結婚までの道のりさまざま

大学の友人が結婚することになり、結婚披露パーティの司会を仰せつかって、昨夜、その会場で新郎新婦と打ち合わせをしてきました。私の友人、というくらいですから、新郎新婦ともに最近流行の晩婚なんですけど、新婚さんらしい華やいだ感じと、久しぶりの再会ということも手伝って、時間も忘れて様々に語らってしまいました。

以前、ソプラノ・アルト・テナー・バリトンのそれぞれに、ある程度性格の類型化ができる気がする、という話を書いたことがあったと思うんですけど、歌い手同士のカップル、というのも、ある程度類型があるんじゃないか、と、偏見に満ち満ちたことを言ってしまいます。結婚を決めるきっかけ、というのを確認していくと、大体、テナーというのは、自分に自信があるわりに小心者なものだから、相手が自分のことを好きになって女性の方から攻め込んでくるのを待っている。自分から言い出さない。そのくせ執着はあるものだから、なんのかんのとデートに誘ったり、遊びに誘ったりとアクションはする。でも、キメのセリフはのらくらと口に出さない。

従い、新郎がテナーの場合、「いつから正式な『お付き合い』になったの?」と詰めていくと、大抵は、新婦の方が新郎を追い詰めているケースが多い。「私って、あなたにとってどういう存在なんですか?」「これからどうするつもりなんですか?」「これは付き合ってるっていう状態なんですか?」なんて感じで、女性の方が男性に攻め込んでいって初めて、「まぁ、そんなに言うなら、付き合ってもいいかな」なんて言い出す。知り合いの女性で、自分のフィアンセ(テノール)との馴れ初めの話をしていて、「この人は卑怯なんですよ!!」と突然叫んだ女性がいましたが、テノールってのはそういう人種です。自分からキメを打たない。簡単に言えばずるいんですが、それだけ傷つくのが怖い、子供っぽいところがあって、そこがまた女性の母性本能をくすぐるんでしょうかね。逆にベースってのは後先考えない猪突猛進型が多くて、新郎がベースの場合、大抵男の方が先に一線を踏み越える。あるいは踏み越えようと暴れだす。怒涛の突き押しで、女性の方が根負けしてしまうか、軽くいなされて勝手に自爆するケースが多い。大カンチガイが多くて、失敗も多いのがベース。ちなみに私はベース。だはははは。

彼女とうまくいって、さて結婚、となった時に、これまで接触がなかったのに突然大きく立ち現われてくるのが、相手の親族。これがまた大問題になる。私の知り合いの男で、折角彼女の実家に招かれて、相手のご両親も、彼が、「結婚させてください」の一言を言うのをずっと待っているのに、ただひたすら汗だくになりながらしどろもどろと世間話を続けていた、という男がいます。緊張と不安で、どうしてもキメの一言が言えない。お父さんが結婚に反対している、という話もあったものだから、余計に、「ダメだ!」と言われるのが怖くて口火が切れない。冷や汗だの脂汗だの様々な液体をだらだら流している彼を見かねて、脇に座っていた新郎のお母さんが、「結婚したいそうですので、よろしく!」と言い放って終了。おいおい。

ご承諾をいただいた後の結婚式。ここでも色んなドラマがあります。いわゆる専門結婚式場みたいに形式ばったものじゃなくて、自分たちのオリジナルで、アットホームに気軽に楽しんでもらいましょう…なんて考えると、意外とこれが全然気軽じゃなくて、すごく大変だったりする。専門結婚式場ってのは全てがパッケージですから、新郎新婦が楽をしたかったらそういうパッケージが一番いいんですよね。オリジナルのレストランウェディング、なんて話になると、座席の名札から式のプログラム、親族への案内状から新婦の衣装や引き出物まで、何から何まで全部自分達でコーディネートしないといけない。その上、「なんでこんなカジュアルなんだ、もっとフォーマルな式できちんとやらなきゃだめだ」なんて親族が言い出して、こういう異論の調整だのなんだの、ああ面倒!!…と思うような人は、悪いことはいわない、専門結婚式場をお奨めします。貴様、八芳園の回し者か?いや、玉姫殿かもしれんぞ。

自分たちのオリジナルで、なんて思うカップルの前に、「世間体が悪い」という親族の声が立ちはだかった実例もいくつか。最近はかなり当たり前になってきましたけど、私より少し年上くらいのカップルは、結婚式の招待状を新郎新婦名義で出す、というのは「世間体が悪い」ものでした。披露宴というのは、新郎の父親が、「我が家にこういう嫁を迎え、息子が一家を成しました」ということを世間に披露するための場なので、披露宴の招待状は、新郎の父親の名前で送付されるのが当たり前だったんだよね。最近のカップルにこんなことを言うと、「ジジイ」の一言で片付けられそうだが。

一つ極端な例で、私の後輩(結婚については悪名高い名古屋出身者)の話。結婚式を朝にして、お昼に公式の披露宴を親族を交えてやって、夜は友人たちを集めて二次会…というスケジュール(まぁよくあるスケジュールだよね)を組んで、自分の父親に説明したら、「なんて世間体の悪いことを考えるんだ」と。

披露宴が終わったら、新郎は新婦を伴って、親族が泊まっているホテルの部屋を一つ一つ訪問しないといけない。その一部屋一部屋で、一杯ずつお酒を振舞われて、新郎はその杯を飲み干して、次の部屋に移動する。披露宴の夜はその儀式のために使われるのだから、二次会なんてのはもってのほかである。もちろん、親族の地位によって、ホテルの部屋の配置も厳格に決まっているから、これを破ることは許さん…

名古屋といえば、嫁入り道具をトラックに乗せて町を練り歩く、そのための家具一式がレンタルできる、という土地柄と聞きます。でもそんな名古屋でも、結婚式に呼ぶ人の数を減らして、その代わり一人当たりの単価を上げる、という傾向が現われてきているんだ、というニュースを、最近見ました。世の中確かに変わってきてはいるんだけど、なかなか変わらないものっていうのはある。特に結婚というのは、本人たちの親の世代が関わってくるイベントですから、親世代の常識と子供の常識が、結構真っ向からぶつかったりするんだよねぇ。

ちなみに私たち夫婦の場合、妙にイベント慣れしているものだから、自分達が出演する舞台の演出をしているような気分で、準備段階から本番まで、結婚式を目一杯楽しんじゃった。女房は未だに時々、「また結婚式がやりたいなぁ」と呟いております。いや、1回やれば充分だからね。世の中には何度もやってる人もいるみたいだけどさ。