CCF合唱祭〜気持ちのいい舞台でしたぁ〜

18日の日曜日、新宿文化センターを借り切って開催された、CCF合唱祭をステマネとしてお手伝い。故、辻正行先生の7回忌と、生誕77周年、という節目の年の大イベント。優秀なスタッフに恵まれて、大きなトラブルもなく、実に気持ちよく終了。

総出演者が500名を超える大演奏会で、文化センターの各所の会議室や小ホールなども楽屋にしてのイベント。最も恐れていたのが「迷子」。もうすぐ本番だ、というのに出演者が会場のあっちこっちで右往左往している、という状況が一番怖かったのですが、大きな問題なく進めることができました。各ステージのリハーサル終了の度に、何度も何度も、「迷子にならないように、自分の動きをしっかり確認してください」と口すっぱくお願いしたのも効いたのでしょうけど、いくらお願いしても、出演者の方々の自覚がなければ、なかなかうまくいかないもの。そもそも、各ステージのリハーサルが、ほぼタイムスケジュール通りに進み、こちらから出演者の方々に、きっちり注意喚起する時間が取れた、というのもありがたいことでした。指揮者の先生方や、出演者の皆さん、主催者の方々が、舞台運営にも色々と気を配って下さって、いろんな意味でとてもやりやすかった。

何より、ガレリア座からお願いした2人の助っ人、AちゃんとSさんが見事にサポートしてくれたのが実に気持ちよかった。自分で楽屋中を走り回る、なんてこともなく、合唱団の誘導なども安心して任せることができる。当方からのお願いの仕方はすごく適当で、「合唱団の誘導や、動線の確認をお願いしますね」という漠然とした依頼しか出していないのに、Aちゃんは自分なりに考えて、動線を示す矢印をテープで各所に張り出したり、迷子になりそうな入り口に通過禁止の印を付けたり、こちらが全く指示していない様々なアイデアでサポートしてくれました。

AさんにしてもSさんにしても、優秀なスタッフさんは、「自分で判断できること」「ステマネに判断を仰がないとまずいこと」をしっかり見極めてくれる。「自分で判断できること」はどんどん自分で進めてくれるし、これはちゃんとステマネに確認しないと、ということは必ずこちらに相談してくれる。そういう相談の仕方だと、ステマネとしても、「そんなことそっちで決めればいいじゃないか」という気持ちのストレスがなくて済むし、大事なことはきちんと把握することができる。お二人とも実に気持ちのいい、カンペキなサポートぶりを見せてくれました。素晴らしい。

合同ステージは、出演者総勢300名を越える大ステージ。ひな段も、新宿文化センターでの公演ではほぼ最大規模の、11段の大ひな段。これの設営も、団員の助っ人さんたちの中で、Sさんが率先して動いてくれて、私自身はほとんど汗をかかずにすみました。ビデオプロジェクターを借りた業者さんのYさんという方がすごくいい方で、ビデオプロジェクターの設営だけじゃなく、ひな段の設営からバラシまで、3人分くらいの勢いでガンガン手伝ってくれる。もともとビデオプロジェクターの専門業者さん、というより、舞台の大道具をやっている方、ということもあったらしいんですが、プロになるほど、「これは俺の仕事じゃないから」と知らん顔をしている人も多いですからね。本当に素晴らしい。

こうやって、周囲のサポートが充実していると、ステマネとしては気持ちに余裕が出来ますから、直前になって、指揮者の先生から、「こういう段取りをお願いしたいんだけど」なんて言われても、全く余裕で対応することができます。こちらも、リハーサルの様子を見ながら、当初想定していた段取りをどんどん変えていくことができる。

アンコールとして演奏された、鈴木憲夫先生の「ほほえみ」。正行先生に捧げられた美しい曲ですが、演奏の直前になって、鈴木先生から、カーテンコールの段取りを少し変更したい、と言われる。なるほど、とお話を聞いているうちに、当初想定していたスライド上映の段取りを変えよう、と思いつく。正行先生の笑顔の写真で終演するのじゃなくて、カーテンコールの時に、正行先生が立って笑顔で拍手をしている写真で終演しよう、と。

急遽決めた段取りでしたが、スライド操作担当のSさんとの息もあって、客席の反応もとてもよかったそうです。「ほほえみ」の途中で正行先生の笑顔の写真が映し出された途端、客席で立ち上がって「ほほえみ」を歌いだす人が一杯いたんだって。終演後も、正行先生の写真に向かって手を振ってから帰るお客様も沢山いたそうです。このスライド上映は、主催者のMさんともさんざ協議しながら、直前までいろんな調整をした演出だったので、そういう客席の反応が本当に嬉しい。

演奏会自体も、辻音楽事務所を核とする沢山の合唱団の絆と人の輪を感じる、とても素敵な演奏会でした。出演者の皆様、なんだか口うるさいステマネで申し訳ありませんでした。主催者のMさんには、「Singさんはここまで言ったら嫌われる、というギリギリのところまで言うべきことを言ってくれるからありがたい」なんて言われたけど、これって誉め言葉じゃない気もしていて、結構嫌われてるんだろうなぁ。一応、それなりにギャグも飛ばしてバランスを取ったつもりなんですけどね。

辻正行先生には、いい思い出ばっかりもらったんですけど、今思うと、「怖いな」と思う一言をもらったことがあります。コール・サファイアという合唱団の舞台で、ナレーションのお手伝いをした時のこと。結構張り切って演技して、舞台自体はそれなりに好評だったのだけど、終演後、正行先生に、

「あなたばっかり、素敵でした」

と言われました。その時には、誉め言葉だと思って、「ありがとうございます」と返したのだけど、今思い返すと、冷や汗が出るくらい怖い言葉だと思う。

「助演者が、主演である合唱団員を食ってはいけないよ」という戒めの言葉でもありますよね。舞台上の主役は、あくまで合唱団員。助演者も、ピアニストも、指揮者も含め、団員さん以外の全員が、いかに合唱団員のみんなを輝かせるか、ということに心を砕かなければならない。自分ばっかりがでしゃばって、自分ばっかりが目立った舞台になっていなかったか。今でも、ステマネ、という裏方をやりながら、時々、自分の都合や感情が、表に出てしまうことがあります。自分が気持ちよくなっても意味がない。合唱団員さんが、どれだけ満足して、気持ちよく家に帰れるか、それが実現できないとダメなんだよね。

今回の演奏会で、「あのステマネは鬱陶しかったなぁ」なんて不愉快に思われた方がいらっしゃったら、本当にごめんなさい。でももし一人でも、「あのステマネと一緒にやって楽しかったなぁ」と思ってくれる人がいてくれたら、すごく嬉しいなぁ。あの場所に集った大きな大きな人の輪が、また小さな沢山の輪になって日本全国に散らばって、それぞれに素敵な時間を重ねていくことを心からお祈りしております。そしてもし、皆さんとまたどこかで、楽しい時間を共有できたら・・・と願っています。主催者のMさん、素晴らしい機会を与えてくれて、ありがとうございました。