「動かないこと」と「何もしないこと」

本番前の最後の週末。土曜日はGPで、日曜日は抜き稽古。スタートの遅かったこのプロジェクトも、やっとエンジンが温まってきて、そろそろ坂道でも、なんとかエンストしないで進める感じになってきました。でもまだまだ全然レベルが低い。細かいアラが克服できていなくて、コーナーの減速がひどい。もっと思い切ってインからアウトを攻め込む感じで飛ばさないと。

飛ばす、といっても、きちんと力の配分を考えながら、ということですから、非常に理性的な作業です。GPでは、2幕の途中あたりからノドが上がってきてしまって、2幕フィナーレの聞かせどころの直前あたりで、ほとんど高音が出ない状態になってしまいました。数分間の降り番の間に、必死に、うがいや水分補給を繰り返しましたが、やっぱり、2幕フィナーレは息切れ状態。Ogiちゃんにも、「だいぶキツそうでしたねぇ」と言われてしまった。そういうことが外に出ちゃったらダメなんだよなぁ。

演技で大切なのは、「動くこと」よりも「動かないこと」だ、ということを、以前この日記に書きましたけど、女房に最近口すっぱく言われているのは、大事なフレーズを歌っているときに、「とにかく何もしないこと」。底流にあるのは、実は同じことなのかも、と思います。先日の日記で女房が書いていた「アゴを動かすな」というのもそうなんですけど、何か芝居っ気のあることを歌の途中でやろうと思うと、てきめんにアゴも動くし、支えもぐらぐら、音程も何もかもが崩れてしまうんです。演技において、フォームをきっちり決めて、美しく「動かない」ことと同じで、歌も、いかに「何もせず、淡々と楽譜通りの音を出すか」ということが大事なんですよね。頭じゃ分かっているんだけど。「何もせず、楽譜通りの音を出す」ためには、ものすごく下半身の支えが必要になってくる。これが全然出来ないんですよ。下半身の支えがなくて、結局芝居っ気に頼っちゃって、ぼろぼろと崩れていく。

仕事も佳境に入ってきて、日曜日の午後は休日出勤を余儀なくされてしまいました。ここのところ、帰宅も午前さまが続いているので、睡眠不足と疲労が蓄積しています。本当に初めての経験だったのですが、GPの稽古中、テンションの高いセリフをガアーっと吐いている最中に、すうっと視界が暗くなる瞬間が3回ほどありました。やばい、このまま舞台上にぶっ倒れるか、と思ったのですけど、なんとか持ちこたえ。本番にはこれをやらかさないように、きちんと体調管理に努めなければ。また寒気が近づいているらしいから、そっちも気をつけないとねぇ。