ラインチタイムコンサート〜進行・構成って大事だよ〜

以前にも書いた、職場のビルのロビーでのランチタイムコンサートが昨日ありました。前半後半の2部構成のうちの、第二部を聴く事ができました。

ニューイヤーコンサート 「花の街 夢の街」
荒牧小百合(メゾ・ソプラノ)/長谷和美(ソプラノ)/西島麻子(ピアノ)

という布陣でした。

第一部は、花の街、ということで日本歌曲を中心に。第二部は、ウィーンのニューイヤーコンサートにあやかって、ウィーナーオペレッタの名曲を中心に、という構成。荒牧さんのお声はとてもソフトで、日本語がとてもきれいに響く。メゾ・ソプラノ、というには少し線が細いので、ソプラノといってもいいのじゃないかなぁ、という気もしました。「ヴィリアの歌」を歌われたのですが、自分の声をよく理解した、うまい選曲だなぁ、と思いました。すごく繊細な歌で、かつ、中低音域がきれいに響くと、ほんとに沁みる歌になりますもんね。

長谷さんは、まだ院生ということもあるのでしょう、人前で歌う、ということに慣れてらっしゃらない感じがしました。視線が宙に泳いじゃうんですね。誰に向かって歌ってるの?という感じ。視線は大事ですね。観客に対して訴える一つの手段だから、視線が泳ぐと、何の歌だか分からなくなっちゃう。「こうもり」のアデーレのクプレを歌われたのですが、ちょっと音程が悪い箇所があったり、中低音域での日本語が全然聞き取れなかったり、まだまだお勉強中、という感じがしました。あ、なんか偉そうに、けなしてばっかりでごめんなさい。持ってらっしゃる声は非常にクリーミーで、そのクリーミーな響きが高音になってもちゃんと保たれている。とてもよいお声です。ソフトな荒牧さんの声にもしっくり馴染み、二人のデュエットでは実に柔らかいハーモニーが聞こえました。

第二部しか聞けなかったのですが、一番の感想は、演奏会の進行・構成って大事だなぁ、ということです。いつものランチタイムコンサートでは、司会進行役の方がいらっしゃるのですが、今回はお二人がマイクでMCも担当。これがどうも洗練されてない。単に、オペレッタの場面を説明したり、オペレッタというのは何か、というのを説明したり、「次は何を歌います」という説明以上のMCじゃないんですね。MCというのは、歌の説明をする役割と同時に、演奏会の流れを切らず、歌がもたらした高揚感をそのまま維持しながら、次への期待感を持たせつつ「解説」を加える、というもの。かなり洗練されたテクニックや経験が必要。そういう意味では、折角のウィーナ・オペレッタのお洒落な世界が、素っ気無いMCでいちいち現実世界に引き戻されるような感じがしました。ちょっと残念。新宿オペレッタ劇場のMCを一度聴いてみたら?と思いました。あそこまで濃くやっちゃうのは新宿オペレッタ劇場だから許されてる、という気もしますけどね。ははは。

というか、ウィーナ・オペレッタに対してはそれなりに思い入れがあるから、もっとお洒落に、もっと洗練された形でできるんじゃないのかなぁ・・・という気持ちで見ちゃうんですよね。時間の制約もあり、まわりに人がうろうろしているラインチタイムのロビーコンサートで、そこまで求めること自体無茶ですよねぇ。最悪の会場、しかも自動ドアからは外気が吹き込んでロビーはすごく寒い。その寒い中、露出の高いドレスで、それでも自分の響きを逃がさず、きちんと実力を発揮することができる。お二人とも、さすがプロだ、と思いました。寒い中、指もかじかんだでしょうに、しっかりした伴奏を弾かれたピアニストの方を含め、出演者のみなさま、ほんとに寒い中、お疲れ様でした。風邪など召しませんように。もっといい会場で、今度はさらに洗練された素晴らしい歌を聞かせてくださいね。