アイドルって儚いもの、とは分かってるんだけどさ。

BABYMETALにハマってしまった人はほぼ全員が抱えているのが、この3人グループは、大人の女性グループであることを前提としているPerfumeと違って、「少女である」ことに一つの存在価値がある以上、3人娘の成長に伴っていつかは終わるのだ、という覚悟と、じゃあいつ、どんな形でこの奇跡的なユニットが終わりを迎えるんだろう、という怯え。YUI-METALが広島公演を体調不良で欠場した時に、「この3人って、我々が想像している以上にものすごく無理して、あの高度なパフォーマンスを僕らに届けてくれていたんじゃなかろうか」というツイートがあって、そうなんだよなぁ、とすごく共感した。

BABYMETALファンにとっては、YUI-METALの体調問題だけじゃなく、SU-METALのお姉さんの中元日芽香さんの引退のニュースや、小神こと藤岡幹大さんの訃報も重なって、この年末年始は結構精神的にナーバスになっているんだけど、そういう過敏になった状態で、紅白の欅坂さんの過呼吸騒ぎや平手さんの負傷騒ぎを見ていると、アイドルさん達が命を削ってパフォーマンスを届けている健気さに感動しつつも、どこかで、無理しないで、無理させないで、って祈るような気持ちになっちゃう。SU-METALと同じActors School Hiroshima出身の鞘師里保さんが、どう見ても精神的に追い詰められてモーニング娘の卒業を決めた経緯なんか見てても、まだ15歳、16歳の子供たちが、巨大なお金を生み出すシステムの中心に立って、命を削ってそのシステムを必死に回している姿が、なんだか哀れに見えてきちゃうし、その中で心を病んだり、疲れ果ててしまったりする子の例を見ていると、まだ未成年の子供にそこまで背負わせることって果たして・・・って思っちゃう。

女性アイドルにトラブルが多いから、キモイオタクの男どもが可愛いアイドルに群がってくるから、みたいな話もあると思うけど、アイドル文化を支えているのは実は男だけじゃなくて、可愛くて元気なものが大好きな女の子たちだったりするから、男女の性差の問題じゃないと思うんだね。一番の問題は、高校野球をはじめとする「部活ビジネス」と共通する、「若さとひたむきさ、そしてそれゆえの儚さ」に感動してしまう人間の心理と、それを価値として人とお金を集めるビジネスの仕組みそのもので、日本のアイドルビジネスはその究極の形である、ということなのかな、と思う。BABYMETALの魅力の中に、3人娘の「若さとひたむきさ、そしてそれ故の儚さ」という要素が大きいことは否定できないし、多分これって、日本のアイドル文化を支えている大きな要素の一つなんだと思う。

もちろん、だからといって、「未成年の子供たちの人権を守るためにアイドル活動を禁止しろ」なんて言い出したら、アイドル文化だけじゃなくて、スポーツや将棋や囲碁みたいに、パフォーマンスそのものが成り立たなくなっちゃう世界がいっぱいあるのは確かなこと。卓球少年少女たちの大活躍もそうだし、天才ピアニストと言われる人はほとんどが3〜4歳でピアノを始めている。海老蔵さんのところの勧玄くんみたいに、4歳や5歳のうちから舞台に乗っているお子さんだっている。そういう小さい頃から身体を作っていかないと、中学生以上になってから思い立って鍛錬してみても、決して真ん中に立てる歌舞伎役者になれないのと同じように、小さい頃から反射的に動く身体を作り上げないと、世界の真ん中に行けないスポーツや芸事なんていっぱいある。それを、「まだ選択する力のない子供の人生を親が押し付けている」なんて人権弁護士みたいなこと言い出したら、多分色んなことが成り立たない。

中村屋さんのご家族のエピソードで、さすがだなぁ、と思ったのが、亡き勘三郎さんが、現勘九郎七之助の兄弟が中学生になった時に、真剣な顔をして、「それでお前たち、本当に歌舞伎役者になるのか?」と問い詰めた、という話。子供の頃から鍛えないと歌舞伎役者にはなれない、だから鍛えてはきたけれど、自分の意志で歌舞伎役者になる覚悟がないなら、やり直すのは今が最後のチャンスだぞ、という踏み絵でもあるけど、そこまで手塩にかけて育ててきた自分の後継者が、「じゃあ歌舞伎はやめます」と言った時の悲しみやショックまで、親として引き受けよう、という覚悟がないと、言えないセリフだと思う。

BABYMETALもそうだけど、まだ8歳とか9歳の頃から、子供モデルや子役タレントとして活躍して、そのままアイドルになる人たちが多い中で、彼らが中学生くらいになった時に、「それで君たち本当にこの世界で生きていくつもりなの?」と真剣に問いかけた大人がどれだけいたんだろう。BABYMETALの出身の「さくら学院」は、かなりシビアにそれを問いかける団体みたいなんだけど、アイドル戦国時代、と言われる中で、ビジネスになるから、という大人の論理でずるずるとアイドル活動続けて、結果として潰されてしまう少年少女たちがいたりしないか、同じ世代の子供の親としては、なんだか心配になって仕方ない。実をいうと娘の中学校時代の友達が、ハロプロで結構頑張ってアイドルやってたりするんで、余計に他人事じゃないんだよねぇ。

なんて思ってたところに、今日飛び込んできたのがももクロさんの有安杏果さんの卒業のニュースですよ。鞘師さんが卒業した時の松岡茉優さんとか柳原可奈子さんのコメントみたいに、ファンとしては、「どこに行っても楽しく笑っててね、いつまでも応援してるよ」なんて言って、ただ涙で見送るしかないんだけどさ。なんか、儚いなぁ、と思っちゃうよねぇ。