シャンソン・フランセーズ11~「田中知子劇団」100回公演目指して欲しいなぁ~

三谷幸喜さんが主宰されている東京サンシャインボーイズの舞台では、西村雅彦さんや梶原善さんのような常連役者さんがいて、三谷脚本のテレビドラマなどでも、その個性を活かした役柄を与えられて活躍されてますよね。小劇場演劇の世界では、そういう作家と役者さんの信頼関係っていうのはすごくよく見ますし、映画の世界でも、監督が信頼する常連役者さんというのは必ずいて、その作品の柱になってるのをよく見る。

急に何を言い出したの、といえば、昨日拝見した、ピアニスト田中知子さんがプロデュースするシャンソン・フランセーズ11を見ていて、このシリーズにいつも出演されている常連歌手さん達の歌や演技が、小劇場演劇劇団や映画監督さんの「常連役者」さん達に重なって見えたんだよね。もともとシャンソン・フランセーズって、単なる演奏会じゃなく、「ヤング・オー・オー」みたいな昭和歌謡バラエティ番組や宝塚のレビューを見ているような感じがあって、全体のステージの雰囲気が「劇団」っぽいんですよ。コミックソング昭和歌謡、ミュージカルや定番のシャンソンまで、「振れ幅」の大きな舞台の中で様々な人生の機微を演じている常連歌手の皆さん達を見ていると、なんか、「田中知子劇団」の舞台公演を見ているような気分になってくる。

常連役者さんが、過去の公演でも歌った「辻馬車」とか「Ale,Ale,Ale」といったコミックソングの定番曲を歌う場面とか、どこかで客席にも「待ってました!」みたいな空気が流れる瞬間もあって、なんだか吉本新喜劇の常連役者さん達が一発ギャグを決める瞬間みたいな感じもした。最後にカーテンコールで「シャンテ」が歌われると、ほぼ満席になっている客席からは、コロナ禍を経て、やっとこの曲を会場全体で楽しめる日が戻ってきた、という安堵感も漂った気がします。昔の浅草レビューに通ってたお客様とか、ひいきの劇団の公演とかをこんな感じで楽しんでたんじゃないかなって思ったり。

でも、全く同じ定番メニューを同じように並べるだけではおさまらないのが田中知子というプロデューサーの欲の深さ(失礼)で、歌い手さんにしても、今回初の参加になる加地笑子さんや中村寛子さんを加えたり、今回初披露の「ジャポン旅行」(原曲はカナダ旅行)で、ご当地の名物を織り込んだ日本旅行コミックソングを新たに作り出したり、正統派二重唱をすっかりコミックソングに変えてしまった「愛のために死す」も、以前演奏した時とはちょっとオチを変えてみたり、と細かく手を入れてくる。吉野家とかマクドナルドの定番メニューも、毎年どこかしら改善を加えているっていう話がありますけど、そういう細かい変更点も、「お、今回はこう来ましたか」みたいな新鮮さがあって、私みたいな常連客の楽しみになっていたりします。

そういう定番曲の細かい変更や新しい挑戦に対しても、しっかり応えてくる常連歌手の皆さんも、常連、といいながら以前の演奏や歌唱とは確実に進化を遂げている感じがする。中でも変化を感じたのが末吉朋子さんで、もともと持ってらっしゃる超高音のコロラトゥーラの声にパワーが増した感じがして、「ある古い歌の伝説」では軽やかな高音なのに会場全体がぐわん、と鳴るような感覚が何度もありました。

この企画の「常連歌手」の一角を担わせていただいている感じもするうちの女房は、三つ子と見まごうようなフランスの女の子達の一人、初挑戦の「辻馬車」での御者さん、「恋のロシアンカフェ」の美輪明宏節と、この企画の「振れ幅」を象徴するような変身ぶりで、どの曲もそつなく印象強く歌いきっていたと思います。「ジャポン旅行」の金髪の女の子から、「ボン・ヴォアヤージュ」のドレス姿にたった一曲で衣装替えしてきたのには感心。楽屋は戦場だっただろうねぇ。

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もう11回目となったこの企画、もっと続けて欲しいなぁ。続けているからこその安心感、続けているからこその挑戦、続けているからこその新鮮な楽しみ方があるんだもの。田中さんは以前の公演で、「そろそろネタ切れだ」とおっしゃってた記憶もあるけど、定番曲も新曲も含めてどれもこれも新鮮に聞こえたし、ネタ切れどころか、涸れない泉のようにやりたいこと湧き出してきてる感じがするけどなぁ。

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皆様、またまた女房がお世話になりました。是非またお目にかかるのを楽しみにしております。100回公演目指して欲しいっす。あと89回っすね。楽勝っすよ、田中さん。

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振れ幅写真貼っときまーす。