BABYMETALRETURNS〜チームの帰還とジャンルとしての拡大〜

1月28日、29日に開催されたBABYMETAL RETURNS - THE OTHER ONE - 、2日間に参戦、さらに今日、ディレイビューイングを見て、このチームの帰還の瞬間をしっかり反芻しました。このチームを支える時間と人の絆、そしてキツネ様のご加護に守られているかのような奇跡の時間。そしてこのチームを支えるオーディエンスの一人であることを誇りに思えた最高の時間でした。

今回、ポジション取りが上手くいかず、1日目は神バンドの目の前(なのでFox GATE側がほとんど見えない)、2日目は新谷ゆづみさんの「星の王子さま」朗読劇を見てから開演ギリギリに駆け込んだシート席。それでも幕張の大空間を満たしたBABYMETAL SAGAの厚みをしっかり体感できたのだけど、今回特に感じたのは、BABYMETALというグループの「チーム感」でした。

過去の公演では曲間の姫たちのスタンバイの間が完全暗転で、まさにテレポートしているかのようにライトの下に突然三姫が出現するような演出が多かったのだけど、今回は、曲間でも少し照明が残っていて、その薄明かりの中で、水分補給したりちょっと身体を整えたりする三姫の姿がよく見えたんです。その時の三姫の間で交わされる物凄く密なコミュニケーションになんだか感動してしまった。肩を抱き、背中を叩き、気合いを入れ合う三姫のシルエットの中心にはもちろんすぅ様がいるのだけど、MOMOKOMETAL がすっかり3人のチームの一員としてスクラムを支えている感じも伝わってきたし、何より、さくら学院で絶え間なく目にしたメンバー同士のアイコンタクトやスキンシップがこの3人の間にもしっかり受け継がれている時間の重さ、絆の深さに胸に迫るものがありました。

同じようなチーム感は、神バンドとメンバーの間にもあって、私は見逃してしまったけど、すぅ様と神バンドがコミュニケーション取る姿に感動した、というツイートもいくつか目にしました。BABYMETALというグループを愛さずにはいられなくなる一つの要因って、このグループがSUMETALとMOAMETALの2人だけで構成されたグループではない、という感覚なんだよね。ミュージシャン2人のデュオ、とか3人のバンド、とか、アイドル4人グループ、なんてのは沢山あるし、メンバー=グループ、という感覚が普通だと思うんだけど、BABYMETALって、メンバーと言われる2人だけじゃなく、舞台に立っているAvengers、神バンド、そして舞台上にいないMIKIKO先生やKOBAMETALといったスタッフ陣も含めた「チーム」の総称、という感覚がとても強い気がします。その「チーム」の中には、既にメンバーですらないYUIMETAL(水野由結さん)や、人間界から旅立った小神様こと藤岡幹大さんも永久メンバーとして名を連ねているし、Darksideを支えてくれたマッスル姐さん達やAvengersの鞘師里保さん、藤平華乃さん(onefive KANO)も、BABYMETALチームの一員として今でも名を連ねている感覚がある。Perfumeさんにもそういうチーム感を感じることがあるけど、BABYMETALのチーム感ってもっと広い感じがするんだよなぁ。

そしてそのチームの構成要素の重要なピースがライブに参加するオーディエンス(メイト)なんだよね。三姫の煽りに呼応するメイトの熱狂が会場空間の祝祭感を盛り上げるのはもちろんなんだけど、BABYMETALの場合、そのライブでの一体感と興奮が、楽曲そのもののクオリティやメッセージを変質させてしまう力を持ってる。LEGEND MでのShineのパフォーマンスが、この曲に小神様への追悼歌としての意味合いを付け加えてしまったように、BABYMETALの楽曲がライブでその意味世界を深化させたことは過去も何度もあった。

今回それを強烈に感じたのがオープニングのMETAL KINGDOM。最初配信で公開されたその楽曲だけを聞いた時には、「神撃」で感じたすぅ様自身の闘いへの決意のような物語を感じられなくて、この曲の位置付けが今ひとつ見えなかったのだけど、今回のライブを体験した後に音源を聴くと、感じ方が根本的に変化してしまっていることに驚く。10人の使徒によって開かれたFox GATEから再臨した2人がロンギヌスの槍によって過去を葬り、新たな王国の始祖となる壮大な叙事詩を語るアンセムソング。

youtu.be

 

そんなライブの重要なピースであり、言ってみればBABYMETALの一員とも言えるオーディエンスに対して、三姫だけじゃなく、神バンドも物凄くレスポンスしてくれるんだよね。今回1日目のポジションが神バンドの目の前で、メインステージは見づらいのだけど、神バンドさん達が無茶苦茶レスくれて、その一体感はもう感動的ですらありました。

ディレイビューイングで会場の一体感を思い出していると、会場を無茶苦茶盛り上げているオーディエンスだけじゃなく、芸術的とも言える照明や臨場感あふれるドローン撮影スタッフ、画面にチラッと映った、メインステージから三姫が降りてくる足台を身体で支えてくれてるステージスタッフさんまで全部ひっくるめて、BABYMETALのメンバーに見えてくる。まさに「WE ARE ALL BABYMETAL」状態。でも、そもそもがBABYMETALって、「新しいメタルのジャンルになる」という気概を持って発足したグループで、過去の2人の発言の中でも、自分達2人がBABYMETALであると限定した発言ってなかったんじゃないかなって思う。

そう考えると、アミューズキッズ達で構成された10人の使徒や、ASH→さくら学院という中元すず香の系譜を継ぐ戸高美湖、木村咲愛、加藤ここなで構成されたチビメタによる「THE OTHER ONE」も、3人目の新たなメンバーを加えて復元される新たなステージも、全てが、中元すず香さんと菊地最愛さんという天才が牽引する「BABYMETAL」というジャンルに加入した新たな構成要素と見えてくる。3人の母校だったさくら学院が、メンバーを完全に入れ替えながらも常にさくら学院であったように。BABYMETALがそういう「テセウスの船」的な存在に拡大していくことは、ひょっとしたら3人の共通の望みだったのかもしれないとも思います。

スクリーンに投影されたCG映像で世界観を作っていたMETAL GALAXYや10days BUDOKAN と違い、CG映像は円形ステージにとどめて、四つの大スクリーンは紙芝居とパフォーマンスのアップに限定した、というのも、姫たちのパフォーマンスや表情とオーディエンスとの一体感を高めていたように思います。コロナ禍のギリギリ直前に開催することができた幕張2daysに続き、イベントの発声規制解除宣言の直後にこの幕張復活ライブが開催されたことは、BABYMETALというジャンルがキツネ様の加護によって守られていることの証なのかもしれない。4月の横浜で開かれる新たなMETAL KINGDOMへの神撃がどんな戦いになり、このMonochromeのDystopiaをどんなLight and Darknessで七色の虹に染めるのか、これからもBABYMETALの一員であるオーディエンスとして見守っていけたらと思いました。