挨拶って大事だよ。

金曜日は娘の用事で会社をお休み、土曜日は幼稚園で父子ふれあいの日、日曜日はガレリア座で娘と遊びながらドロドロと歌う、という感じで、週末は娘とべったり過ごしました。いつもパパは会社だからね。今週末も、女房が新潟で合唱コンクールの全国大会だから、また娘と二人の週末だなぁ。何をして遊ぼうか。

そんな風にばたばたと過ごしていましたら、日曜日の夜、ある舞台でお世話になったプロデューサの方から、直接お電話をいただきました。舞台のお礼と、今後もよろしく、というご挨拶。ご丁寧に本当にありがとうございます、と、電話に向かってお辞儀をする。どうして電話でありがとうございますと言うと、無意識に頭を下げちゃうんだろう。ううむ。

クラシック音楽や舞台に関わっていると、意外とこの世界、「礼儀」というのがすごく大事な業界なんだな、ということに気付きます。普通の人の感覚だと、音楽とか舞台といった芸能系の世界にいる人、特にクラシック音楽界にいる人というのは、ちょっと浮世離れした人が多い、と思われるかもしれません。約束の時間を守らない、とか、お高くとまっていて、全然腰が低くない、とか。「朝ちゃんと起きて通勤できないから、音楽家になろうか」なんて思っている人も結構いるんじゃないかなぁ。

でも、この業界で売れっ子になっていたり、コンスタントにきちんと仕事をこなしている方々というのは、社会人としての基本がすごくしっかりした人が多いように思います。当たり前のことが当たり前にできる人が、結局は重宝される。連絡を取ったら、必ず返事を返す。きちんとご挨拶をする。約束の時間は必ず守る。例えば舞台の裏方の方々などは、時間との競争ですから、ものすごく時間に正確な方じゃないと勤まりません。よく私の芝居ユニットの照明をセッティングしてくれるKさんという方なんか、本番会場に必ず30分前には来ていて、外でぼんやりタバコ吹かしてます。仕込み開始時間は早朝のことが多いですから、相当早起きして来てくれているんだよね。早起きできないと舞台は勤まらないよ。

昔実際に経験したことなんですけど、ある舞台を現役の某音大生の方にお手伝いしてもらおうと思い、承諾いただいて、よし、やるぞ、と準備していたら、全然練習に出てこない。しかも、連絡なしにドタキャンしてくる。これはさすがにやばいんじゃないの、ということで、再度出演可否について確認したら、「やっぱり無理です」との答え。そういうことをする人には、二度と仕事を頼む気にならないですよねぇ。

最近ですが、ある団体から、「そちらが持ってらっしゃるデータを貸してくれませんか?」という話が来たことがあります。詳細を知っている人を紹介したんですが、私にはそれっきり連絡がない。私が紹介した人に聞いてみると、「ああ、連絡ありましたよ」とのこと。普通さ、「ご紹介ありがとうございます、では、その方に連絡してみます」というお礼の一つくらい入れてくるだろうがよ。この団体からの依頼には二度と答えてやるもんか、と思っちゃうよねぇ。

新宿オペレッタ劇場などでお世話になったプロの方々や、大田区民オペラ合唱団でお世話になったプロの方々なども、実に腰が低くて、人当たりのいい方々が多いです。しかも、自分のスケジュール管理や、自分の能力の範囲などをすごくきちんと把握してらっしゃる方が多い。時間に遅れる、とか、一度引き受けておいてあとから断る、なんてことは滅多にない。だから仕事も頼みやすいんですよね。そういう人が、舞台経験をどんどん増やしていって、どんどん一線で活躍するようになっていく。一流の方って、そういう好循環を生み出すことができる、「当たり前のことができる」人なんじゃないかなぁ、という気がします。

普通の会社員のような規則的な生活やしがらみに縛られた仕事がしたくないから、芸術家になりたい、と思っている人が、もしいたとしたら、今から考え直した方がいいと思います。芸術家を職業としてやっていくためには、個人企業を経営していくのと同じくらいに、人的関係、しがらみ、とても基本的な社会ルールを守ること、が大事です。結局のところ、約束を守って、挨拶をきちんとして、与えられた仕事を一生懸命やる、という、当たり前のことができる人だけが、一線に出て行けるんだと思うなぁ。