タモリさんとサブカルチャー

タモリさんというタレントさん、面白いタレントだなぁ、と思っています。何が面白いって、軸足がサブカルチャーにあるところ。タモリさん自身が、鉄道マニアだったり、坂道マニアだったりする。そういうマニア心を持った人が、「笑っていいとも」なんていうポップカルチャーのど真ん中に、自然体で立っているところが面白い。

「笑っていいとも」「トリビアの泉」「タモリ倶楽部」という、タモリさんの出演番組が、なんとなく、「ポップカルチャーサブカルチャーカウンターカルチャー」、という構図とシンクロしているような感じがするところも面白い。一つ間違うと、ディープで「ついていけない」世界を、うまくTVというポップカルチャーのメディアに乗せてしまう器用さ。

多分、タモリさんという方ご自身が、とても常識人なんでしょうね。教養人であり、常識人である。マニア心が惹きつけるディープなネタを、TVというメディアに乗せる時に、この常識というフィルターが上手く働いている気がします。タモリさんの笑いには、どこかで、「このオジサン、俺たちの知らない面白い大人の世界を一杯知ってるな、タダモノじゃないなぁ」ということを、嫌味なく感じさせるものがある。自然体な所も嫌いじゃありません。明石屋さんまのようなニヒルさもない。ビートたけしさんのような自己破壊欲求もない。「これおもしれ〜」というマニア精神と「そりゃまずいだろう」という健全な常識。毒がない、といえばその通りなんで、好みの分かれる所かもしれんが。

TVにおけるサブカルチャーの取り上げられ方、というテーマを立てた場合に、タモリさん、特に「タモリ倶楽部」という番組は避けられないんじゃないかなぁ。最近あんまり見られてなくてすごく寂しいのだけど、一時期欠かさずみてました。「空耳アワー」ももちろん好きなんですけど、「五つ星り」コーナーで山田五郎さんをTVメディアに登場させたり、「東京トワイライトゾーン」のコーナーで、路上観察学をメジャーにしたり、よくまぁこんな下らないネタを、ここまで面白く扱うもんだ、といつも驚嘆。時々、かなり危ないネタもあって、ちょっと前にやってた「全タイ」ネタとか、ちょっと怖かった。(全タイってのは、全身タイツの略です。全身をタイツにくるんで愛撫しあう、という・・・こわ)

昔見た「笑っていいとも」で、このサブカルチャーポップカルチャーの舞台に上がってしまった違和感、のようなものを感じたことがあります。友達の輪のコーナーで、坂田明さんが出てきて、延々、趣味のミジンコの話をし始めた。会場の若者は全員思いっきり「退いちゃった」。あのコーナーで、くすりとも笑い声の起こらなかった回ってのは、あの回くらいしかないんじゃないかなぁ。でも、このミジンコねた、「タモリ倶楽部」で取り上げたら、無茶苦茶面白いネタになったのになぁ、と思う。

タモリさん、というか、タモリさんを取り巻く番組スタッフが、サブカルチャーをTVに乗せるセンス、バランスに優れた人たちなんでしょうね。なんでこんなことを書いているか、といえば、例の「ガセビアの沼」の「うそつき」コーナーですよ。このコーナーに出ている緒川たまきさんという女優さん、「文学トイフ事」以来結構好きなんですが、最近あんまり露出がないなぁ、と思ってた。このコーナーで久しぶりに拝見して驚愕。緒川さんに目をつけるってのは素晴らしいね。上品さ、知的な雰囲気、それでありながらちょっと小悪魔的で、可愛げがあって、近づきがたい感じまではいかない。ちょっと遠くから、「いいなぁ」とあこがれるような素敵な女性。「ガセネタを聞いた女の子に、嘘つきって言われちゃいますよってのはどうだ」「嘘つきって言われたい女といえば誰だ」「緒川たまきだろう」という制作方の発想が素晴らしい。

その話のどこがサブカルチャーなの?といえば、そういう瑣末なことにこだわるところがサブカルチャーの本質なんです。加えて、緒川たまきという、知る人ぞ知る女優さんを選んでくるところがマニアっぽい。これが松浦亜弥とかじゃこうはいかんぞ。そして、サブカルチャーは増殖する。この「うそつき」コーナーのキャプチャー画像をHPにコマ送りで掲載しているページを先日見つけて驚愕。(ちなみにココ→http://to-syu-sensei.no-blog.jp/tousyuu/cat1032416/index.html)見つけるお前は何者だ。緒川たまきオタクじゃないだろうな。いや、このコーナーが好きなだけ。最近見られなくって寂しい。はい。