で拝見していたわけじゃないんですけど、彼がメジャーになるきっかけになった、読売テレビの深夜番組、「週刊TV広辞苑」をしょっちゅう見てました。劇団そとばこまちにいらっしゃった頃、「槍魔栗三助(やりまくりさんすけ、と読む)」という芸名で出演されていた番組。芸名のインパクトもさることながら、シュールな笑いに充ちた番組のインパクトも強烈で、この役者さんはどうなっていくのだろうと思っていたら、日本を代表する名バイプレーヤーになっちゃいましたねぇ。

売り出し中のころから応援していた役者さんがメジャーになっていくっていうのは嬉しいもの。タカラヅカも、ディープなファンは、養成段階の生徒さんが出るバウ・ホールの舞台から、「これぞ」という生徒さんに目をつけて追っかけていくそうで。ジャニーズファンが、バックダンサーの子供たちに目をつけるのと構造は一緒。音楽の世界でも同じような現象はあって、芸大時代から生徒さんたちに目をつけている人も結構いる。歌舞伎なんか、3歳の初舞台から見てる、なんてファンまでいるよねぇ。ミーハーと言われればその通りだけど、そういう人たちが、若い芸術家や表現者たちの活動を支えているのも確か。また、あんまりメジャーになっていない劇団の舞台を見に行って、これぞという役者さんを探してみたいなぁ。それにしても、「サラリーマンNeo」は面白いなぁ。NHKも最早ヤケクソなのかなぁ。