文化の発信地の作り方

今日は、今週月曜日にお邪魔した、大田文化の森合唱団のことを書きましょう。

大田区民オペラ合唱団でお世話になっている山口俊彦先生が指揮されている合唱団です。そのご縁で、来年の1月に開催される、この合唱団の演奏会を、ステマネとしてお手伝いすることになりました。

団員70名程度の立派な合唱団で、取り上げる曲も、モーツァルトのレクイエムと水のいのち、他にホームソングメドレーという、本格的な構成。練習後、事務局長のKさんに、少しお話を伺いました。

大田文化の森、という施設は、2001年11月にオープンした施設で、大森駅前の山王商店街を抜け、大森駅から徒歩10分くらいの所にあります。練習会場になっている多目的ホールは広くてきれいだし、5階建ての立派な施設には、脇にキャパ260名程度のホールがついている。本番はこのホールで開催されるのです。

この施設の特徴は、その運営形態でしょう。HPから引用してみます。

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2001年11月にオープンした、大田区民の文化活動支援施設「大田文化の森」の運営を、大田区は、従来のように行政が行うのではなく、区民が自主的に行う方針をたて、一般区民から公募で選ばれた8人を含む15人の区民の委員から成る運営協議会を、2001年2月に設けた。 1.地域振興 2.区民の文化活動支援 3.文化の発信 を目的として、理事会、事務局、コーディネート、事業の企画・運営・実施を担っている。

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この運営理念のもと、この施設から文化を発信する活動の一環として、「大田文化の森合唱団」が作られたそうです。それも、最初は、大田区の讃歌のような歌を歌いましょう、という活動から始めて、xxを歌いませんか、yyを歌いませんか、という形で人を集め、2年ほど前から、「大田文化の森」という名前を冠につけた合唱団として活動を始めたそうです。

非常に面白い試みだなぁ、と思いました。ここにおいて、お役所は「ハコ」と「お金」を用意するだけ。中に入れる「ソフト」は、区民を中心として企画し、招致する、あるいはこの合唱団のように、自分たちで育てていく。

良質なソフトを選別し、招致するには、特殊なノウハウや、人脈が必要になります。だからこそイベントプロモータという商売が成り立つわけです。また、区民の意見を取り入れる、といっても、区民全般に受けるソフトが果たして良質なソフトか、というと、これもまた少し違う可能性だってある。区民のほとんどの人たちにはチンプンカンプンだけど、世界的に見るとすごく良質なソフト、というのだってありうるわけですから。

だから、私は、この方式は素晴らしい、と手放しで誉めるつもりはありません。でも、お役所が用意したハコにお役所の外郭団体がくっついて、極めて官僚的な判断でソフトを決めていく、という、よくあるアプローチを見慣れた目には、非常に新鮮に映ります。

住民の意見も取り入れながら、適切な選別眼を持ったアドバイザーが、一貫した思想に基づいて良質なソフトを供給していく。そのソフトによって、住民の目や耳もどんどん肥えていき、さらにソフトが良質化していく・・・理想的な循環はそういう形なんでしょう。なかなか達成できない理想かもしれませんが、大田文化の森、という試みが、そういう好循環で回ってくれればいいなぁ、と思います。