ぶらり散歩

昨日、夕方から脳みそを輪切りにしてもらうことになり、午後、会社を休む。我が社の有給は、いわゆる時間休、という概念がなくて、夕方の検査のためには「午後半日休」をとらないといけないんです。折角半日お休みもらったのに、会社にいるのは悔しいので、お昼から退社してしまい、神保町・水道橋・御茶ノ水近辺をぶらぶらと散歩しておりました。

神保町の駅前あたりに用事があり、それを済ませたあと、どこといって行くあてもなく、ぶらぶらと白山通りを水道橋の駅の方へ。カルタ専門店なんぞを見つけて嬉しくなる。水道橋の駅前の喫茶店で時間をつぶしながら、街の様子を眺めていると、目の前の通りを女子中学生の群れが次々通りすぎる。スケベな中年男は、どこの学校かしらん、と好奇心を誘われて、店を出てその道を登っていく。左手に現われたのは、桜蔭学園。道理でなんだか勉強の得意そうな女の子たちだと思った。

そのまま坂を上っていき、順天堂大学の手前で右に折れて、神田川の方に下る。このあたりの地形を語る上で、神田川というのは欠かせない存在なんですね。私の勤め先のある水道橋のあたりで、神田川に直角に交差している水路があり、その上に首都高速池袋線が通っているのですが、この水路は江戸幕府が、井の頭池から江戸に水を引き込んだ、人工的な水路。まさに「水道」だったそうですね。御茶ノ水あたりの地形は結構起伏に富んでいて、水道橋から御茶ノ水・本郷あたりが小高い丘になっている様子がよく分かります。御茶ノ水橋を渡り、明大通りを途中で右折。とちの木通りを進んでいくと、左右に、明大や日大、駿台などの学校が立ち並ぶ。明大付属高校の近辺から、男坂、女坂を左に眺めながら進む。ここも小高い丘であることが実感できます。アテネフランセを左に見ながら、一気に水道橋の方へと坂を下り、ぶらぶら散歩を終えました。

東京に初めて出てきた時、渋谷近辺の町を歩きながら、なんて分かりにくい街だろう、と思ったことを思い出します。育った大阪の街や神戸の町に比べて、道が常に曲がりくねっている。まっすぐ歩いていると思ったら、いつのまにかまるで正反対の道をたどっている。中心に江戸城、現在の皇居を抱え、その存在を排除しなかったために、旧来の円環型の道と複雑な路地がそのまま残っている。

機能的な街、とはとても言えないのかもしれないけれど、ぶらぶらと目的なしに散歩する分には、実に面白い街なんですねぇ。以前、池波正太郎さんの「原っぱ」という中篇小説の感想を書いた時に、池波さんが、「路上」で起こるドラマに注目している姿勢が面白かった、と書きました。東京において、道は機能優先に作られていない。だから、東京の道ではドラマが生まれるのかもしれません。