運動会はシンプルなのがいいやね。

この週末の土曜日、娘の小学校で運動会がありました。以前から書いている通り、うちの娘の学校は何をやるにも、よく言えばシンプルで、悪く言えばいい加減。普通の運動会らしい華やかさ、なんてのを期待すると全然肩透かしだよ…と、お兄ちゃんお姉ちゃんが上級生にいるご父兄からは聞いてはいたのですが、その言葉通りの、実にのんびりした淡々とした運動会。

大体、幼稚園の運動会の時にはつきものだった、「場所とり」のための色んな騒動が一切ない。幼稚園の時には、園庭のいい場所を確保するために、当日の朝4時から並んで整理券をもらったりしたのですが、そんなことは一切なし。それでも少し出足を早めに、開門前に門の前に並んだのですが、そんなご父兄は10人といない。校庭は普通の小学校と同じくらいの広さなんだけど、生徒数が少ないから、場所はたっぷりあるんです。幼稚園の時には、「ビデオ席」なんてのがあって、ロープで囲ってあったりしたけど、そんな「立ち入り禁止エリア」なんてのも全然なし。やたらとのんびりした出足にまず肩透かし。

校庭には、万国旗もなけりゃ飾りもほとんどない。運動会らしいものといえば、併設されている幼稚園の子ども達が書いた絵を貼り付けてある入場門と、校庭に書かれたトラックと、そのまわりに置かれた小さな椅子やら机くらい(子供用の机に大人が座るんです)。その椅子や机も、前日に子ども達がわっしゃわっしゃと運んで並べたものらしい。本部のテントも、当日の朝に、先生方がわさわさ集まって建てている。お手伝いする父兄さんも、PTAの役員さんもいない。「朝礼台を動かすから、5年生の男子ちょっと来て!」なんて先生が放送して、5年生の子ども達がわらわらと寄ってきて、台を運んだりしてる。とにかくないない尽くし。

競技の方も、見栄えのいいマスゲームだのダンスだの、一糸乱れぬ入場行進だの、華やかな応援合戦だの、工夫を凝らした競技だの、なんてのは一切なし。ひたすら、リレーやって、徒競走やって、障害物競走やって、時々、足につけた風船をパンパン踏み割る競技とか、袋に隠れた子供を親が捜す競技とか、ちょっとだけ考えた競技が加わるんだけど、見てて圧倒されるような団体競技、なんてのも一切なし。どう考えても、「運動会の事前練習」の時間はほとんどなかったんじゃないかしら、と思わせる競技ばっかり。上級生の騎馬戦に至っては、その場で手を上げさせて、その場で組を決めてました。そ、それでいいんかいな。

運動会の運営も、父兄さんやらPTAのお手伝いは全然なくって、全ての競技は、6年生のお兄さんお姉さんが色んな係を決めて運営しているんです。ある競技が終われば、前の競技の片付けから、次の競技の色んな道具やなんやらの運搬から、全部6年生のお兄さんお姉さんがテキパキ処理していく。ゴール係のお兄さんたちや、セッティング係のお姉さんたちがいて、幼稚園の子ども達(併設されている幼稚園の運動会も一緒にやる)の競技のお世話も、全部6年生のお兄さんお姉さんがやっている。親子競技の時には、親に向かって、「はい、あなた、2位ですね」と指示して、2位の旗のところに連れて行ってくれる。6年生の競技の時は5年生が係を担当。親が手を出す場面なんか、一切ない。

小学校の運動会、というと、「お祭り」としての色んな華やかさを期待されるご父兄には、「なんなのこの運動会は?」という感じのするイベントだと思います。でも、もともと我々両親としては、ないない尽くしのこの学校のシンプルさに惹かれて娘を入学させてますから、こういうシンプルな運動会が、「すごくいいなぁ」って思っちゃう。リレーなんか、学年ごとに6学年分、幼稚園生もリレーがあり、父兄・卒業生のリレーがあり、1年生の親子リレーもあり、学年の選抜選手対抗のリレーがあり、リレーだけで10回もあったんだけど、これが結構盛り上がるんだ。1年生の親子リレーなんか、転倒するご父兄が続出して(子供は不思議とほとんど転倒しない)、抜きつ抜かれつの熾烈なレースになって、大盛り上がり。あ、私はなんとか、転倒せずに50メートル完走しました。ははは。

6年生と教職員対抗の大玉ころがし、なんて競技があって、教師の方々が真剣に6年生と真っ向勝負していて、その本気モードに観客は大喜び。すごい接戦だったけど、今年は6年生が辛勝。運動会の最後を締めくくるのは、1年〜3年の赤白対抗と、4年〜6年の赤白対抗の綱引きです。これもまたやけにシンプルな競技だけど、盛り上がっちゃうんだよねぇ。女房の母校は、バンカラ気質が残っている岩手県立盛岡第一高校なんですけど、「一高の運動会みたいだぁ」と感動しておりました。バンカラ小学校。

イベントを取り仕切っている6年生のお兄さんお姉さんたちも、「この運動会を仕切っているのはオレたちだよ」というような感じで、ごくごく当然のように全員がキビキビと動いている。素敵だなぁ、と思ったのは、先生に命令されるわけでもなく、かといって、誰か優等生が率先して走り回っているわけでもない、その様子。誰かだけが張り切っているわけじゃない。誰かがずっとサボって、ダラーっとふざけている、なんていう姿もない。全員が「これは我々が支えているイベントだ」という責任感を持って、ちゃんと動いている。シンプルな運動会のようですけど、そういう筋がきちっと通っている感じが、とっても清清しい。「うちの子もあんなにちゃんと下級生のお世話をして上げられるかしらねぇ」と、女房の隣に座ったおばあさんは、ため息交じりに呟いていたそうな。

娘はずっと大興奮状態で、「パパがひっくりこけて骨を折らなくってホントによかったよぉ」と言いながら、校庭のシートの上で、女房お手製のお弁当(女房は娘のリクエストで、初めて「鮭はらこ飯」に挑戦、好評でした)をムシャムシャ食べ、最後の綱引きでは、「勝て!勝て!って言いながら引っ張ったんだよ!」と超ハイ・テンションでご報告。「生まれて初めて綱引きをしたから、今日は綱引き記念日って、カレンダーに書かなきゃ」と、帰宅後早速カレンダーにマルをつけて、ソファーにちょっとコロン、と横になったと思ったら、一瞬でバタンキュー。長い長いお昼寝をむさぼった後は、パパが撮ったビデオを見ながらまた大騒ぎ。一日中運動会で盛り上がっておりました。

土曜日は天候にも恵まれ、パパはすっかり日焼けして赤ら顔に。こういうシンプルな運動会って、いいよなぁ、と、女房と一緒に言い合いながら、学校を後にしました。父兄に見せるための運動会じゃなく、あくまで、生徒たちが自分で支え、自分たちが楽しむための運動会。確かに見栄えは地味かもしれないけどさ。父兄に、一糸乱れぬ入場行進を見せるために、通常授業を潰して延々と行進の練習をやらされた経験のあるパパとしては、こういう「生徒のための」運動会っていいと思う。運動会の練習のために通常授業の時間が取れなくて、カリキュラムが消化できない・・・なんて話をたまに聞いたりするけど、どう考えたって本末転倒だよねぇ。運動会はやっぱり、綱引きとリレーに限るだよ。うん。