時代の色

最近、妙に金色が流行っている気がします。朝青龍のまわし。マツケンサンバの衣装。今朝出勤してくる途中で、しぶい金色のパンプスを履いているOLさんに複数出会いました。アサヒビールがゴールドという名前の缶ビールを出し、キリンがゴールドという名前の缶コーヒーを出す。マツケンさんに対抗して金色の衣装を着た大地真央さんが踊り狂う。偶然じゃないでしょうね。どこかで、「最近の流行色は金色」というマーケティングが進行しているんでしょう。

時代の色、というのは誰が作るのか知りませんが、確かにあるんでしょうね。私のように、トレンドに敏感じゃない人間じゃなくて、それこそ、ガレリア座のヘアメイクアーティストのLarteのMさんのような方の方が、業界人としてはるかに敏感なアンテナを張ってらっしゃると思いますが。そんな風に鈍感な私でも、いくつか記憶に残っている「流行色」があります。

一つは、私が高校から大学くらいの頃に流行った、「モノトーン」のブームです。黒と白のシンプルな組み合わせが結構流行りました。バブル前夜の混沌とした時代に、白黒のけじめをきっちりつける、というメッセージがあったんでしょうかね。黒ずくめの2人組の刑事が、横浜を「あぶない刑事だぞ」と喚きながら走り回っていたのも、この頃のような記憶があります。

二つ目は、やっぱり、バブルの時期です。この頃の色彩感覚というのは、苗場のゲレンデに溢れたスキーウェアが象徴している気がする。とにかく、七色の極彩色が無秩序に散りばめられ、時にはマツケンサンバの衣装のようにギラギラと輝いておりました。誰も彼もが苗場に向かい、リフト乗り場の待ち行列は目がくらくらするような色彩のカオスでした。色きちがい、とはよく言ったもんだ。あの頃の日本はほんとに異常でしたね。

三つ目は、バブル崩壊後の若者ファッションです。なんだか灰色のくすんだ色調が多くて、若者全員がホームレスになったみたいな、よどんだ汚い色が支配していた気がします。若いんだから、もうちょっと華やかな格好すればいいのに、と、薄汚い色のフリースなんか着ている若者を見ながら、ダークスーツ姿のおじさんはブツブツ言ってました。色調的には似たもの同士ですね。

最近の金色ブーム、というのは、やっとバブルの負の遺産が解消して、少し不安ながらも社会全体が、次を目指してゆっくりと前を向き始めた、という意識の象徴なのかもしれません。街を行く若者の着る服にも、鮮やかながら、目に刺さらない優しい原色が増えてきた気がします。願わくは、浅薄なキンキラブームに踊るのではなくて、じっくりと地道に、穏やかで優しい色が彩る社会が訪れてくれますように。