癖を克服する

人間40年も生きていると、生まれたばっかりの時にはなかったはずの体の癖、のようなものが身にまとわりついているんですよね。歩き方、手の癖、姿勢、顔の表情。自分では全然自覚がないのだけど、ビデオとかで確認すると、明らかにみょーな動きをしている。意識して動いているのならともかく、無意識の動きだから余計にたちが悪い。

昨夜、オルレンドルフの部下役の4人の方々と、都内某所に集合、先日の通し練のビデオを見ながら、自分たちの芝居をチェックしました。野郎5名が一室にこもって、パソコンの映像を見ながらあーだこーだと密談している、という図は、なかなかに怪しくて、悪くない。子供の頃の秘密基地ごっこのような感じで、実に面白かったんですが、画像を見てかなり落ち込む。ビデオってのは非常に残酷なもので、克明に自分の動きの癖を記録しています。でも、そういう残酷な現実をきちんと分析しないと、癖を克服することってできないんだよね。

ビデオでチェックすると、思ったよりも随分姿勢が悪い。首が前に出て、猫背になっている。特に、何か企んでいる、という芝居をする時に、極端に猫背になる。軍人なんだから、常に胸を張ってないといけないし、歌にだっていい影響があるはずがないんですけどね。無意識なんだよなぁ。よっぽど意識して体を作らないとね。

姿勢、というのもそうですが、癖、というのは、結局、普段ある筋肉が主に動いてしまう、あるいは、普段、ある筋肉が常にサボっている、という状態を示しているんですよね。極端にそれが現われるのが、顔の筋肉。私の歌い癖なんですが、すごく口が歪むんです。口が左側に極端に曲がる。プロの歌い手さんでも、そういう口をして歌う方ってたまにいらっしゃいます。以前見た、ゲオルギュー/アラーニャの「愛の妙薬」の映像で、ベルコーレを歌っていたロベルト・スカルトリティというバリトン歌手は、見事に口が曲がってた。星野淳さんも口が曲がりますね。バリトン歌手に多いのだろうか。でも、これらのプロの方たちは、口が曲がっても口腔内がすごく広く保たれているから、声に影響がない。私程度の技術だと、口が曲がることで、口腔内が歪んで、響きが狭くなっちゃう。よく分かっているんだけど、治らない。

なんで治らないか、といえば、40年間、顔の左側の筋肉ばっかり使ってきたから。右側の筋肉に比べて、左の筋肉が強いんです。分かりやすいのは、ウィンク。左目でウィンクする方が全然楽。右目でウィンクすると、妙に顔全体が歪んでしまう。そういう顔の筋肉の癖がついちゃってるんですね。

本気でパフォーマーとして矯正する気なら、毎日顔の右側の筋肉を鍛える訓練をしないといけないんですが、そこまでの根性もない。癖を直す、ということは、サボっている筋肉、衰えてしまった筋肉を鍛えること。余計な動きをする癖があるとすれば、体を動かさない筋肉をきちんと働かせること。運動神経がなくて、身体能力の低い私にとっては、高い高いハードルです。右頬矯正ギブス、とかないかなぁ。ないよなぁ。