ガーデン・エアタワー イブニングコンサート

昨夜、例によって職場のビルの1階ロビーで開催されたロビーコンサートを聴いてまいりました。

バリトン:原田圭
ソプラノ:横内桂子
ソプラノ:荒武菜穂子
ピアノ:福崎由香

という布陣で、Song Of Emotion(民謡)をテーマにした演奏会でした。

原田さんは、とても明るい響きのバリトンで、「まちぼうけ」など、演技も入れての色気のある歌を聞かせてくださいました。横内さん、荒武さんも柔らかい響きのソプラノで、3人で最初と最後に歌われた「ふるさと」のハーモニーは、実に綺麗でした。

ちょっと難点を2つほど言えば、まずは選曲。「民謡」がテーマといいながら、民謡はあんまり選ばれてなくて、「オー・ソレ・ミオ」と、「ダニーボーイ」と、山田耕筰が採譜した「中国地方の子守唄」、くらい。他に、唱歌の「もみじ」とか、ラピュタの主題歌とか、ライオンキングとか、魔笛の「パパパの二重唱」とか、わりと雑多な選曲。選曲が雑多なのは全く問題ではなくて、もう少し聴いていてカタルシスを感じる曲を入れ込んでもよかったんじゃないかなぁ、という気がしました。「まちぼうけ」とかも楽しくていいんだけど、ロビー・コンサートという「イベント」でぱあっと華やかに歌われる曲、という感じじゃない。一番盛り上がったのが、「オー・ソレ・ミオ」で、それ以外の曲はイマイチ、そういうカタルシスがなかった。ぼんやりと歌ってぼんやりと終わる感じ。もちろん、荒武さんの「ダニー・ボーイ」とか、実に切々とした歌で、とてもよかったんですけど。

歌い方、というか、響きの点もあったのかも、という気がします。以前の日記にも書いた通り、ロビー・コンサートって、基本的にお風呂エコーなんですが、お風呂エコーの中で歌うのって、すごく難しいんだなぁ、と、昨夜やっと気がつきました。ピアニッシモでの響きをかなり固めにして、しっかり明るく響かせないと、なんだかぼんやりした感じに聞こえてしまって、緊張感が失われてしまう。横内さんも荒武さんも、わりと柔らかい響きに聞こえたんですけど、それって多分、お風呂エコーのせいもあったんじゃないかな、という気がします。中低音域の弱音で響きが拡散してしまう。まろやかには聞こえるのだけど、ぼやけて聞こえてしまう。そのあたりが、カタルシスのなさにつながっちゃったのかもしれない。とはいえ、中低音域の弱音で響きを保つ、なんてのは、すごく高度なテクニックですから、ロビー・コンサートって、そういう意味でもすごく過酷なのかもね。以前、同じ場所で聞いた、赤池優さんの歌は、弱音での響きが硬質で、お風呂エコーの中でもしっかり緊張感が保てていたんですが。

なんだか例によって偉そうに書いちゃいましたけど、出演された若い歌い手さんたちにとって、ロビー・コンサートなんていう劣悪な環境であったとしても、こうやって「人前で歌う」という場所がちゃんとあるっていうのは、うらやましい限りです。我々アマチュアは、人前でちゃんと歌う機会を作るのに四苦八苦してますからね。こういうチャンスの中で、ステージングも含めたノウハウを身に着けて、素敵なエンターテナーに育っていかれるんでしょうね。出演されたみなさま、なんだか終始偉そうですみません。とてもほのぼのした演奏会、ありがとうございました。