3月12日に学芸大学のAPIA40で開催された遠坂めぐさんのライブに参戦してきました。今日はその感想を。簡単に言っちゃえば、こんなお値段のチケットでこんな贅沢な時間過ごしちゃっていいのか、と思ってしまって、自分が少し関わっているクラシック音楽の演奏会と引き比べてなんか反省しちゃった、というのが結論だったりするんですけど、もう少し細かく書いていきましょうか。
遠坂めぐさんというシンガーソングライターさんのことはこのブログにも何度か書いてるんだけど、さくら学院の卒業生の山出愛子さんに提供された楽曲がどれも素敵な曲ばっかりで、YouTubeのご本人の歌聴いてすっかりハマってしまったんです。コロナで2年も延期されてしまった初レコ発ライブ、ということで、これは行かねば、とチケット購入。オシャレな学芸大学の住宅街の中にある、これまた実にオシャレなライブハウスに足を運びました。還暦近いジジイにとっては圧倒的なアウェイ感。
入り口からして洒落てるなぁ。
中はもっと洒落てるなぁ。
とは言いつつ、周りを見回せば同世代の観客の方も結構多くて、会場全体の和やかな雰囲気や手作り感溢れるグッズなどに気持ちも和んで、リラックスした感じで開演を迎えました。ギターの太田貴之さん、パーカッションの渡辺光彦さんが入場した後、バター色の明るい衣装の遠坂さんが入場。最前列に座った自分の目の前を通り過ぎていく姿の第一印象はとにかく、細くてちっこい。YouTubeの配信ライブでもスリムな人だなあとは思ってたけど、心配になるくらい華奢な印象。
それがねぇ、グランドピアノの前に座って鍵盤叩いた瞬間にライブハウスの空気の色全部変えちゃうんだ。あの細い身体で細い指(後でギターの弾き語り披露してくれた時に改めて見直したけどホントに細い指なんだよ)で、まぁグランドピアノがトイピアノに見えるくらいにバンバン音が出る。一曲目の「うすしお」は緊張感もあった感じだけど、2曲目の「メトロ」辺りからすっかり声も安定してきて、暖かみがあって豊かな低音域から、柔らかなファルセットまで、時にゴスペル風の多彩な声のバリエーション自在に操りながら心地よく聴かせてくれる。そして都会の日常を一生懸命生きてる、ちょっと不器用な愛おしい楽曲達が、ギターとパーカッションとピアノっていうアコースティックなサウンドの温もりにしっくりくるんだなぁ。
構成がアコースティックだから余計にそう思っちゃったのかもだけど、自分が主に関わってるクラシックの演奏会の満足度とちょっと引き比べちゃったんですよね。もちろん、一流の音楽家や素晴らしいオーケストラの演奏会の満足感は素晴らしいけど、時には、結構高いチケット代や立派なホールを揃えて、会場に足を運んでみれば、なんじゃこりゃって思うようなパフォーマンスをお客様に見せて平然としている自称「プロ」のクラシック演奏家も結構いたりする。そりゃポップスの世界にだって、なんじゃこりゃって思うようなコンサートはあるのかもしれないけど、遠坂さんのライブの満足度はハンパなかった。サポートプレーヤーの太田さんや渡辺さんの確かな技術、ライブ会場の照明プランの美しさ含めて、このクオリティで、このお値段で、ライブハウスの席数は50席ですよ。この手作り感と距離感は大事な気もするけど、もっと大きな場所で沢山のお客様に聞いてほしいプレーヤーさんだと思うんだよねぇ。
亡くなったお父様に捧げた「月にありがとう」では、ピアノの一音一音に込められた想いの熱さに涙溢れました。笑って泣いて、手拍子で一緒に盛り上がって、心に一杯栄養もらった上に、入り口でCDにサインもらって直接ご挨拶までしちゃったけど、あんな華奢なちっこい身体で、こんなに人に与えることばっかりやってて、娘が同世代のジジイは心配でございますよ。ホントに、しっかり食べて、しっかり寝て、もうちょっと太って体力つけて、無理しないで、心と身体に気をつけて、優しい眼差しで見つけた日常の何気ない瞬間の輝きを、キラキラした音楽にして天に届け続けて欲しいなって思います。遠坂さん、太田さん、渡辺さん、APIA40のスタッフさん、あの空間と時間を作り上げてくれた全ての人たちに、ありがとうございました。やっぱりライブはいいなぁ。