新宿オペレッタ劇場7

2日(金)に、新宿オペレッタ劇場7を見てきました。今日はその感想など。
この新宿オペレッタ劇場は、ほとんどの回を見ているのですが、今回はその中でも、色んな意味で成熟した感じがしました。そう思った要因を考えると、何点かあるのですが・・・

(1)アンサンブルがよかった
今回の出演者のアンサンブルは実によかったです。赤星啓子・猿山順子・佐藤一昭・相馬純・清水良一というソリストメンバーは、それぞれに安定感があり、重唱のバランスもとてもよかった。個人的には、同じパートということもあり、清水先生の歌唱に一番しびれました。以前のオペレッタ劇場の「荒野のバラ」ですっかりファンになってしまったのですが、広い音域で甘い豊かさが全く失われない美声。相馬さんも、安定感があって芯が揺らがず、バス・バリトンパートが広い声域でしっかり鳴る。そこに、存在感・安定感共に抜群の佐藤先生と、ボリューム感を増した猿山さん、カーン、とした高音の響きが素晴らしい赤星先生のソプラノが乗って、非常にバランスのいいアンサンブルだった気がします。

(2)落ち着いた演技
これまでの舞台では、演出に対する演技者の戸惑い、のようなもの、ちょっとドタバタした感じが時々見え隠れして、若干観客に緊張を強いるような場面があったりしました。でも、今回は、演技者が演出をこなすだけでなく、その演出を楽しんでいる感じ、余裕が感じられた気がします。佐藤先生の存在感を筆頭に、赤星先生のノーブルさ、清水先生のキャパシティーの広さ、猿山さんの軽やかさ、相馬さんの若々しさ、それぞれのキャラクターが、それぞれに活かされつつ、ソリスト全員が歌も、ダンスも、演技も、全てを楽しんでいる。それでいながら、歌・声に対する非常に真摯なアプローチは崩れない。だから、音楽が乱れない。特に相馬さんのステップの上達ぶり(失礼)には感心しました。

(3)歌い手と場がしっくりしている
今までのオペレッタ劇場では、その場にどうもなじめない、というか、何か戸惑っているような感じのする出演者が、一人二人必ずいた気がするんです。あまり他に例のない表現形態である、ということもあるし、観客と出演者の距離が非常に近いので、観客自体も、どこか戸惑いがあった気もします。
でも、今回の舞台では、観客にも常連さんが多くなり、出演者も、何度かこの劇場を経験している方々。テノールの佐藤一昭先生に至っては、オペレッタ劇場の看板テノールの一人、という感じですから、すっかり場に馴染んでいる。そんなしっくり感が、なんとも和やかで、ゆったりと音楽に身を任せられる雰囲気を作ってくれた、そんな気がします。
最後には、観客も一体になって、佐藤先生の「40回目」の誕生日をお祝いする「ハッピーバースデー」を歌う。会場と舞台が本当に一つとなった、温かい空間がそこにありました。

 

終演後、打ち上げ会場にお邪魔して、少し、ソリストの先生方とお話しする機会が持てました。お疲れのところ、失礼してしまって申し訳なかったのですが、皆さん、声・歌に関して本当に真剣に取り組んでらっしゃる、その姿勢に感動しました。赤星先生に、「あのカーンとした高音で、ピアニッシモを歌われると、もう好きにしてって感じになりますよね」と言ったら、その音を出すために、数週間ずっと試行錯誤を続けていた、とのこと。演奏家としての矜持、を感じました。
打ち上げの席でも、声・歌についての話はやまず、色んな楽しいお話が沢山伺えたのですが、中でも、猿山さんが、「以前から何度も見てらっしゃる方から、声がこう変わったね、こうなったね、という意見を聞くのが本当に嬉しい」とおっしゃっていたのが印象的でした。オペレッタ劇場というアプローチを、新宿文化センターという場所が続けていく中で、ヨーロッパの劇場のように、観客が歌手を育てていくような、そんな環境が次第に育ちつつあるのかな、という気がしました。