古い建物っていいなぁ

横浜に行ってきて、仕事が終ってから、ぶらっと赤レンガ倉庫に行ってみました。面白いですねぇ。私ぐらいの年齢にはちょっと若者向けすぎるかもしれないけど、どっしりしたレンガの色合いと、アクリル板のぺらんとした感じが、妙にマッチして、どこか隠れ家風で楽しかったです。

横浜の関内あたりの町並みは落ち着きますね。札幌や、神戸、名古屋あたりの地方都市に行くと、東京というのはやっぱり異常な街なんだな、というのを実感します。人が多すぎる。道が狭くて、車が多すぎる。色んなものの密度が高すぎて、ゆとりがない。町のビルの外観にも統一感がなくて、眼がちかちかする。時々東京から脱出して、地方都市のゆったりした町並みを歩くと、なんだかほっとします。

赤レンガ倉庫もそうですけど、最近、明治建築とか、昭和30年代のレトロ風とか、昔の建物が見直されていますよね。以前、小金井公園の中にある「江戸東京建物館」に行ったことがあるんですけど、大好きな場所です。昔の建物って、いいですね。どっしりしていて、時間の尺度が違う気がします。最近の建物は、10年単位でモノを考えている気がするけど、昔の建物は、100年単位で考えている気がする。以前、プロジェクトXで、薬師寺金堂を再建するときに、職人さんが、設計図と少し違う角度で屋根を作って、「1000年経ったら設計図通りになる」と言い切った、という話が出てましたけど、そういう感覚がありますよね。我々が死んでも、この建物はここに残っていてくれるんだ、というような安心感。

今年の夏の演奏会では、女房の実家の大船渡市にある、古い酒蔵を改造したサロンでコンサートを開きます。旧酔仙酒造第三工場跡地に出来た、No.3 Gallaryという所。工場、と言いますけど、要するに、酔仙というお酒を造っていた、土壁の酒蔵です。一度冬にお邪魔したことがあるんですが、土壁の柔らかさと高い天井、それに、簡素なコンクリートの床と最小限の光源が、なんとも不思議なマッチングを見せている、落ち着いた空間でした。大正時代に出来たというこの古い建物の中で、我々の歌声がどんな風に響くのか、とても楽しみです。