舞台の上の身体

週末、一人芝居の練習。自分なりに、キャラクターが段々固まってきた感じがするのですが、怖いのは、これが実際にお客様が入った時に、きちんと再現できるかどうか、です。お客様の反応によって、どうしても演技も影響を受けちゃいますから・・・変に客席に媚びずに、とにかく淡々と、この1年作り上げてきたこの「彼」の姿を、しっかり表現できればいいんですが。
土曜日の練習が終わった後、音響のO島くんに、「コントラバスがぐらぐら動いて見える」との指摘を受け、ちゃんとコントラバスの弾き方から勉強しなければ、と、日曜日、ちょっと張り切って演奏の練習をしました。CD付きの教則本を見ながら、基本コードを弾いて行く練習。娘は大喜びで、コントラバスに合わせて踊っていました。今朝起きたら上半身が筋肉痛です。なんてヤワなんだ。

日曜日の夜、偶然つけたTVで、きれいな歩き方、というのをやっていました。胸から前に出て行くような感じで、腕を前後、ではなくて、なるべく後ろに引くようにして歩くとかっこいい、というのですけど、ちゃんと意識していないとなかなかきれいには歩けないもの。今回のお芝居でも、普通に歩いたり、普通に喋ったりする時に、どうしても「素」の自分が出てきてしまって、これが舞台上の緊張感を削いでしまうんですね。

その後、これまた偶然に、芸術劇場を見ていたら、演出家の鈴木忠志先生が、しきりに、「舞台上には舞台上の作法というものがある」と強調されていて、なるほどなぁ、と思いました。鈴木先生が提唱されている、舞台上の肉体表現の基礎を身に付けるための、「鈴木メソッド」の練習風景が紹介されていましたが、一部分を見ただけでも、すごく納得がいく。要するに、舞台上に立つための肉体の動かし方の基礎を、身体に覚えこませるための練習なんですね。

鈴木先生が、「プロの野球選手だって、日常生活でボールを打つ、という行為をするわけじゃない。そのための特別な身体訓練をして、あれだけの特別な運動ができるようにするんだ。舞台で演技する、ということは、日常生活を再現するのではなくて、日常生活とは全く別の身体表現によって、日常生活を表現する、ということであって、そのためにはその表現を行うための特別な訓練が必要なんだ」というお話をされていて、いちいちすごく得心がいきました。

歌う、という表現においても、日常生活での鼻歌のままでは、オーケストラに対抗する声は出ません。そのためには、歌うための体の形、筋肉の動かし方=「フォーム」が必要。私の歌の師匠である山口先生にレッスンしてもらったときに言われたのは、「このフォームが出来ていないと、舞台上に立っても美しく見えない」という注意でした。全部つながっているんです。歌のフォーム=演劇上の発声・身体表現をするための基本的な体の形、動かし方、なんですね。
いままで、何回かお芝居の公演をやってきましたけど、今回ほど、きちんと下半身に支えを作って発声する、ということに気を使っている公演はないかもしれません。逆に言うと、今まで意識をしていなさすぎたんですね。反省。

しかしそれにしても、ちょっとコントラバスの練習をしたくらいで筋肉痛になっているような状態では・・・鈴木メソッドの練習は、恐ろしく過酷な同じ動作の反復練習でした。ああいう基礎練習を、もっときちんとやらないと、本当はいけなんですよね。一番体力を使うのが朝の通勤電車の中、というのでは、やっぱりまずいなぁ・・・