新日曜美術館〜TVというヴァーチャル〜

新日曜美術館、という番組は大好きで、何もない日曜日の朝とか、大河ドラマ嫌いの娘と一緒の日曜日の夜とかに、思わず見ています。最近は、檀ふみさんが副司会を務めていて、正司会の野村正育アナウンサーを圧倒しているんだけど、N響アワーで池辺晋一郎先生をたしなめている時より、よほど楽しそうにお仕事されている。なんか、檀さんの方から、「この番組出たいんですけど、だめですか?」なんてNHKに申し出ているお姿が目に浮かんでしまうのだけど、実態はどうなのだろうか?でも、はなちゃんの緊張感あふれるコメントを山根基世アナウンサーが必死にフォローしていた以前の状況よりも、よっぽど安心感持って見られるコンビですよね。緒川たまきさんも勿論素敵だったけど。

知っている美術品をより深く知る、という意味でも面白い番組なんだけど、知らなかった芸術家の作品に触れるのもいいですよね。以前にもこの日記に書いた、フリーダ・カーロの絵を初めて知って衝撃を受けたのはこの番組だったし、今月の17日に放送していた、石田徹也さんの絵もすごかった。確か、グスタヴ・モローの名前を知ったのもこの番組だった気がする。この番組で知って、実際に展覧会を見に行ったり、関連する映画を見たり…という形で、美術経験をさらに広げていくきっかけになったことって、沢山ある気がします。

先日放送されていた、日曜美術館30周年記念展覧会の紹介では、過去の放送映像がいくつか流れていました。作品を語る作家たちの姿に、妙に納得する。その作品と作家の組み合わせが、なんとも絶妙なんですよね。鳥獣戯画を語る手塚治虫。ルオーを語る遠藤周作黒田清輝を語る白洲正子。「確かに、この人はこの作品が好きだろうなぁ」と思うじゃないですか。極めつけは、ルドンを語る武満徹。あまりにぴったりで笑ってしまった。

この夏休み、近所の府中美術館が、子供のための特別企画、ということで、閉館している時間帯に、子ども達向けの鑑賞ツアーを組んでくれていました。私の娘とお友達で行って来たらしいんだけど、ツアーに同行してくださる学芸員の方が、子ども達にも飽きないように、すごく分かりやすく美術の世界を解説してくれるんだって。「同じ緑でも、色んな緑があるよね」とか、「この絵の中に隠れている動物を探してみよう」とか、「○△□で遊んでみよう」なんていう感じのゲーム感覚で、娘もすごく楽しかったらしく、女房はいたく感激して帰ってきました。

先日の放送の中で、日曜美術館の初代副司会の太田治子さんが、「TVの画像技術がいかに進歩しても、美術館に行かなくても芸術作品を楽しめる…ということにはなりません。TVはあくまでヴァーチャルであって、リアルな美術品に触れるための入り口に過ぎないんです。TVを通して、美術館に行ってみたいなぁ、と思っていただく。そうして、リアルな美術品に触れる経験を増やす。TVは、そのリアルな経験がさらに豊かなものになるための知識を身に着けるための手段であり、入り口なんです」という趣旨のことをおっしゃっていました。その脇で、出演者の方が、「美術館で、本物の美術品に触れると、TVでは感じられない、温かみのようなものを感じますよね」とおっしゃっていて、実に納得する。

私自身は、と言えば、温かみ…という所まで感じられるほど繊細ではなく、もっと単純で、本物の美術品を目の当たりにした時に、その大きさに圧倒された経験があります。TVの小さな画面では決して味わえない、キャンバスの巨大さ。そういう単純な感覚でもいいと思うんだよね。本物=リアルに触れないと得られない感覚。最近、あんまり美術館に行ってないのだけど、GAGも終わったことだし、家族でのんびり行ってみようかなぁ。友人のS弁護士のお義父さまにあたる、故笠松宏有画伯の回顧展も来月あるし。ちなみに、この回顧展の詳細や、笠松宏有さんの画業については、http://blog.goo.ne.jp/kasamatsu-museumで紹介されてます。ほんとに素敵な絵ばっかりです。皆様も是非、本物をご覧に、10月は東京セントラル美術館に足を運ばれてはいかがでしょ?