新宿村スタジオって…

昨日、蔵しっくこんさぁとの練習。来週の公開リハーサルを控えて、最後の練習になります。一気に頭から通してみる。全員が、ギリギリのところで勝負をかけているので、かなり破綻する。でも決して、「ああ、一体どうすりゃいいんだぁ」みたいな破綻の仕方じゃなくて、きっちり勝負をかけた結果としての破綻の仕方。そういう失敗の仕方って、あると思うんだよね。今は失敗しちゃったけど、2週間後にはきっちり仕上げていくぞ、みたいに、着地点がきちんと見える失敗。そういう信頼感のある仲間と一緒にやっている安心感。もちろん、こちらも一杯破綻したから、来週の公開リハーサルまでに、課題はきちんとクリアして、しっかり2週間後の本番を迎えなければ。体調管理もね。

昨日の練習、北新宿にある新宿村スタジオ、という場所でやりました。この新宿村スタジオ、という場所、ガレリア座を始めたばっかりの頃から使わせてもらってますから、もう10年以上のお付き合い。使い始めた頃から、かなり古い施設って感じがしたけど、ほとんど基本構造に変化がないんだよね。工事現場のような構造で、ぼこぼこと練習スタジオが積み木のようにつみあがっている、すごく不思議な空間です。ここが、いつ来ても面白いんだ。

北新宿の再開発が進んで、周囲がすっかり空き地になって、半分壊されている家とか、空き地の真ん中にぽつんと残ったお社とか(多分、移動させるのにはそれなりにお祓いとか色々必要なんだろうな)、なんだかゴーストタウン風になったところに、突然、「新宿村スタジオ」という看板が出てくる。青梅街道からも大きな看板が見える。10年前は、もっと汚い看板だったんだけど、最近随分小綺麗になったよね。で、青梅街道からの細い道を入っていこうとすると、道が細すぎてどこから入ればいいのか分からない。再開発の区画整理が途中なので、金網に囲まれた空き地が変な形に切り取られていて、どの道をどう歩いたらあの「新宿村スタジオ」の看板に近づけるのか、よく分からんのです。目の前に看板があるのに、なかなか近づけないもどかしさ。

やっと見つけた管理事務所に近づいていく道は、車一台通ると一杯になるくらいの細い道。でも、演劇だの歌い手だの、舞台関係の方が多く使っている施設ですから、カウンタックがボンボン排気音鳴らしながら入ってきたり、恰幅のいいおじさんがタクシーで乗りつけたり、施設の外見の割には(失礼)華やかな方々が出入りしているんです。昨日も、すごく綺麗なダンサーさん達の集団が、いかにも一踊り終わりました、という感じで帰ってくるのにすれ違う。スタジオに上がる階段を上ろうとしたら、なんだかいい味のくたびれた感じのおじさんが、ナップザックを背負ってのそっと階段を上がっていく。隣のスタジオに入っていくその方が、「おはよお」と挨拶されている声を聞いたら、風間杜夫さんでした。なんか、すごくかっこいいオッサン、という感じ。

待合室では、演劇関係者と思われる方々が色々と打ち合わせをしていたり、オーディション受験者と思われる子ども達が順番を待っていたりしています。どの子供も業界っぽい、華やかな感じの子ども達。壁に貼られたいろんな舞台の案内ポスターや、オーディション写真専門の写真屋さんの広告など、いかにも舞台業界の人たちのたまり場、という感じ。色んな演劇人の方々が、ここで練習した経験があるみたいで、ラッキィ池田さんのブログの中でも紹介されてました。北新宿の再開発で、一体これからどうなるのかな、と思っていたら、再開発後も改築して存続するらしいですね。よかったぁ。

以前も、この日記で、都内で表現する場や、練習する場所がなかなか見つからない、という話を書いたことがあると思います。安い公共施設は、使用資格がないと使えなかったり、登録していてもなかなか、希望の時間枠が確保できない。自分を表現したい、という人たちが、数限りなくいる東京という町。そんな東京のど真ん中で、新宿村スタジオ、という場所がずっと存在していて、演劇人に練習場所を提供し続けてくれているっていうのは、なんだか素敵なことだなぁ、と思います。