新宿オペレッタ劇場18〜自分の原点なんだなぁ〜

昨日、四谷区民ホールで開催された新宿オペレッタ劇場に家族3人で行く。新宿文化センターの名物企画だったこの新宿オペレッタ劇場、色んな大人の事情や震災の影響もあり、3年ぶりの復活。懐かしい常連出演者のみなさん方の歌声と華麗なパフォーマンス、そして何より、ウィーンオペレッタの美しいメロディを堪能する。
 
出演:清水純(ソプラノ)・三塚直美(ソプラノ)・北澤幸(メゾ)・佐藤一昭(テノール)・福留和大(テノール)・北村哲朗(バリトン
伴奏:児玉ゆかり
振付:藤井明子
訳詞:三浦真弓
美術:長谷部和也
制作:八木原良貴
 
という布陣でした。

こういうシリーズ企画、しかも出演者が常連、ということになると、その出演者の方々の色んな変化(あるいは変化しないこと)が結構気になったりしますし、聞く側の自分が、同じ歌い手に対して感じることの変化、というのに驚いたりします。出演者からするとかなり迷惑に思われる部分もあるのかもしれないのだけど、ある意味シリーズ企画の一つの醍醐味なのかな、とも思う。

そういう意味で、今回一番驚いたのは、佐藤一昭先生の変わらない立居振舞の見事さと、進化する歌声。ちょっと失礼な言い方になるかもしれないけど、新宿オペレッタ劇場の初期の頃に比較しても、明らかに声の安定感と豊かさが増している。年輪、ということではなくて、声が若返っている。揺るがないポジション、幅広い表現力、確かもう還暦を越えてらっしゃると思うんですが(また失礼なことを)、それでもさらに進化を続ける姿に、なんだか勇気をもらいました。オレもがんばろう。

純さんのコケット、三塚さんの美しさ、北澤さんのノーブルさ、福留さんの若々しさ、北村さんの安定感、そして児玉ゆかりさんの、歌い手の呼吸に見事に寄り添う伴奏、どの方々のパフォーマンスにも、「そうそう、この人たちの持ち味ってこれだよね」と嬉しくなる。冒頭でプロデューサの八木原さんから、「気心の知れた仲間たちで作った舞台」という趣旨のあいさつがあったのだけど、歌い手の一番得意なところでのびのび心地よく演じて歌っている様子が伝わってきました。出演者が楽しそうだと、客席も楽しくなるよね。

でも何より、ウィーンオペレッタって自分の舞台の原点なんだなぁ、と改めて思いました。美しく、優しく、時にコミカルでありながら、底に苦い諦観と終末への予感を秘めている奥深いウィーン・メロディの数々。所々で、自分も知っている曲が出てくると、この曲歌ったなぁ、とか、この曲が好きだったなぁ、なんて懐かしく思い出しながら、その頃の自分の舞台に対する思いや、オペレッタに対する思いが何度も頭をよぎりました。

18回目、と言いながら、3年間のブランクを経て、主催者も変わり、新しい出発となった新宿オペレッタ劇場。今後、再びシリーズ企画として続いていくとのこと、ウィーンオペレッタの無数の名曲たちを日本に紹介するこの企画、魅力あふれるウィーンメロディーの宇宙に開いた扉として、今後も応援していきたいと思います。