一期一会の「ライブ」でないとダメなんだよ

この日記、3月初めに更新してから全く更新する気が起こらず今日まで2か月放置してしまいました。放置した理由というのはご多聞に漏れず昨今のコロナ自粛で、この日記自体がライブや舞台の感想を中心に綴っていた日記だったから、書くことがなくなっちゃった、というのと、自分自身も多少なり関わっていたこの「ライブ」という存在自体が否定されているような最近の空気感に耐えられなくて、出口が見えない絶望感に何も書く気がなくなってしまった、というのが理由かなぁ。

どなたかがツイッターで、「ジェットコースターが好きな人がジェットコースターの動画見て満足できるわけない。『ライブ』も同じで、『ライブ』は『体験』なんだ」という投稿をされていて、激しく同感。これまでのこの日記で、「一期一会」という言葉でライブ空間を表現したことが何度もあったけど、その日、その時、その場所で、同じ空気を呼吸し、同じ温度を体感し、同じ音の波動を浴びた、という「経験」、一つの「場」を共有した、という体験こそが「ライブ」の醍醐味で、それを奪われた今の状況は、表現する側としても、ファンとして客席にいた側としても、本当に辛いです。

パフォーマー達もそれぞれに苦悩しながら試行錯誤をしていて、LIVE配信は至るところで行われているし、リモートアンサンブル動画、LINELIVE、インスタライブ、YouTube配信などなど、様々なネットツールを駆使して、自分たちの表現の場を確保しようとしている。その中から、実際にビジネスモデルとして生き残っていく表現手段も生まれてくるのかもしれない、とは思います。さくら学院の卒業生の山出愛子さんとか、インターネットサイン会(決まった時間帯にネット経由でグッズを購入した人にサイン入りグッズをお送りします、そのサインしている様子をライブ配信します、という企画)をやっていて、面白い企画だなぁ、って思った。何かというと東京に集中するこの手のイベントに地方から参加できる道を開いた感じですよね。

でもねぇ、やっぱり、ライブは「一期一会」だと思うんだ。表現する側にとっても醍醐味なのは、客席にいるお客様の反応を見ながら自分の表現が変化するコミュニケーションが生み出す興奮で、お客さまの笑い声や拍手のタイミング、もっと言えばお客様の息遣い一つでセリフも曲のテンポ感も変わってくる。お客様の方も自分の掛け声や拍手で演者が乗ってくる感じを楽しんでる。複数日公演なんかだと「今日のお客様は昨日のお客様よりノリがいいなぁ」なんて会話を演者の間でしょっちゅうする。それって要するに、ライブって演者とお客様が一体になって作るエンターテイメントで、ネットや電波を経由して一方的に提供される一方向のエンターテイメントじゃないってことなんだよね。

私も自分の過去の舞台をYou Tubeで配信したりし始めましたけど、それはあくまで、近い将来再開されるであろう実際のライブ舞台へお客様を誘うためのツール、と思ってやってます。過去のライブ舞台の記憶を呼び起こしてもらって、またあの空間を一緒に楽しみたいなぁ、と思ってもらうためのもの。誰かが、色んなライブ配信が増えているのを見て、「これで実際の舞台に行かなくてもいいや、と思われると困る」と言ってたけど、ライブってそんなに簡単に他のものにとって代われるものじゃないと思うんだよなぁ。その時にしか見られない演者の瞬間を共有できる喜びと、その場を共に作っていく興奮。

自分がBABYMETALやさくら学院の沼にハマったのも、このグループが「その時にしか見せない姿」を見せてくれるグループだからなんだよね。特にさくら学院なんか、毎年中学三年生の最上級生が卒業して、転入生が入ってくることで全く異なるグループになってしまう。その時その瞬間にしか、そのグループは存在しない。そうでありながら同じ「さくら学院」というグループであり続ける、テセウスの船みたいな存在である所に、ものすごく魅力があって、この春の「さくら学院」はこの春にしか見られないんです。来年の春にはこのグループは違うグループになってしまう。BABYMETALにもそういう儚さがあって、この儚さって、日本のアイドルグループが大なり小なり共有している性格で、日本のアイドル文化がここまで大きな産業になったのも、彼ら彼女らが燃やす「今」という瞬間を共有できる喜びが大きな原動力だと思う。

だからこそ、このコロナ禍で、「ライブ」という文化そのものが失われそうになっているのが悔しくて仕方ないんだよね。アイドルグループだけじゃない、五輪や甲子園、インターハイを目指していたスポーツマンもそうだけど、この災厄は、そういう若い人たちの「今しかない」この時間を一日一日奪い続けているんだよなぁ。

「ライブ」という表現が、かつてのような熱気と汗と呼吸を共有する熱い場に戻るまで、多分数年の時間を必要とするかもしれません。でも、少ない観客でもいい、その場、その空気をお客様と共にできる時間が戻ってくることを信じて、ライブを続けてきた人間として、今できる発信を続けていくしかないし、若い表現者のために、できるだけの応援をしてあげないと、って思います。諦めてたまるか。