宮崎県はどこに行くのだろう

久しぶりの更新は、先日出張で行ってきた宮崎県訪問の感想。海底ケーブル関係の仕事、ということで、宮崎県下の漁協さんへの訪問出張でした。宮崎県の北端にある島浦島から、南の日南市まで、宮崎県をほぼ縦断する旅。鉄道で移動している暇はないので、レンタカーを借りての移動。仕事の関係の話はあまり立ち入らずに、空き時間や移動中に見聞きしたことの感想を。
 
・ご飯がおいしい

地方出張するとどこに行っても思うけど、何を食べても美味しいよねぇ。もちろん、折角の出張だから、と、ちょっとお財布のひもが緩んで、おいしいお店を探して食べ歩く、というのもあるけどさ。旬の野菜が美味しいように、郷土料理はその土地で味わうのが一番おいしい。

今回いただいた地元の食べ物で、印象に残ったのは、「塚田農場」本店でいただいた、じょっとこ(地鶏)の鉄板焼、日本酒専門店の「あんばい」でいただいた、メヒカリの唐揚げ、市内ののれん街の焼肉屋さんで飲んだ赤霧島赤霧島は口当たりがやさしくてスカスカ飲んでしまって、翌日しっかり二日酔いになってしまいました。


じょっとこの鉄板焼きその他。じょっとこは、「新鮮なので焼き具合はレアです」と言われましたが、本当においしかったです。塚田農場は店員さんの和服風制服が可愛くて、その店員さんが一生懸命お皿にチョコレートで可愛いイラストを描いたりしているサービスも楽しい。この生ビールも、カシスで書いたスマイルマーク付き。


メヒカリ、というのは、底引き網にかかった小さな魚、言い換えれば雑魚たちを、地元の漁師さんたちがから揚げにしたりして食べていたものを、郷土料理として売り出したものだそうです。宮崎に詳しい友達に、「宮崎に行ってメヒカリを食べないと一生後悔しますよ」と脅迫されてオーダしたのですが、食べやすいしカルシウム豊富で体によさそう。「あんばい」は店員さんがとてもフレンドリーでいいお店でした。
 
・海岸線は見どころ豊富

プライベートではなかなか行く機会のない場所に行くのが「出張」というもので、今回は、宮崎県北端にある島浦島に行ってきました。島浦島は、太平洋の荒波が直接打ち寄せる宮崎県の長い海岸線上にあって、唯一太平洋を背にした西向きの湾口を持っている良港として、昔から栄えてきたのだそうです。漁協さんに伺うと、宮崎県というのは、三陸志摩半島のようなリアス式の入り組んだ海岸線を持たず、東京湾富山湾のような内海を持たないまっすぐな海岸線のために、太平洋の荒波がそのままぶつかってくる環境で、沿岸漁業があまり盛んではないのだそうです。勢い、漁業は遠洋漁業が中心となり、10人足らずの船員を乗せた漁船が沖縄沖や茨城県沖の公海にまで出て行って、時には120キロメートルの長さにもなるはえ縄を流し、マグロやカツオを取ってくる。島浦島や、波よけになる島がそばにある日南港などの港を水揚げの基地として、数か月に及ぶ漁期を、公海上で魚群を追って過ごすのだそうな。


九州側の浦城港から、島浦島を望みます。島浦島行の高速艇とフェリーが出ています。


島と浦城港を結ぶ高速艇。30人くらいは乗れるかな。


一日に十便ほどの往復便。島民の大事な足です。


ネットで見つけた島浦港全景。きれいで立派な港でした。

実は自分の高校の修学旅行は南九州で、宮崎県下の観光地を色々バスで回った記憶あり。修学旅行なんで、バスガイドさんが可愛かった、とか、夜の大騒ぎくらいしか記憶にないんだけどね。かつて、新婚旅行といえば宮崎、という時代がありましたし、観光地としての見どころは本当に豊富。今回は内陸に展開する時間はなかったのだけど、レンタカーで走った長い海岸線沿いには、鬼の洗濯岩などの奇観・景観、太平洋を望む気持ちよさそうな海水浴場やサーファーの群れる海岸など、プライベートでゆっくり訪れてみたいと思える見どころが一杯です。


お昼に立ち寄った道の駅の傍にあった、鬼の洗濯岩。神様ってのは不思議な景観を作るもんだなぁ、と感心。
 
・日本神話の原点に在来線でのんびりと

少しでも時間があると、地元の神社に参拝する、というのが最近の習慣になっているんですが、今回は、宿泊した宮崎駅から一駅先の宮崎神宮に立ち寄る時間が取れました。日本神話の曙、天孫降臨と東征の出発点として、神武天皇をお祭りする宮崎神宮。広大かつ美麗に整備された神域の威容に圧倒される。明治の時代に日本神話の世界が体系化され、それまでヴァーチャルなものだった日本神話を、現実の世界にリアルな「神域」として整備していったプロセスを見せつけられた気がしました。やっぱり明治維新っていうのは一つの精神革命だったんだなぁ。


しっかりお参りしてまいりました。

宮崎神宮まで一駅だけ乗った日豊本線はワンマン列車。でもJR九州っていうのは、どの車両もなんとなく「旅」を楽しめるようにできている気がして心地よい。デザインもおしゃれですしね。単なる輸送のインフラじゃなくて、楽しめる「旅」のインフラを作る、という姿勢が好き。


ワンマン列車が2両つながった2両編成でした。


ホームで見かけた車両。かっこいいっすよね。


宮崎神宮の駅には鳥居があります。よく見ると、駅舎の屋根も神社風。
 
・そして宮崎県はどこに行くのか

短い滞在中、楽しめる限りの宮崎の風土に触れたんですが、やっぱり地方振興、というのは難しいんだなぁ、というのが最終的な感想だったりする。象徴的だな、と思ったのが、街中のどこにでもあるココナツヤシの木。宮崎空港宮崎市内を結ぶ道路の中央分離帯にもずらっと並んで生えているのだけど、これが恐ろしくセイタカノッポになっている。聞けば、あまりに背が伸びすぎて、枯葉を撤去するクレーンも届かず、枯葉が自然に落ちてくるのを放置するしかないんだとか。


ネットで見つけた宮崎市内のココヤシの写真。南国っぽくていいんだけどね。

想像するに、観光地として南国気分を演出しようと、ある時期に、同じくらいの樹齢のココヤシを一斉に輸入して一斉に植えたんでしょうね。高さがそろっている方が見栄えがいい、という判断なんだろうけど、同じように背が伸びていく、ということは、どこかで一斉に樹齢が尽きる、ということで、一斉にばたばた倒れていくんじゃないか、と思う。今世間でも話題になっている、日本全国に一斉に同時期に植えられたソメイヨシノが、一斉に寿命を迎えているのと同じような話。

もう一つ、象徴的だな、と思ったのは、直線的に伸びる海岸線沿いの土地を利用して建設された、リニアモーターカーの試験線。どこまでも続く巨大な線路は既に廃線となっていて、今では隙間なく太陽光発電パネルが並んでいます。そりゃあ発電効率はいいだろうけど、太陽光パネルを支える構築物としてはあまりにも重厚すぎないかねぇ。


車窓から撮ったかつての試験線。ちょっと分かりずらいですが、延々と伸びる上にはずらりと太陽光パネルが並んでいます。

見晴らしのいい海岸線に突然屹立するシーガイアの威容にしてもそうですが、要するに、経済活性化のための一瞬のカンフル剤としてどどんと建設するハコモノっていうのは、育ちすぎて持て余してしまうココナツヤシのように、後世の人たちにとっては巨大な迷惑になりかねない。団塊の世代の先輩の方々は、一体なんちゅーものを作ってくれちゃったんですか、とため息をつくしかない。地元に継続して雇用を生み出す産業を創出するっていうのは、なかなか一筋縄ではいかないこと。

そういう意味では、「宮崎産マンゴー」とか、「じょっとこ」「冷汁」といった食文化において宮崎発信ブランドの価値を高める、という、東国原元知事のアプローチは一定の成果を残していて、全国から地元にお金が継続的に流れ込むルートを開拓した、と言えるのかもしれない。この人も毀誉褒貶ありますけどね。彼に足を向けて眠れない、と言う宮崎県人もいれば、宮崎県のアピールじゃなくて自分のアピールのために県政を引っ掻き回しただけ、と不満を言う人もいるようです。


空港で見た一個4000円の宮崎産マンゴー。写真だけ撮って買わずに帰ったら、家族からケチンボ呼ばわりされました。贅沢は敵だ