ステージマネージャというお仕事 そのいち

扁桃腺の腫れは引いたんだけど、今度は胃腸の調子が悪いです。風邪が内臓にきたかなぁ。朝は絶不調だったんだけど、昼になってちょっとマシ。でも年休が残っていないので、如何に体調不良でも、頑張って会社には出てこなければ。

さて、昨日は、演出家のお話を書いたので、今日は、私の本職の一つ(?)のステージマネージャーというお仕事について、書きたいと思います。
ちょっと長くなりそうなので、今日は「そのいち」ということで。


縁あって、辻正行先生の率いていらっしゃった大久保混声合唱団の演奏会で、何度かステージマネージャを引き受けました。そのご縁で、辻先生の指導されていたいくつかの合唱団の演奏会を、ステマネとして手伝わせていただきました。

その中で思ったんですけど、意外と、「ステマネ」という仕事って、認知度が低いんですよね。ある合唱団なんか、「ステマネって、何するの?」という所から、打ち合わせが始まったりして。
でも、やってる本人からすると、意外なくらい達成感のある、面白いお仕事なんですよ。向き不向きはすごくあるなぁ、と思いますけど、私には「向いてる」仕事なんでしょうねぇ。
一度、大久保混声合唱団の団長さんに、「Singspielerさんって、団員として歌うのと、ステマネとだったら、どっちの方がやりがいあります?」って聞かれて、わりと即座に、「ステマネですね」と答えて、自分でも「あら、そうなんだ」と意外に思ったりもした経験あり。

じゃ、そのステマネって、どんなお仕事をするの?と言うと、ざっくり言えば、演奏会の段取りを全て仕切るお仕事です。というと偉そうですけど、要するに、あらゆる「雑用」をこなす、何でも屋さんですね。

私の乏しいステマネ経験から、ステマネのお仕事を時系列に解説してみると、以下のような感じかなぁ、と思います。合唱団のステマネをやる方なんてほとんどいないだろうから、「だからなに?」って感じでしょうけど、合唱団の演奏会の裏で、スタッフがこんなことをしているんだ、ということを知っていただけると、ちょっと見方が変わるかも・・・なんてね。
どっちかというと、自分のノウハウの備忘録みたいな感じですが。いいよねぇ、インターネットだし。(何でもありだよね、と言い訳してみる)

  • 主催者側と打ち合わせ

まず、どんな演奏会なのか、を確認します。主催者側が考えているステージ構成、編成、演出の有無、タイムスケジュールなど。
どんな楽器を使うのか、によって、舞台の仕込み状況は変わってくるし、演出があるとなると、照明の仕込みが必要か、とか、マイクを使うのか、演技スペースなどはちゃんと確保できるか、など、舞台の準備環境が全然違ってきます。
タイムスケジュールも、ステマネにとっては、「仕込みの時間があるか」「バラシの時間があるか」という点が最重要ポイントになります。

演奏会のスタッフは、大きく3つに分かれます。舞台の面倒を見るステマネ、楽屋で出演者の御世話をする方、受付でお客様の面倒を見る方。ステマネは、この3つのパートの状況を常に確認し、最初に書いたタイムスケジュール通りに進行しているか、常にチェックしないといけません。
なので、打ち合わせの際には、この3つのパートのお仕事の分担を確認します。大抵の場合には、楽屋周りは団員さんが自分で管理、受付については外部スタッフ、というパターンが多いです。
時には、受付の設置の手伝いとか、楽屋の設営やゴミの管理といったところまで、ステマネにお願いされることがあります。団員の数が少ない、規模の小さい演奏会なら引き受けますが、50人以上の大きな合唱団では、到底そこまで手が回らず、なんとかスタッフさんで回してください、とお願いします。

先日、池袋の芸術劇場でステマネをやった演奏会では、会場が閉まる直前の10分間に、正面玄関の鍵と10個ある楽屋の鍵を全て一人で閉めることになって、足がつりそうになりました。(またあのホール、玄関ロビーから舞台裏が気が遠くなるほど遠いんです(T_T))
事前にうまく仕事を割り振っていなかった私のミスだったのですが、泣きそうになっている私を哀れに思った会場のスタッフの方が、「後はいいですよ」と声をかけてくださって、本当にありがたかったです。

  • 仕込み図面・タイムスケジュールを書く

打ち合わせた内容に合わせて、舞台上の仕込み図面と、ステマネ用タイムスケジュールを書きます。

ステマネ用タイムスケジュールには、朝、会場に自分が着いた時から、ピアノの調律は何時から何時か、団員さんは何時に入るのか、指揮者の先生は何時に入るのか、リハーサルは何時から、照明のあわせは何時から、など、全てのイベントを自分なりに整理して記入していきます。この時間に何が起こるのか、という全体像を把握することと、その時自分がどこにいて、何をしないといけないか、を整理するための表で、私にとっては、これが全ての指標になるもの。とても大事です。
タイムスケジュールを書いていくうちに、「ここでこの作業をやってないとダメだけど、団員さんから人手を出してもらえるかな?」とか、「この楽器は音だし必要かな?」など、色んな疑問が出てきます。それも、スケジュール表にどんどん書き足して、後から主催者や会場に問い合わせをかけます。
このタイムスケジュールを書くには、その場でその時間に何が起こるか、そのためには何を事前にやっておかねばならないか、という、頭の中でのシミュレーションが不可欠です。「想像力」ですね。その場に立ったときに、何がそろっていないといけないか、を想像した上で、では、それをいつ準備しておくか、という段取りを決めていく作業です。
この想像力と、段取りを決める能力が、ステマネとして向いているかどうかを決める資質だ、ともいえると思います。この作業が、一番しんどいんですけど、一番楽しいです。

仕込み図面は、必要な楽器や、動きや、大体の団員の配置など、会場にこちらのイメージが伝わるように、自分のイメージを整理しておく程度にしておきます。会場からもらった備品表と首っ丈で、自分なりのひな壇の組み方を考えてみたりしたこともありましたが、会場のスタッフの方がノウハウも経験もありますから、結局素人の浅知恵で終わることが多いです。「こういうことをしたいのですが、どうすればいいですか?」と聞けるように、材料をそろえておけばいいのです。

先日ご一緒にお仕事をさせてもらった、東フィルのステマネのIさんという方は、会場の備品をほとんど把握されていて、自分で会場スタッフと相談しながらカンペキな仕込み図面を作り上げてしまいました。さすが、プロのお仕事、という感じでしたが、我々アマチュアにはそれは無理なこと。実際、ステマネをやっていて思うのは、「とにかく分からないこと、疑問点はプロに聞く」ということでした。会場スタッフさんは、その会場の隅々までよくご存知ですから、必ず、最善の解決策を示してくれます。


次は、会場との打ち合わせ編。(誰が読むんだよ(^_^;))