席替え

フィンガー5の「学園天国」、という歌がありますよね。私はフィンガー5全盛期を知っているオリジナル世代ですけど、もう少し若い方でも、小泉今日子のコピーでご存知ですよね。最近ではアニメ「ふしぎの星のふたご姫」のエンディングテーマにもなっているので、うちの娘まで知っている。アメリカン・ロックンロール風の軽快なビートとノリノリの楽曲で、いい曲だけど誰の作曲なのかな、と思っていたら、故井上大輔(この曲は、井上忠夫名義)さんの作曲なんですね。ガンダムの「哀戦士」じゃん。そうじゃなくって、ブルー・コメッツだろうが。こういう、世代を超えて活躍できる天才ってのは、やっぱりいるんですねぇ。夭折が惜しまれる天才。ちなみに作詞は阿久悠さん。これもさすがって感じがする。

この「学園天国」のテーマが「席替え」でしたよね。ウチの娘も、幼稚園の時には、あまり「xxちゃんと同じ班になった」とか「隣の席になった」という話をしなかった気がします。教室できちんと椅子に座っている時間よりも、お遊戯とかをやっている時間の方が長かったせいですかね。でも小学校に上がると、やっぱり「席替え」は一つの大きなイベントになっているらしい。「席替えがあったんだよ」「またMちゃんと同じ班になったよ」「となりのK君がいじめるんだよ」などなど、「席」を巡っての色んな話題に事欠きません。

自分の小学生時代、というのを考えてみても、確かに、席替え、というのはなんとなくワクワクするイベントだった気がします。「学園天国」に歌われているように、「隣に憧れのあの子が座るかしらん?」というドキドキ感もあったけど、単純に、自分を取り巻く教室の景色ががらりと変わる、ということ自体が面白かった。黒板の見え方、窓の外の景色、視界に入る友達の後ろ頭の数。中学校に進学してしまってからは、男子校だったこともあって、席替えってのは単なる事務的なイベントになっちゃったけどね。教壇のすぐ脇ってのが意外と死角で、居眠りし放題だったりするんだよ。油断してると教科書で頭はたかれるので、緊張感は持続してないとダメだけどね。そこまでして居眠りしなくていいよね。

大人になった今になって、学校側、というか、教師の視線になって考えてみると、席替えというのはクラスの人間関係を均一にするために必須のイベントだったんじゃないかなぁ、と思います。物理的な距離というのは、心理的な距離にすごく影響を与える。隣に座っていれば、何かしらの関係がそこに生じるし、教室の端と端では、まるで口をきかない、なんてことだってあるかもしれない。ずっと隣に座っていたために険悪になった生徒が、席替え後普通の友達になった、なんてこともあるかもしれない。

会社で仕事をしていると、いくらメールが発達しても、意外とこの物理的距離というのがコミュニケーション上重要なんだな、ということを痛感することがあります。同じビルにいても、フロアが1階違うだけで、全然口をきくことがなくなっちゃったりする。同じフロアでも、隣のグループと、4つ向こうに座っているグループでは、今ひとつ意思疎通がうまくいかなかったりする。メールに頼ったコミュニケーションで仕事をしていると、逆に、電話で生の声をやりとりすることとか、実際に顔をつき合わせて喋ることの重要性に気付いたりします。

なんでこんなことを書いてるかっていうと、この10月になって、人事異動が全然なかったうちのグループでも、せめて席替えをして気分転換しよう、という話になったから。今までの席と新しい席で、座る向きが変わっただけで、みんな、「景色が全然違う」と歓声を上げたりしています。別に人事異動がなくっても、こういう「気分転換」ってのは、意外と大事だったりするのかもしれないなぁ。