onefiveの声のこと

3月6日、onefiveの渋谷クラブクワトロのライブに参戦してきました。2019年10月19日にこのグループが初めて神奈川芸術劇場に舞い降りた瞬間を見届けて以来、ほぼ3年半の時間を経て、やっと目の前に再び現れた4人は、すっかり一流のパフォーマーに成長していました。圧倒的なステージと充実感で、「持ち歌が少ない」と言う言葉もあったのだけど、そう言われて初めて、演奏されたのは10曲だけだったのか、と驚くほどの満足感。色んな方が書いているライブレポートを拝見しても、このグループの完成度と溢れる魅力と更なる成長への期待に充ちていて、意味もなく、「でしょでしょ、ウチの子最高でしょ」と誇らしい気持ちになる。別にお前が褒められているわけじゃないんだぞ。でも推しが褒められるってのはそういう気持ちになるものだよねぇ。

 

配信で再見して復習してみても、何度繰り返して見ても新しい発見がある濃密なステージで、語り始めるとどこまでも語り続けてしまいそうな感じもするんですが、今回は、onefiveの楽曲の中の4人の歌声にちょっとフォーカスしてみたいと思います。実際、SOYOちゃんが各曲で魅せた多彩な表情の魅力について語るだけで多分このブログ2回分くらい書けそうな気もするけど、まぁそれは別の機会にね。

 

オンラインライブやCD、MVなどで何度も聞いてきたonefiveの楽曲たちでしたけど、ライブハウスの大スピーカーの前で体全体で聴くと、自宅のAV機器では感じとれなかった様々な音の層が感じ取れて、こういう音だったのか、という新しい発見が一杯ありました。個人的には、「雫」という楽曲の印象がかなり根本的に変わってしまった。メロウなミディアムテンポのバラード、という感じの曲だし、語られている言葉もかなり内省的な日常の一コマなのに、随分低音を強調した厚みのある音で構成されているなぁ、とは思っていたんだけど、大スピーカーからこの低音がガシガシ身体全体を震わせて、さらに4人のパッションこもったダンスが加わると、この曲は決して日常の独り言的なバラードじゃなくて、むしろ一人の少女が自分の人生観を変えるような強烈なパラダイムシフトを体感してしまった決定的な一瞬を切り取った、ものすごく激しい曲なんじゃないか、という印象に変わってしまったんですね。もちろん私個人の感想に過ぎないので、作詞のYURAさんや辻村有記さんの意図とは全然違うかもしれないけど。でも曲の持っている圧力というか、音圧やステージから感じるメッセージの強さが、ものすごい緊張感をもって迫ってきて、これはひょっとして尾崎豊の「十五の夜」と同じくらいのメッセージソングなのかもしれないって思った。

 

そんな楽曲たちの中の4人の声、という点で言うと、4人は決して、恵まれた声量や広い音域を持った歌い手とは言えないと思います。しっかり鍛えられてはいると思うけど、圧倒的な声をもったさくらの先輩達に比肩できるものではないと思う。でも、そういうある意味「ハンデ」が逆に魅力になるように、辻村有記さんの作り出すメロディーがものすごく巧みに設定されている感じがします。どの歌も高音で歌い上げるロングトーンとかがなく、歌いやすい中音域を中心に作られていて、音楽的な厚みは声よりもインストゥルメンタル部分が担う。そしてシンプルなメロディーやラップで、4人の大きな魅力の一つである人間味が自然に感じられるように、ナチュラルな語り口をものすごく意識して作られている。

そしてSOYOさんのピアノ伴奏で歌われたChocoholicさんの楽曲2曲では、より「つぶやき」要素が強く感じられるファルセットを多用することで、高音域と中音域で、語るような、つぶやくようなハーモニーを実現していて、決して4人の声に無理をさせずに、あくまで自然に等身大の言葉が伝わるように工夫されている感じがしました。

そしてやっぱり大きいのは作詞のYURAさんの紡ぎだす言葉のタペストリーの色鮮やかさなんだよなぁ。使われている言葉は本当に平凡で、それこそコンビニに並んでいるおなじみのチョコレートパンや缶コーヒーのような日常なのに、そこに立ち現れるシーンの鮮やかさや印象の強さが半端ない。「雫」の中の「光がさして輝く軌跡の上で踊りだすDancer」の煌めき。「LaLaLa Lucky」の中のアルファベットを織り込んだ遊び心。この人も間違いなくonefiveの奇跡を生み出している天才の一人だと思う。

 

会場にはまだまだ男性の姿が多かったけど、女性ファンの数も次第に増えてきているようだし、様々な衣装も楽しませてくれる4人のコスプレを楽しんでいる方も多いようで、カラオケでこの4人の楽曲を歌い踊る女性たちが大量発生する日も来るんじゃないかな、と思います。特に大変なテクニックを必要としないけど、でも自分の気持ちをそのまま吐き出すことができるような、歌いやすい素敵な歌ばかりなので、是非同世代の女性たちの愛唱曲になるといいなぁ。