しつこいようですがBABYMETAL論(これで最後にしますから許して)

にわかBABYMETAL熱は全然冷めなくて、先日のMTVの特集は全部録画してチェック、WOWWOWの特集も全部チェック、NHKの特集は予約済、YOUTUBEの関連動画から過去のさくら学院の動画チェックまで、最近頭の中の40%くらいがBABYMETALで占められていて、女房からは、「この手の映像や音楽が流れない家庭が保てると思ってアンタと結婚したはずなのに」と結婚詐欺呼ばわりまでされ始めた。さすがにまずいので少し落ち着こうとは思っているのだけど、NY公演の現地レポートとかチェックしてドキドキしている現状は、なんだか卓球の石川さんとか伊藤さんの試合を見てハラハラしているのと同じような心理状況だなぁ、なんて思ってしまう。というわけで、またかよ、とお叱りを覚悟で、今日もBABYMETAL論。といっても、アイドルについてもMETALについても全然門外漢の熱に浮かされたたわごとですから、「よく知らんやつが偉そうなこと書くな」という感想を持つ方は多数いらっしゃると思いますんで、冒頭にお詫びを。あと、これで最後にしますんで、その点もお許しを。

BABYMETALの過去の映像から、英語もプレゼンテーション力も段違いに成長した最近の映像を眺めていると、日本固有のアイドル文化っていうのは冒頭に書いたような、「うちの子状態」に支えられているのかもしれない、なんて、改めて思ったりする。「自分の子供の成長を見守る」みたいな気持ちをファンが共有する部分。一つの完成形が最初から提示されているのではなくて、当初の未完成な形が、時の流れと共に変化し、どんどん成熟の度合いを増していく変容の様に感動する。うつろう姿が舞台の上で一瞬光り輝く、その二度と再現されることのない時間、まさに一期一会の「コト」を共有する感動。そういう変容と刹那に惹かれる美意識が、日本のアイドル文化を支える一つの大きな動機になっているのかもしれないし、前述の卓球天才少年少女などの成長期のアスリートたちがこれだけ人の心を揺さぶる一つの要因でもあって、その究極の姿が、浅田真央さんなのかもしれない、と思う。

うつろうこと、変転のさだめ、というのは日本の伝統的な美学だよな、と考えると、その美学が高度に商業化されたのが、思春期の少年少女を商品化した「アイドル業界」なのかもしれないな、と。成長し変化していく姿そのものが、文句なしに聴衆に驚きと感動をもたらす。大人の思惑と幼い憧れから出発した子供たちが、外から与えられた枠組みの中で才能を開花させ、成長し、その枠組みの外へと飛翔していく。そのプロセス自体が人に感動を与えるし、そのプロセスの一瞬一瞬を切り取った「ライブ」という時間と空間がファンとの間で共有されることで、「共に成長した」という思いが共有される。そういう意味でも、「成長期限定アイドルユニット」というさくら学院のコンセプトは、アイドルの一つの本質をとらえているのかもしれない。

アイドルという存在の性的な危うさ、というのも商品価値を上げるわけで、女性という性のアピールが結構前面に出ているAKB系のアイドルにはその雰囲気が濃厚な気がする。それが日本のアイドル文化を、アキバ系サブカルチャーにしてしまっている一つの大きな要因なのかも。でも最近は、ももクロとかPerfumeのように、パフォーマンスそのものへの姿勢や、そのクオリティやファンに対する誠実度、常に新しいものに挑戦していく姿勢、みたいな、性とは別の物差しでの成長がファンを捉えるアイドル達が増えてきて、多分、Perfumeの妹分であるBABYMETALにも、自分たちのパフォーマンスとそれに対する期待に応えようとする誠実さが共有されている。それが実際の思春期の少女たちの精神的成長と重なって見えるところが日本のアイドルの魅力で、こんな「パフォーマーの身体的精神的成長を見守る」というエンターテイメントなんてのは、従来の欧米の音楽シーン、特にMETALのような成熟した音楽ジャンルには想像もできないコンセプトだったんだろうなと思う。

マーティ・フリードマンさんが、「2年前はただの企画モノかな、と思ったけど、2年間で彼女たちが本物のプロフェッショナルに成長していてびっくりした」と語っていたそうだけど、METALの世界で彼女たちを見守っている欧米の大人たちの視線を見ると、完全に子供を見守る親の目になっていて可笑しい。でも実はこういう「親になったような気分で演者の成長を見守る」ことが一つの楽しみになっているエンターテイメントってのは日本に伝統的にあって、歌舞伎がまさにそれだよね。勘九郎の息子たちはそろそろ初舞台ですよ。勘九郎七之助なんか、ほんとにおちびさんだったのにねぇ。そういう点でも、日本のアイドル文化というのは江戸の頃から続く「演者の成長を共有する」文化なのかも。

ちょっと長くなっちゃったんだけど、BABYMETALについて語るのは今回限りと決めているので、もう一つだけ。BABYMETALの音楽が日本で生まれ得たことの大きな背景の一つに、アニソンの存在があるような気がするんだけど、的外れかしらん。まっすぐで激しいビートの上にメロディックでシンプルなメッセージを乗せるアニソンに子供時代から触れている日本人にとって、メタルの肉厚のギターリフやシャウトをバックに女性ヴォーカルがメロディーを歌い上げるスタイル、というのは馴染みがなかったわけじゃない。水樹奈々さんや高橋洋子さんは言うに及ばず、聖戦士ダンバインのMIOさんとか、パンチの利いた力強い女性ヴォーカルがハードロック調の激しいビートで歌い上げるアニソンは以前から存在していて、そこからメタルへの跳躍は、容易とは言わないけどそれなりに親和性があったんじゃないかな。SU-METALさんが新世紀エヴァンゲリオンの「魂のルフラン」をカヴァーしているのはそういう意味で自然な流れで、BABYMETALのライブを構成する「メタルレジスタンス」という物語世界も極めてアニメ的。エヴァンゲリオンセカンドインパクトを引用した紙芝居も挿入されていたみたいだし、まさにそのものの、「君とアニメが見たい」というコラボ曲だってある。(こういうことを書くと、二次元命のアニオタさんも、三次元アイドルヲタクさんたちも両方敵に回しそうだが)個人的には、SU-METALさんの「残酷な天使のテーゼ」を聞きたいんだけど、どこかで歌ってくれんかなぁ。