ピアニズムってなんすか?

先日、何気なく見ていたNHKの芸術劇場で、クリスティアン・ツィマーマンのピアノ・リサイタルを放送していました。わたしゃ全然クラシック演奏家には疎いので、ツィマーマン、と言われても全然ピンとこないのですけど、女房は、「おお、ツィマーマンだ!」と見入っていました。モーツァルト・ベートーベン・ラヴェルガーシュインと、全然色の違う作曲家の曲を、なんでもないようにあっさりと端整に弾き分けている姿に、私が、「なんかすごくふつーに弾く人だねぇ」と呟くと、「当たり前だ、巨匠なんだぞ、巨匠!」と女房が脇で呆れている。だって知らないんだもん。モーツァルトとか、○田光○さんが弾いてるのちらっと見たことあったんだけど、完全に巫女状態のトランス状態で演奏されている姿に怯えてしまったんだよねぇ。それが先入観になっていて、ピアニストってのはみんなちょっとイッちゃった所のある方が多いのかしら、と思ってたんですけど、ツィマーマンさんはなんだか、一級の職人さんが楽しそうに仕事しているみたいな感じで、ふつーに演奏されている。出てくる音も、一つ一つの粒がきっちりと意味を持って鳴っていて、それでいて冷たい感じがしない。カンペキなのに、温かい音。

女房が感嘆しながら、「これぞ『ピアニズム』って感じがするんだよねぇ」と呟く。ピアニズムってなんすか?

ネットで調べてみると、こんな答えを見つけました。
 

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辞書で引くと、ピアニズム(pianism)は、「ピアノ演奏(法)」とあります。

  • ismには、《名詞・形容詞について抽象名詞を作る》「行動・行為」「状態・状況」「主義」「教義・学説」「慣例」「特性」「異常」という意味があります。

上記、“辞書上の意味”を考慮に入れ、さまざまな場面での「ピアニズム」という語の用法を見てみると、
1.ピアニストの、ピアノ演奏における表現方法や演奏の特徴
2.作曲家の、ピアノ作品における音楽書法の特徴
という意味で使われることが多いようです。

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…なるほどね…でも、こんな言葉が一般化している楽器って、ピアノだけだよね。なんででしょう?チェリズム、とか、フルーティズム、とか、ギターリズム、なんて言わないじゃん。ヴァイオリニズム、なんて言葉もないよね。バイオリズムと間違えそうだね。間違える人はいないよ。だよねー。

女房に言わせると、「ピアノというのは、鍵盤楽器であり、打楽器であり、伴奏楽器であり、旋律楽器なんだよ」だって。「そういうピアノの持っている全ての機能を、きちんと全部使い切って表現している演奏っていうのが、ピアニズムの一つの極致、という感じがするんだよ」だそうです。

それだけ幅広い機能を持っている楽器だからこそ、同じ楽器でも、演奏者の演奏方法=「ピアニズム」によって、全く異なる音色を出してくるし、同じ楽曲でも、全く違う面を見せてくれる…そのあたりが、他の楽器にはない「ピアニズム」という言葉が生まれてくる背景なんでしょうか。その中でも、極めて技術的に完成された端整な「ピアニズム」を感じさせるのが、ツィマーマン、ということなのかしらん。

「xxみたいに、打楽器みたいに弾くわけでもない。●●みたいに、へんにヨタる感じもない。別にびっくりするようなことをやるわけじゃなくって、ただ淡々とやるべきことをやりながら、それがきちんと音楽になっているっていうのが、ツィマーマンの素敵なところなのさ」とは、女房の言。誰もが目指すべき一つの理想だよね。ツィマーマンさんが最後に弾いたガーシュインの曲を聴きながら、楽譜を離れていくらでもヴァリエーションをつけることができるような曲だけど、これをきちんと楽譜通りに弾きながら、それでも個性ある音楽に作り上げているっていうのがすごいなぁ、と言い合っておりました。ツィマーマンさんは普通の人みたいで、いい人っぽかったよ。小学生の感想文かよ。