変わっていくもの、変わってほしくないもの

昨日、一昨日と、7回目の結婚記念日のお休みをもらいました。

結婚した翌年から、毎年、結婚記念日には、結婚式を挙げたホテルでのんびり一泊するのを恒例行事にしています。年に一度の贅沢。毎年、「マンネリだから、ちょっと別のことをする?」と夫婦間協議をするんですが、新しいことを考えるのも面倒。それに、毎年、同じ定例行事を、変えることなく繰り返すっていうのも、何かしら意味があるものです。

結婚式を挙げたのは、白金台にある、都ホテル東京、という、こじんまりしたホテルです。こじんまりしている割には、庭園がとても立派で、ホテルのサービスも気持ちよく、毎年の宿泊もとても楽しみ。でも、このホテルも、結婚後随分と趣が変わってきました。ラディソングループと資本提携して、ラディソン都ホテル、という名前になってから、経営方針が随分変わったようです。

結婚式は、このホテルのレストランで挙げたのですが、このレストラン(「クレドール」(金の鍵)という名前でした。)が、閉店してしまいました。庭に面した、とても気持ちのいいフランス料理店で、お食事も本当に美味しかったんですが・・・確かに、ディナー時のお客様の数もまばらで、経営的には難しかったんでしょう。宴会場になってしまいました。

昔の都ホテルは、どこかに欧州の香りがある・・・というか、ゆったりとした時間が流れている感覚があったのですが、今は、どうも米国流のきびきびしたサービスを売りにしているようです。その分、海外出張のビジネスマンなどにはいいホテルになったのでしょうけど、我々のような怠け者が、ただ怠けにくる、という場所としては、ちょっと居心地が悪くなってきた感じがします。何と言っても、客層が変わった気がしました。関西系のビジネスマンの方々が、ドスの効いた関西弁で、「xxの名前でカネ入れとるんやからな。なんか文句あるんやったら、xxに口きいたれ」などとフロントで携帯電話にまくし立てている。中国からの団体客と思われる方々が、エレベーターホールで大挙して「あっちだ、こっちだ」と部屋を探している。ホテルの雰囲気を作るのは、スタッフのサービスも大事ですが、何よりお客様ですよね。昔より経営状態はきっといいんでしょうし、サービスは一級のホテルなんですけど、何かが確実に失われてしまったな・・・という気がしました。

でも、お庭は相変わらず美しく、結婚式を挙げたチャペルもそのまま。クレドールはなくなってしまったけど、代わりにメインダイニングになった「四川」というお店の中華料理は、びっくりするくらいおいしいです。毎回、変わった食材のおいしい味を味わえる。今回は、「百合の芽」というお野菜をいただきました。こりこりしていて、さっぱりした味わい。

昔、女房と一緒にやった二人芝居で、「セイムタイム・ネクストイヤー」というお芝居がありました。既婚者同士の男女が、一年に一回だけ、西海岸のリゾート地にあるホテルで、不倫の逢瀬を楽しむ、というお芝居。二人の登場人物はどんどん年をとっていくのですが、彼らが会うホテルの部屋は、全く変化がない。でも本当はそんなことってありえない。人間が変わっていくのと同じように、周囲のものだって変わっていくんです。特に東京みたいに、変化の激しい都会では、変わらないものを求めること自体至難の業。でも、せめてこの都ホテルの庭園だけは、昔と変わらないたたずまいを残してほしいなぁ。そう思いながら、もう4歳になる娘と手をつないで、庭のあじさいを眺めていました。